COLUMN

2023.04.18

「文系恋人放浪中」by 赤城文 第12回 /恋をしたあの時聴いていたあの曲

私にとって音楽は心の隙間を満たしてくれるものではなく、心の隙間につけ入ってくるものなので取り憑かれてしまってこんなところまで来てしまった

依存症の塊だった私は未だに音楽とタバコだけはやめられそうにないです

自我を出す事は他者の崩壊に繋がるものだと極端に恐れた日から感情はない

悲しくなると自我が出てしまうから悲しくなりたくないから本も読まないし
一日を振り返らないし激しい恋をして何もかもめちゃくちゃになったあの日も
酷く誤解されて全て失って露頭に迷った日も
誰にも理解されなくて塞ぎこんだ私に漬け込まれた長い長い日々も全て忘れた

新たな感情が芽生える事はなく使い回しのような気持ちに「あぁ、またこれか」とジッと動かず耐えて泣かず怒らず家に帰る

悲しみのパターンは網羅したから新たな喜びに出会いたい。

喜びを得るには努力が必要なのに悲しみを得るのはいとも容易くてやるせない

眠った埃まみれのブリキのおもちゃ同様で感情などない。だから文章が書けなかった

これは私を表す歌だ!私を表す本だ!と思うほど悲しみを陶酔に変える強さも儚く散ってナルシズムも崩壊

多くは望まないと欲望を殺した日から何にもイマイチ興味が湧かない。私がそれなりな日々を送るなんて想像もしていなかった

でも私が辿り終わった道を今なお辿って苦しんでいる声をよく耳にする

恋愛相談や恋愛で傷ついたあの頃の話をみんなからよく聞かせていただくのですが

私ができる事は君たちを支えられるような歌詞を書いて、生活の一部になれるような面白いアイドルになること

そして悲しみは人生のエッセンスで深海のような影と淫靡な香りをつけてくれるものだと思えるように死に魅入られる前に全ての闇に陶酔してナルシズムに変えられる良い音楽を教える事

なので音楽は人生のヒントではなく心臓の並行と後の答え合わせだから役に立つか分からないけど過去の体験を交えて置いておきますね

なぜ?/Coco

自分ばかり相手を愛してしまい切ないと思ってしまっていたまだ幼かったあの頃、この気持ちを飾らずに歌ったこの歌詞を聴いて誰にでも起こりうるものだと気づいて少し楽になりました。
この恋は若さの象徴ですね。

「追いかけなきゃ見えないね 恋は」と最後まで恋する歩幅も合わないし「ただ 優しさを信じている」と期待をしているけれど、いつだって立ち止まって振り返ってこちらに歩いてきてくれるような様を愛と呼ぶんじゃないかな



あぁ青春/GOGO!7188

「あたしだけを見ていて欲しい死ねると思うぐらい あたしだけに欲情してほしい」
性と死が混沌とする刹那的で激しくて見誤ったまま火がついた感情を信仰する依存性が全面的に感じられて今これを書いている私はあの頃の「好き過ぎて死んでしまいそうで耐えられないから死んで欲しい」という気持ちは自分本位という短いタバコに火がついたようだったと気付きました

性とか死とか恋愛に強く結びついてる物体だけどそこにスポットが当たっているものが幸福に直結するはずがないのにどうして人は恋をすると走り出すのだろうか



ざわめき/吉野紗香

「わかりますか なぜ不安になるのか 気づいてますか胸の奥がざわめくこと」

漠然とした恋愛不安に陥る気持ちが描かれていて愛されているはずなのに不安になると泣いてばかりいた十代の頃によく聴きました
会っている時間だけが幸せなのは愛じゃなく依存なんですよね。
でも、どんなに相手に愛されていて友達に恵まれていて趣味がたくさんあっても溺れる時は溺れるから時間をかけて安心に変えるしかないんですよね。恋愛には時間が必要。



花が散るころ/hal

「口には出せない不安 今も胸に抱えて不穏な日々の中 それでも求めた」
恋愛においての不安やモヤモヤを言語化できる人って案外少ないですよね。
新たなパターンの感情だから言語化できない人、素直じゃないから言語化できない人、向き合うと傷ついてしまうから言語化できない人。
いろいろな人がいるんだと思います。それでも好きなんですよね。
どんなに好きでも好きな人と一緒にいる事が自分にとって本当に幸せかどうかなんて散るころにしか分からないじゃない
それを分かってしまったから終わったあの恋も恨まずに生きていける曲です


I MISSED ''THE SHOCK''/中森明菜

恋愛で一番ボロボロになった17才の時に聴いていました。
「どんなシビアな小説よりも心はふさぎ込む」という言葉の通り、当時から読書家だった私は唯川恵の小説を読むよりも現実が辛いと逃げるように眠ってばかりの日々でした。

「確かめられず 愛が取り残されるの」という言葉は確かめられる状況になかった弱かったあの頃の私は共感したんじゃないかな
これを読んでいる方が「疑うことより信じあえる何かが今はかけてしまった」と思った時は自分が幸せじゃないと意味がないと強く信じて欲しいな


B'coz l Love You/矢井田瞳

恋をすると夜は長いし欲深くなるし知らず知らずのうちに自分本位になって結果的に「お互い様」がすれ違って歩み寄れず終わったこともありますよね

「自分ばかり可哀想と思ってない?いつだって物足りない貴方の言葉は」
この言葉はお互いに常に言える事だと自覚がないとバランスが崩れていく。

あの頃の私は私だけがそう思っていると思って傷つけたりもしたけど自分ばかり可哀想だと思っていたのは私でもあった。
思いやる事はつけあがらせる事とは別物だと分かっていたのに臆病だった
結末がどうなろうと「一度も休まずに愛して」と言う前に一度も休まず愛せばもっと早く自分が変われたかもしれない



夢で逢えたら/大瀧詠一

大瀧詠一ってブルー・ヴァレンタイン・デイとか聴いたらお分かりの通り乙女チックで繊細な方なんですよね。
男性は恋愛において可哀想ではない風潮がありますがみんな強がっているだけで寂しい気持ちはどんな人にも眠っています。
どんな人間も自分と同じぐらい可哀想で寂しくて愛おしいものですよ。
夢で逢えたらと願うぐらい遠くに感じる意中の相手の温もりを思い出して両手に抱かれている気持ちでベッドの上で目を閉じ続けたあの頃があったから強くなれたんだよ


真剣(ほんき)/田村英里子

こわがるふりして背中にギュッとしがみついたあの頃「ねぇ飛ばしてよもっと 追い越して若さ」って思っていたの?
大胆と余裕と強気を兼ね備えた可愛さあふれるこの曲は松本隆先生作詞なんですよね…♡



眼鏡を外して/YUKI

「今度はいつ どこで逢えるの? どれくらい? 次どれくらい?」
って思っても言えないけど二度もこのフレーズが出てきて渇望する気持ちが消化される曲で、愛の意味は知らないし長い髪は誰のものでもなかったけど大好きでした。
星が見える冬の公園で聴いていたなぁ




他には川本真琴の「10分前」とかキンモクセイの「冬の磁石」とか聴いていたかな

思い出しながら書いていたから霧はかかっているけれど苦い記憶もなんとなく思い出しました。

今はもうどの曲も全然聴いてないしこんな視点で聴けないし忘れてしまった感情ばっかりで欠損だらけの文章だけど当事者である人に届くといいな

こうやって私みたいに忘れていくから大丈夫だよ

あんまりアイドルでこのようなコラムを綴る方はいないですよね。
私がチェリマケを始める時に一番最初にエロトリアムを書いたのですが、もう二度と誰もこんな思いをしませんようにと強く願いました。
今もその気持ちが変わらないからです

この前デヴィッド・ボウイの「ムーンエイジ・デイドリーム」を観たけど若い頃のボウイは「恋愛は病気」だと言っていたのに結婚する頃にはその言葉を否定していた。

そうやって傷ついて変わって、傷ついて強くなった自分に恋をして、強くなった自分に恋をした人に恋をするようになる日がみんなに訪れますように

PROFILE

赤城 文(アカギ アヤ)

2000年11月28日生まれ 東京都出身
「エレクトリックリボン」に2023年12月23日に加入。
セルフプロデュースアイドルグループ「ミレディ♡チャーム」のドールレッド担当と実の双子の妹(可愛唯)と共に「ローストチェリーマーケット」として活動中。
主に作詞と振り付けを行なっている。

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