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2018.07.30

ゆうばひかり インタビュー | 撮って生きる、という選択肢を見出せた幸せ。

取材・構成:清水 里華

「観る」立場から、
「撮って観せる」立場へ。

編集部(以下、編):ライヴ撮影を始めて3年目を迎えるそうですが、そもそもライヴ撮影を始めたきっかけとは?

ゆうばひかり(以下、ゆうば):思い起こせば、中学生の時にデジカメを買ってもらったのが写真との付き合いの始まりです。でも当時はカメラマンになろうという意識はまったくありませんでした。大学に進学してからも写真はぼんやり好きだったんですが、旅行に一眼レフを持っていくくらいでした。並行して音楽が好きで、フェスやライヴによく通っていたんです。その内に、観客として観ているだけの立場にもやもやしてきて。アーティストやミュージシャンの異様にカッコいい瞬間があるのに、他のお客さんはそれに気づいていない、それがもったいないなって思ったんです。だったら自分が写真を撮って残すことで、もっとたくさんの人に観せられるんじゃないか。そんな思いから、大学に通いながら独学でライヴ撮影を始めたんです。

アングライベントから始まり、
夢中で撮り続けた2年間。

編:未経験で始めてからプロとしての軌道に乗るまで、さまざまなご苦労があったのでは?

ゆうば:始めた当時は、とにかく撮れるチャンスを探していたので、Twitterで「カメラマン募集」のツイートを検索しては応募し、ノーギャラで撮ることを繰り返す日々でした。最初に撮らせていただいたのはライヴではなく、演劇・朗読・弾き語りなどさまざまなパフォーマーが集まるイベントでしたね。展示やライヴなど、いろいろなチャンスをいただく度に夢中で撮り続け、気づけば約2年が過ぎていました。そして大学3年を迎える頃、「この道で食べていけるのではないか」と思えるくらいのお金をいただけるようになり、思いきって大学を中退し、プロの道へと飛び込みました。それまでは学歴重視というか、レールに乗せてもらう人生だったので、普通に就職するんだろうなあと思いながらも、どこかで違和感を感じていたんです。だからこそ、写真で生きて行くという選択肢もあるんだ、と実感できたタイミングが、結果的に転機になったという感じです。

その時の感情までリアルに残す
記憶装置、それが写真。

編:ライヴ撮影におけるこだわりや、工夫されている点は?

ゆうば:大前提として、絶対に観ているお客様の邪魔をしないこと、照明にかぶらないことをモットーに、撮っている自分の存在を徹底的に消します。そして躍動感であったり、気持ち良さそうな顔であったり、その時のライヴ感が最大限に出るように撮影しています。撮っている時は、音を聞くというよりは視覚が100%という感じでしょうか。次はこっちに行きそうだとか、こう動くなとか、動き方を予見して瞬間を切り取るようにしています。ステージの袖から壁に映るアーティストの影ごと撮影したり、足元の機材を撮影するといった撮り方は独特かもしれません。撮影後にアーティスト本人やイベンターに撮った写真をお渡ししたときに、「こんな表情するんだ」とか「感じてるね」と喜んでもらえることが、何よりも嬉しいです。写真って、その場の空気や感情までそのままリアルに残せる記憶装置だと思うんです。だからその場の空気感を感情ごと落とし込むことを意識しています。

専門教育を受けていない不安が、
逆に自分を駆り立ててくれる。

編:日々のスキルアップはどのようにされているのですか?

ゆうば:そうですね、これまで写真の学校に通った経験もありませんし、師匠と呼べる方もいないので、まわりのカメラマンから遅れを取っているのではないか、という不安に苛まれることもあります。でも、そこを埋めるための努力こそが大切だと考えています。自分で本を読んでいろいろ調べたり、カメラマン仲間と情報を共有したり。あとは実際に撮りたいものを現場で何度も撮っては地道に改善することの繰り返しですね。でも、これまでの自分の前向きな選択はすべて正解だと思っています。独学であっても、勉強を積み重ねることでスキルを上げて行けると思うので、たとえば私のように専門教育を受けなかった人であっても、まったくハンデに感じる必要はないと思います。キャリアについても、大きい会場で撮った、とか、大物アーティストを撮った、という単発での経験はさほど重要ではなく、フォトグラファーにとっては撮った写真が自分のすべて。まずは写真を見て判断してほしい、と思っています。

ギャラ交渉や営業に悩むのも
正規のルート、と腹決めする。

編:営業についてはどのような工夫をされていますか?

ゆうば:とにかく人と会うことを大切にしています。ライヴ撮影の場合、ライヴ中はあまりアーティストとお話しすることができないので、ライヴ後の打ち上げに参加して、いろんなバンドやお客様と直接話をして交流を広げることも多いですね。朝までコース、というのもザラです(笑)あとは、いただく仕事は断らないというのが基本スタンスです。正直、心躍らない仕事をいただくこともありますが、写真として残る以上は私の作品として残るので、万が一つまらない写真しか撮れなかったら、それは撮る側の私に問題があると思われて当たり前だと思うんです。だったら見応えのある写真にするためにできる限りの工夫をしたい。それも自分なりの大切な修行の一環だと考えています。

編:ギャラ交渉に悩まれることはありますか?

ゆうば:そうですね。特に友達だったりすると、「友人価格で」などと値切られることも多く、悔しい思いもたくさんしました。ですがいまでは、そうやってギャラ交渉や営業に悩むのも、プロとして歩むための正規ルートなんだと腹決めするようにしています。

1日のタイムテーブル

  • 5:00就寝
  • 9:30起床
  • 11:30-13:00インタビュー撮影
  • 13:00-16:00昼食・カフェで作業
  • 16:30-17:30インタビュー撮影
  • 18:00-24:00ライヴ撮影
  • 24:00〜時々朝まで打ち上げに参加

20kg超の機材を肌身離さず持ち歩くため、整体・銭湯通いでのメンテナンスが欠かせない

写真をはじめてから表情がイキイキしていると言われることが増えたそう

気分がもやもやしたら深夜に愛車のCBR250Rで海まで飛ばす

現在、力を入れて撮影活動をしている甲府のバンド「コールスロー」のステージショット

PROFILE

ゆうばひかり

ライヴ フォトグラファー

大阪府出身。東京都世田谷区在住。
ライヴ写真を中心に、イベント写真、アーティスト写真、インタビュー写真、ポートレイト等まで幅広く撮影。
使用機材はCanon EOS 5DⅢ、6D。

激情系・混沌系ライヴの撮影を得意分野とし、ライヴ感と躍動感あふれるショットには定評がある。片や歌モノアーティストの表情豊かな写真も手がけるなど、ジャンルにこだわることなく幅広く活動中。アーティストの隠れた魅力を引き出し、ライヴ写真の表現の可能性を広げる、新進気鋭の若手フォトグラファーである。

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