PEOPLE
2019.10.15
高山洋平 インタビュー | 「町の看板屋」として、お客さんの商売繁盛のお手伝いをする。
取材・構成:清水 里華 撮影:ゆうばひかり
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2019.10.15
取材・構成:清水 里華 撮影:ゆうばひかり
編集部(以下、編):独創的で型破りな広告プロモーションを次々にリリースし、「プロ営業」としても業界内外で広く注目されている高山さん。まず、高山さんのパーソナリティを形成しているものは何だと思われますか?
高山洋平(以下、高山):実家が祖父の代から東京の下町で弁当屋と大衆割烹をやっていたんです。そのせいか、父親が庶民派グルメには一家言ある人で。食に対しての執着やこだわりも軽い狂気を感じられるものでしたね。たとえば、吉野家の「ネギ塩牛カルビ丼」を40個買い込んで、いつでも食べられるようにと冷凍保存したり、「アイランド食品が再現したホープ軒の中華そばのクオリティを理解していないとはモグリだな」なんてマウントを取られたり。そんな英才教育の甲斐あってか、町の中華料理店やラーメンニ郎、ルノアールやチェーン店全般、カップ麺などの庶民派グルメには精通してますね。特にラーメン二郎には今年度、80回行っています(2019年9月17日14時 現在) 。これはほとんどライフワークと化してますが。
編:そんな高山さんが代表を務める「おくりバント」とはどんな会社なのでしょうか?
高山:ひとことで言えば、「クリエイティブの何でも屋」です。
編:何でも屋?
高山: 要は自分自身で営業から制作、PRまでクリエイティブにまつわる全てを担う「何でも屋」です。本当に金がなく、何でも自分でやってるうちに、気付いたらそのスタイルになっていました。そうしていると、徐々にクリエイティブも自分のカラーが色濃く出るものになっていて。結果、「今回の案件はおくりバントが得意そうだな」と思ったお客さまから、お問い合わせがくるようになりました。
だからか法律や財務、システム構築等の仕事のお問い合わせは一切きませんね。
編:具体的にはどのようなクリエイティブを制作されているんですか?
高山:直近では、このホームページです。かわいいでしょう。これはユニポテンシャルという転職エージェントの企業ホームページです。
編:転職エージェントのホームページとは思えないほど華やかなビジュアルですね。
高山:常識的に考えたら、人材を紹介する企業のホームページなんだから堅実そうで清潔感のあるビジュアルにすると思います。でも、それじゃ他の転職エージェント100社中98社と同じ印象を持たれて終わってしまう。それに、本来転職ってより楽しい未来を築くための一歩なのに、転職を勧める当人たちが楽しそうにしていないと説得力がないじゃないですか。仕事に遊びを加えることは非常識かもしれないけど、常識を疑うことで真理に近付くこともあるんです。お陰さまで大変ご好評をいただき、お問い合わせも多数来ているようで。まもなくサーバーも落ちることでしょう(笑)
編:常識を疑うことでサービスを拡充できた良い事例ですね。
高山:いやいや、そんなカッコいいもんじゃないですよ。広告屋はあくまで「ここで食べたい」と思えるような看板をつくるだけです。たとえば、ラーメン二郎の看板って、基本的には黄色と黒で形成されているシンプルなデザインなんです。でも特定のクラスターはその看板を見るだけで途端に食欲が湧く。ですがそれは、前提として商品自体に「また食べたい」と思わせるクオリティーが必要なんです。だから、あくまで看板は、商売繁盛をお手伝いするものだと思っていますね。「看板も含めてラーメン二郎だ」と言ってもらえるような、皆さまに愛される看板を作りたいと思っています。
編:高山さんがクリエイティブ面でこだわっていることは?
高山:そうですね、時代も令和に変わって、いろんな人がいろんな常識を持っている。だから、自分のこれまでの人生経験を組み合わせて、それぞれのニーズに合ったクリエイティブを作ってお見せしたいと思っています。何日もイメージを描いて、ずっとみんなで飲みながら考えてますね。
編:「みんな」とは、クリエイティブを共に制作するクリエイターですか?
高山:そうです。先ほど自分は「何でも屋」といいましたが、実は自信を持って得意と言える分野は、営業とプロデュースだけなんです。仕事をいただくまでの交渉や、クリエティブの全体像を描くことは自分で行いますが、クリエイティブを形にするフェーズは各ジャンルのプロ達に全てアウトソーシングしているんです。
編:仕事を任せる判断基準は何でしょう?
高山:自分と感性が似ているか否かですね。純粋に話していてお互い面白いと思えるかどうかを重要視しています。だから、一緒に仕事をしているクリエイターは、ほとんど飲み屋で出会った人たちなんです。
編:仕事の現場でなく、居酒屋やバーで?
高山:年間360日くらい飲み歩いていると飲み屋に通っているうちに、カッコいいクリエイターが多く来る店がわかるようになって。そこで知り合ったクリエイターの人となりを理解したうえで、気の合う方に依頼していいます。報酬はもちろんですが、自分ができないことをやってもらうので、気持ちよく制作に励んでもらえるように配慮していますね。相手がデザイナーだったら「いつか、きっと、アドビを買収してきみバージョンのイラストレーターを作ってあげる!」みたいな(笑)明らかに嘘なんだけど、相手の気が悪くならない言い方やユーモアを大切にしています。好きなことを、好きな人といっしょにやらなければ、仕事する意味もないですから。人生において交渉は大事ですよね。
編:営業で培った力がここでも発揮されているのですね。自分の好きなクリエイティブを自由につくるためには何をすれば良いのでしょうか。
高山:自由といっても色々あると思いますが、自分の場合ですと毎日、あらゆるジャンルの自由研究を勝手にしています。例えば、いつも行っているルノアールですが、「何故いつも行ってしまうのだろう?」「どういう経緯で誕生したんだろう?」など、誰に頼まれる訳でもなく、勝手に思考を巡らせたり調べたりします。いつも通っている店舗と違う店舗に行ってみたりすると、ルノアールは「昭和モダン」「大正ロマン」の両コンセプトがあり、それぞれ微妙にメニューが違うことが分かるんです。すると、ルノアールのちょっとした有識者になれますよね。100人いたらその中で一番になれるジャンルがいくつあるか、それが重要と思っています。仮にお客さんにその話が出来れば「この人は一つのジャンルをしっかりと研究してくれてる人だな」「細部にまでこだわってくれる人なんだな」のような観点でもアプローチできるようになります。よく言うじゃないですか?「営業マンは引き出しの多さが大事!」って。それは、クリエイターも同だと思います。結局は深掘りしていく努力が必要ですが、でも好きなことなら、まあ努力できちゃうじゃないですか。今ではそんな努力の甲斐もあり、ルノアールで永遠ツイッターをしていても研究熱心だと思われるようになりました(笑)まずは夏休みの自由研究みたいなノリで、何でもいいので研究してみては如何でしょうか?
編:なるほど。営業職しかり自由研究しかり、クリエイティブの本筋と関係がないようでしっかり繋がっているんですね。
高山:そうですね。自分の場合は酒と、映画、CMなどのカルチャー好きが功を成しました。その結果として、営業的なアプローチでクリエイティブを制作する稀な人材が出来上がったのだと思います。それに、常に自分は営業とクリエイターを異なる職種として捉えず、相乗効果を狙ってるんです。たとえば、最近ツイッター用に撮影したこの動画に出てくるディレクターは、デザイナーに対して営業マンのスタンスで「お客さま」として丁寧に接しつつ、街をよく観察しているクリエイターの一面も兼ね備えています。具体的な指示を出しながら、デザイナーに気持ちよく働いてもらうためのフォローも忘れない。自分もそんな姿勢を体現できたらと思っていますね。営業とクリエイターの業務って一見畑違いのように捉えられがちだけど、視点を変えればいかようにも汎用することができる。これからも営業とクリエイター、それぞれの恩恵を受けながら一生懸命に小銭を稼いでいきたいですね。
飲食業界に営業に行く際は 必ず着用しようと思っているドリンクコーデ
三菱デボネア。家族は本人以外全員が 早く廃車にしてほしいと思っている
おくりバント社唯一にして絶対の掟「社訓」
本人曰く「コスパ最強」FANZAプレミアム会員
「TOP営業マン」「広告代理店の社長」
この言葉で連想するものは何だろうか。
色黒、ツーブロック、高級腕時計、よろ肉でシャンパン、
歯が真っ白、自己啓発、体育会系、タワーマンション、などの想像をするだろう。
おくりバント高山洋平氏は取材場所にベントレーでもカイエンでもマセラティでもなく、
ママチャリで颯爽と現れた。
高山洋平はダサいと思われがちな営業職のシーンに現れたビジネス界のロックスターだ。
そしてしゃらくさい広告職へのアンチテーゼだ。
僕はこんなに自由で自然体のビジネスマンを他に知らない。
ファニーで面白いところに注目がいきがちだが、
今の日本に必要なのは彼の持つ「自然体」だと僕は思う。
マニュアル通り繕うよりそっちの方が誠実だし素敵じゃない?
ただそれを実行するのは覚悟がいる。ただ好きに振舞えばいいだけではない。
高山洋平さんはそれを乗り越えて今に至るのだ。
そういう視点でもぜひ高山洋平氏のインタビューを楽しんでください!
※古参のファンであることを氏に伝えたら名刺をいっぱいくれました(嬉)