COLUMN
2020.04.29
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2020.04.29
南米人のパートナーである、ダニーとタイを旅していた。
タイの北のほう、チェンマイという街にいた。チェンマイはすごくラブリーな街で、料理教室やゾウを保護する施設なんかに行ったけど、でもどうにも観光地っぽすぎてなんか物足りず、もうちょっとディープな所までいきたいわねえ、と話し合っていた。
そんなことを言いながら寄った市場で、ダニーがタイのお坊さんと行う瞑想キャンプのチラシを見つけた。
彼はそれを見るたび行きたい!と言ったけれど、私はイマイチ乗り気ではなかった。お坊さんかあ、瞑想かあ、別に興味ないな。むしろやだな。
ダニーはまあ、いわゆる西洋文化圏のヒッピーイズムに大きな影響を受けている人だったので、なんでもヨガや食生活で解決しようとするし、アジアには何か特別な、スピリチュアルなもんがあるに違いないって憧れて中国に来たような人だった。(なんだかんだ、私もこういう人と親和性が高いんだよねぇ。)
だけど私自身は、寺に生まれ、一応ゆるいけど仏教家族の元に育ち、けどそこから抜け出して合理的な価値観を得たいって常日頃思ってる人間だったのだ。だから、ダニーのそういう所にちょっとうんざりしてた。
(ちなみにダニーは、わたしのことはグルだと思っているようだった。
バッドマンがチベット修行に行きたどり着いた山の上のグル。)
だけどまぁ、ね、めったにない機会だし、乗り気ではないけども、別に行ってみてもいいか・・・しょうがねえな、なんて参加してみた。
そしたらこの、3日間の瞑想キャンプが、自分にとって非常に重要な経験になった。
チェンマイからバスで2時間くらい、さらに山奥に進んだ。
到着して、全身白いゆったりした修行着に着替えた。(日本人ならわかる、あの宗教団体を思い起こさせる)
山の上にあって敷地は広い。寝る場所と食事場所、あとはいくつか小屋がある。
男と女の寮は分かれている。
食事は支給される(おいしい)。
1日の間に、早朝、午前、昼、夜4回、40分づつの瞑想時間と、お坊さんの説法を聞く。
2日目以降は他の参加者とおしゃべり禁止。
瞑想場所は主に屋外で、川に入って岩の上で瞑想したり、木陰の下だったりした。
夜は毎晩大きな火を焚いて、それをイスでまるく囲んで瞑想した。
参加料金はお布施形式なので自由。
綺麗な自然の中でリラックスできる、いるだけでもう癒されちゃうようなところだった。
まず、参加して初日の第一回目の集まりで、お坊さんが真ん中に座り、説法をしている時、
わたしは号泣してしまった。
なんでだろう、なぜかというと、自分のルーツを思い出したから。
私は実家に世襲をめぐるさまざまな問題があり、それを抜け出して、何か別のものを探すために海外を旅してると思った。でも遠いタイの山奥まで来て、わたしは正座して、お坊さんの説法を聞いている。
お坊さんはタイ人で、周りの参加者は主に白人のバックパッカーたちだったけど、でも小さい頃から家族に連れて行かれた寺の様子や、実家での行事の様子を思い起こすには十分だ。
そしてこの混乱を、私は3日間の瞑想生活で、ゆっくり反芻し、理解し、消化していった。
木漏れ日の下や川の横に座り目をつぶり、清潔な空気を吸い込む。光や風や火がそこにある事を感じながら、勤めて頭をからっぽにする。集中できなくなったら目を開けてもいい、とにかく40分間ぼーっとすることが大事。
瞑想しない時間は自由時間で、山を散策したりハンモックに乗って綺麗な景色を眺めたり、そこで働く人たちと一緒に掃除をしたり家事をしたりした。
誰とも話さず、携帯やパソコンにも向かわない。本をもっていたら、自由時間に読んでもいい。
3日目の最後の夜、星空の下で火を囲んで瞑想をした時、わたしの瞑想もだいぶ集中力が上がっていたと思う。涙もいっぱい出た。
最後の最後、お坊さんの説法が終わった時、ちょっといい?と言ってわたしはみんなの前で話をした。
自分は寺で生まれて、でも世襲問題に巻き込まれているのがしんどくて、海外に出て暮らしていること。そのせいでスピリチュアルなものや宗教には、なんとなく嫌な感覚をもっていたこと。
でもこのキャンプに参加して、瞑想を重ねていくうちにすっと、家族の問題と、仏教の絡まりをほぐすことができた。そして整理することができた。自分でも驚きだけれども、仏教自体は実は自分の深い奥の方に確かに存在していて、自分はブディストだと気がついたこと。そしてそれを、素直に受け入れることができたこと。そんな話をみんなに聞いてもらった。
なんだかセラピーみたいになっちゃったけど、わたしはあそこで自分の問題に向き合い、癒すことができたのだ。
ちなみに、私の行ったのはPa pae Meditation Retreatという所です。
都会でストレスを抱えている人に、本当におすすめ。身も心も洗われて消えちゃうよ・・・
とにかく私は一番乗り気でない参加者だったけど一番癒されちゃったや。
猫島虎雄
アジアに恋しているジプシー、愛犬家。女