COLUMN

2023.05.16

「ズッコケマンション売却日記」 by 清水 里華 第4話/新居探しの迷路

FREEZINE運営スタッフの清水です。コラム第3話では、中古マンション売却に向けて、商品在庫を保管する別マンション契約&荷物搬出にまつわるドタバタ劇をお伝えしました。第4話では、売却活動と並行して進めていた新居探しのお話をレポートしてまいります。

夫婦で決めた新居探しの条件。それは以下の2点である。

その1/マンションの売却金で現在の住宅ローンを完済した上で、その「おつり」のみで現金購入できる価格であること
その2/23区内でライヴ活動を行っても、終電で帰れる距離であること

その1は、どなたも想像に難くない内容かと思います。
我々のような一般人が不動産を購入するとなると、通常は住宅ローンを組むわけでして、2012年に組んだ当時は、固定金利1.95%でした。この金利、当時は他行と比べても相当低かったんですが、2023年のいま見るとめっちゃ高いですね。その後、日銀の金融緩和に伴い金利がダダ下がりしたので、2016年にネット銀行の固定金利0.81%のプランに借り換えしました(それでもまだ高い感じですが)。加えて、当時は不動産の知識がまったくなかったので、うっかりせっせと繰上返済に励んでしまい、残ったローンの額はおよそ半分くらいになっていた時期かもしれません。とはいえ、まあまあの金額だったのでそいつをスパッと完済し、残った利益からWの仲介手数料(売却+購入)やら、引越・家具購入・登記等にまつわる諸費用をさっぴいた純利益を割り出し、この範囲内で購入できる住まいを探そう、という流れになったのでありました。まあ、売却を決めた時点から、そもそも我々には「どこに住んだっていいぜ」という太っ腹な心構えがあるので、ひとまず問題なし。

そして、その2についてです。我々は夫婦+夫のお兄ちゃんとの3ピースでバンド活動を行っているため、東京23区内や千葉・埼玉などでライヴ活動を行うことも月に数回あり、ハケる時間が大体23時すぎとかの時間帯になるんですよね。しかも、夫はベーシストとして別バンドのサポート活動も行っているため、ライヴ後であっても、終電で無理なく帰れる範囲設定はマストなのであります。山好きな私としては、移転先として八ヶ岳や甲府、軽井沢などをうっとりしながら妄想していたものの、ライヴを愛する夫の生きがいを奪うわけには行かない。そこで、ひとまず上記の2条件を念頭に、新居探しを開始したのであります。


その条件下で、価格的・距離的に候補に上がった物件は以下の通り。我ながら統一感のないセレクションであるが、条件ありきでピックしているのでしょうがあるまい。で、物件サイトからめぼしい物件を選び、内見予約を取り付けた。ちなみに、この時点の物件候補は、ほとんどが建売住宅である。

・天王台(千葉県我孫子市)
・百合ヶ丘(神奈川県川崎市)
・玉川学園前(東京都町田市)
・高尾(東京都八王子市)

2020年11月19日。
「天王台」(千葉県我孫子市)という土地には行ったことはないものの、日頃から利用している東京メトロ千代田線で行ける場所であるとのことで候補にあがり、早速、資料を取り寄せるべく仲介業者にコンタクトを取った。すると、「資料をお届けにまいります!」と前のめりな連絡をいただいたので、ではぜひ、ということで、自宅マンションの応接室で商談。元気一杯の23歳の営業マンはいい人ではあったが、資産価値の低い「旗竿地」の戸建物件を意気揚々とおすすめいただいたのであった。それに、やはり行ったことのない土地には愛着も湧きづらいため、こちらは申し訳ないがスルー。


2020年11月21日16時。
小田急の「百合ヶ丘」(神奈川県川崎市)の戸建物件を内見。当然、この駅で降りたことすらない。事前に仲介業者の方から、「このあたりの土地勘ございます?強烈な坂だらけですけど、大丈夫ですか?」との助言をいただいた通り、実際に宅地の周りを歩いてみると、なかなかに激しい立地。続いて、別の仲介業者に「玉川学園前」(東京都町田市)の物件を案内してもらうも、同じ所感。「これはわしらのようなヘタレには手強すぎるな・・・」と夫婦で思っていたところ、仲介業者から「お二人にはこちらの物件の方が合うのでは?駅前の再開発も進んでおりますし」というご提案をいただき、急遽、営業車で連れて行ってもらった駅が、「小田急相模原」(神奈川県座間市)である。我々は神奈川方面にまったく明るくないので、この駅の名前さえ知らなかったのだが、訪れてみたところ、駅前の開発はかなりの大規模であり、何やらキラキラ感が漂っていたのであった。案内いただいた戸建ての物件はいまいちだったが、駅前のマンションでもいいのではないかという気分になり、資料の手配を依頼する。また、ここから近いという「中央林間」も東京メトロ田園都市線の終点であるため、そちらの資料の手配も依頼する。その後、仲介業者と別れ、駅前の商店街の居酒屋で晩御飯を食べたのだが、客層や店の感じに一抹の不安を覚えつつも、まあ残る「高尾」に賭けてみようやないか、という話で落ち着いたのであった。


2020年11月22日13時。
それまでも夫婦や友人とたまに登っていた東京の低山代表=「高尾山」。その手前に「高尾」(東京都八王子市)という町があるらしく、値ごろな建売物件も多数あるよ、てなことで、別の仲介業者から「高尾」駅近辺の戸建を8件案内してもらう。しかし、いずれも駅から遠く、移動には車が必須。しかも、宅内の設備がどうにも安っぽい。山や川縁は実に風光明媚だが、地盤・洪水が心配だし、我々の苦手な虫も多い。うーむ。立地はいいけど、建売は自分たちに向いていないかもしれない・・・。と絶望しかけた夕暮れ時、最後に、駅前のとある大規模マンションへ案内してもらう。

「ここやん!」

何しろ、駅から徒歩6分。敷地内にはエリア最大規模のショッピングモール。車もいらないし、毎日の買い物にも不自由しない。大手ディベロッパーが手掛けているだけに設備や管理もしっかりしてそうだし、築5年で予算内。おまけにJR・京王線の始発&終着駅でもあるので、たとえライヴ帰りでベロベロに酔っ払っていてもひとまずは帰りつけるという利便性・安心感も半端ない。ということで夫婦で即決し、この高尾のマンション契約に向けての活動が始まったのである。

(つづく)

PROFILE

清水 里華(シミズ リカ)

都内の広告会社に勤めるクリエイティブディレクター兼コピーライター。
ときには、戦慄のオルタナティヴロックバンド「Very Ape」でドラムを叩き、ときには、WEBメディア「FREEZINE」で企画+取材+構成+イラストを担当。

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