COLUMN
2020.08.04
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2020.08.04
18歳の春。
東京多摩地区の寂れた町に住んでいた。
ノーマネーだった僕はそんな町にあったチャンプマンというボロボロのカラオケ屋にバイトの応募をした。
理由は徒歩5分だったから。
多少緊張しながらいっただろう記憶があるが、面接は即決で受かった。
本当に秒で即決だったのでなんでだろ?なんて思いながら入ってみると理由はすぐにわかった。
チャンプマンのメンツはみんなどこか壊れていたのだ。
そして人の10倍以上にゴキブリがいた。
メンツから紹介すると、
店長‥20代後半。元キャバ嬢で嬢時代に太客にお金を出してもらい夢だったカラオケ屋を地元にOPEN。夢を叶えたはずなのだが営業時間中に店に確実にいない。見かけるのは営業後の男を連れてこんできてたときくらい。
トミー‥本名富丘。バイトリーダー。30代前半。小うるさくてものすっご細かい。早いバイクのオタク。DEATHって書いてある黒いタバコを吸ってる。
青くん‥19歳。秩父出身のゴリゴリのビジュアル系。サラサラの金髪ロングヘアー。このチームの唯一の良心。
そして自分はロックスターになると思い込んでいる新人の僕。
この総勢4人の幻影旅団だった。
お客さんは1週間で1-2組くらいしかこない。
そりゃそうだ、誇張なく1日にゴキブリを10匹以上見る。
ゴキブリとカラオケしたい人などそういるわけがない。
そして実際の仕事だが、
新人への教育担当でついたトミーは早々に僕と相性が悪いと見切ったのだろう。
教育は15分で終了。ちなみに教わったのはグラスの拭き方のみ。
それ以降シフトは全て青くんと2人だった。
青くんはルナシーのJをブスにした感じだったが、とても穏やかで面倒見のいい人だった。
金のない僕に飯やタバコをしょっちゅう奢ってくれた。自分も金無いはずなのに。
お互い音楽をやっていたこともあり2人は完全に仲良くなった。
そうチャンプマンは劣悪な環境だが、なんの見張りもいない状態だった。
そんな中に10代の猿が2匹放り込まれたらどうなったか。
僕は出勤と同時に店の外まで響くようなフルテンの爆音でカオティックハードコアをかけて万が一でも客がこないようにバリアを張る。店長がパリピだったので無駄にスピーカーにお金をかけており、かなりエグイ音で鳴った。
そしてタバコ吸うか寝る。とてもシンプルだ。
それらに飽きたらブースに入りドラゴンアッシュを歌って女子大生にモテる練習をしていた。結局モテなかった。
青くんはラメラメの青いギターを持ち込みカラオケのアンプにつないで練習。そしてメイクに明け暮れていた。(今考えるとギタリストの鏡だ)
2人で勝手にシャッターを閉めて隣の銭湯にもよくいった。お互いの好きな音楽について湯舟で語り合った。
そして帰りに近くの弁当屋で肉野菜炒め弁当を買ってうまいうまい言ってよく食べていたな。
淡い青春の1ページだ。これがバイト中でなければ。
まれにお客さんがきても計算などせず全てノリで会計していた。
唯一の常連客の歌手を目指して練習にきているお姉さんにはいつもタダにしてあげてた。
とてもエモい判断だ。これがイカれた新人バイトの判断でなければ。
あのお姉さんいま歌手やってるかな?
とまあこんな感じに仕上がりました。
そんなビジュアル系と僕のゴキブリの国の終わりはすぐだった。
休日に覗きにきたトミーが僕らの惨状を発見、そのまま店長にチクったのだ。
どうチクったは知らないが青くんはお咎めなし、僕は1か月分給料を干された。
社内営業って大事だなって思った。
そして僕のシフトは全てトミーと一緒になった。
トミーはやっぱちょっと変でグラスの水滴やエプロンの皺を異常に気にし何度も注意された。客などこないのに。
衛生を考えるなら誰がどうみてもまずはゴキブリをどうにかするべきだがそこはスルー。マジいかれてる。
トミーくそウゼーな、凍らねえかなと思っていたが、一緒にいるうちにトミーはちょっと狂ってるが根はいい奴だと思う事もあり多少イライラしながらも普通に過ごしていた。
たまに早いバイクに乗せてくれたりもした。
Deathって煙草は勧められたが断った。
そうやって徐々に親交を深めていくうちにトミーがあるカミングアウトをしてきた。
なんでもトミーは店長が好きでキャバ嬢時代からの客だとのこと。
ずっと追っかけているんだと。
「はあ、そうなんすか」と受け流したが、
ちょっと待てよ、、。
て事はトミーのチクリや仕事への小うるさや細かさ、それは全て店長に気に入られるためのものだったって事か?
との疑念が一気に沸いてきた。
18歳の僕はそれがたまらなく気持ち悪く泣きながらトミーを殴った。
まもなく僕はクビになり、その半年後チャンプマンは潰れてました。。
fin
※この話は1割フィクションです。
サシ
2017年10月よりスタート。
【自由につくる人。自由をつくる人。】をテーマに発信するWEBマガジン。
concept
1人のドリーマーを中心に、世界的なコピーライター、カメラマン、オルタナティブマンの3名が脇を固め、夜な夜な世界を面白くする戦略を熱く語り合いながら運営を行っている。
「かっこいいものづくり」をしながら現実にサバイブしている先駆者たちのインタビューは必見。
2013年、「room/dreamer」を自主リリース。(現在完売にて廃盤)
2014年、Fragment主宰の音楽レーベル「術ノ穴」のV.A.「HELLO!!! vol.7」に参加。
2016年、guns N' girls Records よりファーストアルバム「Natural Beauty Skin Care」をリリース。
2019年10月 7人編成初のshit「change」をリリース。
Natural Beauty Skin Care
発売日:2016/4/15
レーベル:guns N' girls Records
品番:GAGR-004
自他ともに認める社会の落ちこぼれ、まさにどうしようもないクズ人間4人組が10年もの時をかけて吐き出した、憂鬱と葛藤、自由への叫び。
しかし、こんな時代だからこそ、キレイごとではない彼らの叫びは真実として響き、多くの同世代~若者の胸を打つ。これは現代社会における、若者達のリアルな叫びだ!!
KASHIWA Daisuke 大推薦盤。
01. 自由の結果
02. Dreamer
03. フルーツマン
04. plastic bag
05. LOAN
06. メリーゴランド
07. ROOM
08. Mango fruit (KASHIWA Daisuke remix)
09. 自由の結果 (Shintaro Aoki remix)
10. 愛の歌