COLUMN

2021.01.05

「有名な夢の中で、」 by KooK 第8回/揺れの中で、

カレーは美味しい。


摩天楼の一角に、美味しいカレー屋さんがある。週3で行っていた頃もあった。

ターメリックライスによく煮込まれたトマトベースのルーが最高だった。おそらく夫婦で作っていた。クールな奥さん。でも、ご馳走様です。といって立ち上がると、いつもありがとうございます。という言葉が返ってくる。

たった三文字違いだけど、また来ようと思った。

業務用の赤い福神漬もめちゃ美味しい。

この着メロ系の会社を辞めた後もこのカレーを食べに行った。その際、久々でも、奥さんはいつもありがとうございますと言ってくれる。こちらこそ覚えて頂きありがとうございます。



今日もあそこのカレー食べに行こうかなー
まだ間に合うかなー
PCの一部と化したカラダが欲していた。


14時46分。

ぐぁあ〜ん。がぐぁあ〜ん。

揺れた。長周期振動。

大きく左右に揺れる。椅子がコロコロガタンを繰り返す。一瞬、電気が消える。

ビルが折れる気がした。恐怖。

何分かして冷静になり、外を見下ろす。
校庭に集まる子供。黒い煙がいくつか。

見えた。


報道フロアじゃないので、バタバタもしないし、ヘルメットも被らない。

水槽の中は静かだった。

仕切りにこのビルは問題ないとアナウンスが。。信じるよ。


仕事は中断。選択は委ねられた。

とりあえずエレベータは止まったので階段で降りる。避難訓練以来の地獄の階段。脚は重くなるが大したことはない。死んでいないから。

同僚とウロウロする。移動手段は止まっていた。あっという間に日が暮れてきた。人も何処かに履けていった。


ガラケーからでは何も情報は拾えない。
とりあえずお腹が空いた。コンビニでカップのラーメンを買い、お湯を注ぐ。


3分後…


山の頂上で食べるのと同等の旨味を感じた。
非現実感が最後のスパイス。


同僚の伝手で情報を得る。他部署の方でウチに来なよ。と言ってる方がいるらしいと。

それに乗っかった。10人くらいの塊になり、その方の家に歩き出した。


ビルの周りは静かだったが、外に出ると、人がゾロゾロと歩いていた。ソレゾレのHOMEを目指して。

塊が少しずつバラける。その頃、星は増えていった。


知らない道は永久に感じる。唯唯、二足歩行を続けた。


脚が止まった。池ノ上という土地に着いた。


陽気な人がその家の主人だった。すでに何人かが座ってテレビを見つめていた。広い部屋だった。結果的には20人弱が集まった。

この部屋には昔、井上雄彦さんが住んでいたと陽気な先輩は話し始めた。壁にはいっぱい絵が描かれてたらしい。

不動産に騙されてないのか?と疑った。裏を取ってないので、未だに真実は分からない。
テレビの横のラックにはスラムダンクの完全版が収まっていた。

ふ〜ん。と聞いた。


"先輩、バスケはしたくないです。。"


ガヤガヤはしていたが、そこまで騒がしくはならない。まぁそうだ。時より強めの揺れが来る。


枝野、津波、原発がテレビでループしていた。

津波の映像が流れると周りから声が出る。
原発の映像が流れる時は特に反応はない。


「あのーこの原発、実家の近くなんですが。。」


自分が言葉を発した。

ふ〜ん。まったく反応がない。


自分も含め、誰もこの状況がヤバい事なのか知る由も無い。


小学生の頃は遠足とセットで原発に行き、原子炉内を再現した大きい模型を見ながら、どうやって電気を生み出すのかを聞いていた。
中学生の時は原子炉より海側にあるタービン建屋に入って見学した。出る時に被爆量を測定するゲートをくぐったが反応はなかった。

身近な建物だったが、しかし無知な自分がそこにいた。


この力に対して否定も肯定もしない。ただ、人間が変に賢くなり、コントロールできない域のモノを今後、創っていく事に不安を感じる。



実家に電話してみた。繋がらない。
ちょうど少し前に親がガラケーを買っていた。かけてみた。繋がらない。


膝を曲げて座った状態で朝を迎えた。寝なかった。電車が動き出したと情報を得る。帰る。

親からショートメッセージが届く。

生きてます。



地球さん、人生変わったよ。あなたにとったら太平洋裏がこむら返りになった!だけかもしれない。

地球さん、見えないよね人間。
この星にあるもので全て作っているのに、あなたに害がある毒を作ってごめんなさい。

地球さん、電気を大量に使っているこの街に残る決心がついたよ。


地球さん、我慢できなくなったらキレてもいいんだよ。知り合いのブラックホール先輩に相談してもいいよ。終わらせ方を。


自分は明日またカレーが食べれるなら幸せだよ。

いつもありがとう、地球さん。続く。

PROFILE

KooK

キッチュなニッチを探る音のカラダ。
悶々と仮説を立てて実験を繰り返し、琴線に触れるアレを巡り、
個人的なWARを起こす”逸脱音楽家兼サウンドアート発動家”
此節、音と映像のアルゴリズム解析中。

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