COLUMN

2023.06.13

「ズッコケマンション売却日記」 by 清水 里華 第6話/まさかの売出停止

FREEZINE運営スタッフの清水です。コラム第5話では、いよいよ本格スタートした売却活動と新居の仮契約についてレポートしましたが、第6話では新居にまつわるとんでもない事件についてレポートしてまいります。


2020年11月30日15時。
夫のアパレル在庫置場として契約した表参道のワンルームマンション。当然、誰も住んではいないのだが、お決まりでガス業者による開栓作業に立ち会わねばならないため、何の意味もなく立ち会う。

ちなみに、このマンションの契約時に、仲介業者である「すむぞう」さんに対し、契約の目的=「居住するのではなく、あくまで在庫保管目的で部屋を借りる」という事情をお伝えしたところ、「わかってます。大丈夫です。ですが、住んでる感を出すために、カーテンをかけて、毛布1枚くらいを部屋の中に置いておいてください」との助言をいただいたのであった。プロってつおい。


同日17時30分。
住み替え先の候補である高尾のマンション契約に向けて、仲介業者とアポを取り、新たに住宅ローンの審査を申し込む。

これはどういうことかと言うと、私が「ダブルローン」として2軒分の住宅ローンを一気に背負うという、なかなかのガクブルな状況なんですよ。原宿のマンションの住宅ローンはまだまだ半額近く残っているため、新居のローンと合わせて総計いくらになるか、などとは考えたくもない。しかも、それなりに巨額であるため、当然のように審査条件も厳しくなる。

しかし、この超低金利時代、銀行としてもローン契約は喉から手が出るほど欲しいわけであって、「期限内に自宅の売却ができるなら低金利で貸してやるよ」ってな変則的なプランを捻り出してきた。そして、最終的にこちらの2件に申し込んだのでした。審査結果やいかに。

・きらぼし銀行:変動金利0.525%、借入期間35年(自宅売却条件1年以内)
・みずほ銀行:変動金利0.625%、借入期間34年(自宅売却条件6か月以内)

その3日後、12月3日11時。
売却活動中の原宿のマンションに、2件目の内見予約が入る。代々木上原在住のご夫婦の奥様がソロでいらっしゃるそうな。

ここで改めて確認しておくべきスムーズな売却のコツ=内見時は家を不在にするべし。

よって、この頃から内見客が訪れるたびに、近所にある中華ファミレス「バーミヤン」に駆け込み、無駄にしゃぶしゃぶを食らう、という、夫婦の謎の儀式が完成したように思う。

まあ内見の結果は、リビングダイニングが狭いとのことで見送りとなったのですが、内見後の仲介業者との打ち合わせで、住宅ローン審査に2件とも通過したとの通知をいただく。

やったぜ。

こんな時ばかりは、「サラリーマンでよかった…」と心から思うのであった。そしてこれはほぼ、新居となるマンションを契約できたに等しい。

そこで、最短でも12月中に高尾のマンションへ引越すことを目論み、引越業者の手配と併せて、表参道のマンションの解約手続きも実施。

その2日後、12月5日。
朝から引越業者が来訪。家具・家電の売却・処分をお願いできる業者さんを手配し、事細かく査定してもらいつつ、見積もりをとってもらったのであった。


そしてその夜、事件は起きた。


仲介業者から携帯に着信。嫌な予感。
なんでも、契約しようとしていた高尾のマンションの売主夫婦が、なんと離婚調停に入ることとなり、マンション売却そのものが白紙状態になったとのこと。


うっそ。そんなことあるんすか。


詳しく聞いてみれば、離婚した場合におけるマンション売却金の財産分与で揉めているそうな。通常の財産分与では、夫婦それぞれで1:1の割合となるそうなのだが、その割合に対して、旦那様が異議申し立てを行い弁護士を立てたとのこと。


うーむ。まあ、夫婦間の事情はよくわからないし、納得いくまで当事者同士で話してくれや、と思ったので、

「取り急ぎマンションの売却を進めて、さくっと現金化しておけばいいんじゃないすか?」

てなことを仲介業者に伝えると、これはさすがにプロ。双方の仲介業者がすでにそのように助言を行ったそうな。それに対して、

「売却契約をしているのは嫁の方なので、実際の売却金がきちんと公平に精算されるか、信用できない」(by 旦那様)

…どんだけこじらせてんのよ、お二人。
そんなこんなで、奥様側も弁護士を立てるという泥沼モードに突入し、その後は仲介業者もろくにコンタクトを取れない状態とのこと。

バカヤロー!こちとら巨額のダブルローン抱える構えで、売却&住み替えに人生かけてんだよ!

そこで、すかさず同じマンション内で売却中の4階の部屋へとターゲットをすげ替え、内見を手配。「火事場の馬鹿力」とはこういうことを言うのでしょうか。併せて、もしこの部屋が契約できた場合の最速引越日を確認してもらったところ、さすがに年内は難しく、年明けの1月末になるとのこと。しょうがあるまい。引越業者・表参道のマンションの仲介業者に日程変更の連絡をしつつ、4階の部屋の内見をただ待つしかできない我々なのであった。

(つづく)

PROFILE

清水 里華(シミズ リカ)

都内の広告会社に勤めるクリエイティブディレクター兼コピーライター。
ときには、戦慄のオルタナティヴロックバンド「Very Ape」でドラムを叩き、ときには、WEBメディア「FREEZINE」で企画+取材+構成+イラストを担当。

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