COLUMN

2023.06.06

「ズッコケマンション売却日記」 by 清水 里華 第5話/撮影、そして仮契約

FREEZINE運営スタッフの清水です。コラム第4話では、売却活動と並行して進めていた新居探しについてお伝えしました。第5話では、売却マンションの撮影と新居の仮契約についてレポートいたします。

2020年11月28日9時30分。
夫のアパレル在庫の山を、なんとか表参道のマンションに一時避難させ終えたのが昨日。このカオスぶりを見てくれ。

そして今朝、いよいよ売却マンションのホームステージングである。

おさらいすると、ホームステージングとは、売却マンションの潜在顧客を増やすために、その魅力を最大化しながら宣材写真を撮影してくれるプロセスである。プロのインテリアコーディネーターが各居室を掃除し、小物などをオシャな感じで配置してくれて、なおかつプロのカメラマンが魅力的に撮影してくれる、といういたれりつくせりのサービスなのである。

「ピンポーン」

ドアを開けると、そこには仲介不動産業者2名+プロのインテリアコーディネーター女性2名+プロのカメラマン1名。なんだかすごいことになってきちゃったぞ(井之頭五郎)

部屋を見るなり、仲介業者がひとこと。
「ずいぶんきれいになされましたね!」

さもありなん。仲介業者は、いたるところに段ボール山積みの我が家しか見たことがないわけである。我々自身も、床ってこんなに広かったっけ?と思ってしまったくらいである。

そして、掃除・演出・撮影が同時並行でスタート。その際に演出された各居室の様子を、スマホでこっそり盗撮したのがこちらである。なにこのオシャ空間。長年住んでいる我々からしたら、実に噴飯物の仕上がりである。プロってすごい。

その後、13時前には全ての作業を終え、引き渡しの前の設備点検(インスペクション)を行い、こちらも問題なくクリア。


2020年11月28日15時。
その当日、いよいよ売却マンションの記念すべき1組目の内見客のお出迎えである。しかし、本当に綱渡りのスケジュールだなあ。


ここで、内見客をご案内する際の鉄則。

「居住者が留守にしていた方が、気兼ねなく見ていただける」

これは仲介業者からのアドバイスだが、実際、自分の身に置き換えたらそう思う気がする。
そこで我々はいったん外に出て、仲介業者からの連絡を待つべく、寒空の下、30分ほど家を空けることとなった。

とは言え、早く売却を決めたい我々としては、一件目の内見で決まってくれたらどんなに楽か、ということでもう気が気でない。意味もなくマンションの近辺をうろつき、ちょっとでも内見客の姿を遠目で確認できないか、ってんでマンションの裏口に隠れてそっとエントランスを見張る、などの下世話な行動に出たりしたが、いま振り返ると本当に何やってんでしょうね。

その後、仲介業者から「内見終了」との連絡があり帰宅。
お客様のプロフィールは、代々木上原在住、30代の医者夫婦。
旦那様がえらく気に入ったそうだが、奥様が間取りに不満をもっているとのこと。近隣の物件と比較して検討するとのことである。ドキドキ。

この後は、ホームステージング後の写真を公開しつつの販促活動(WEB & チラシ)が本格的に始まるとのことで、こちらにも期待しつつ次の展開を待つのみ。


2020年11月29日11時。
その翌日、新居探しの旅へ、一路「高尾」へ。
「このマンションで」という目星は先週つけていたので、昨日の仲介業者と現地で落ち合い、売り出し中の部屋を内見させていただく。

1件目は最上階の14階で、外廊下から望む高尾山と連山の眺めが実に雄壮で素晴らしい。即決。ここしかない。さっそく、仮契約申込書に記入し、購入申込を行う。


2020年11月29日13時。
同じマンションの2件目を内見。別の仲介業者から、4階の未公開物件を案内してもらう。
実はこの仲介業者、売却中の原宿のマンションの「買取」を提示してきた仲介業者でもあった。

ここで使っております「買取」とはいわゆる専門用語ですので、初見の方のために簡単にご説明いたします。
「買取」とは、不動産の仲介業者が売却マンションを直接、投資物件として買い取るという仕組みです。買い取った後は、企業の采配で分譲に出すも良し、賃貸に出すも良し。もろもろの条件を鑑みつつ、企業側がソロバンをはじきながら収益最大化を狙う、というやつですね。

一方、売却側(我々)のメリットとしては、

・売却手数料がかからない
・売れ残りのリスクが回避できる
・住み替えスケジュールが立てやすい

などの点が挙げられるのだが、
デメリットとしては、

・市場売却額の6割~8割の価格に留まりがち

という点が挙げられる。よって、あくまで個人的な感想ではありますが、よほど切羽詰まった状況でない限りは、あまり使わない方がいいんじゃないかな、と思ったりします。(※本当に個人的な感想です。ケースによって異なります)

ところが、買取を提示してきた彼は、
「こちらの物件なら、8割以上、むしろ満額くらいの強気の値付けができるかと思います!」
と鼻息荒くアッピールしてきたため、じゃあその心意気を見せてくれや、ということで、当日を待ったのであった。

そして、当日。

彼が提示してきた買取額は、やはり想定内。実に売出価格の8割以下。おおう。
ということで、買取はお見送り。購入も、14階の部屋が良すぎたのでお見送り。ごめんね。

強気で査定を提示してくれた威風堂々たる彼の姿は、もはやどこにもなく、
しょんぼりと肩を落とした失意の若き営業マンがそこにいたのであった。

(つづく)

PROFILE

清水 里華(シミズ リカ)

都内の広告会社に勤めるクリエイティブディレクター兼コピーライター。
ときには、戦慄のオルタナティヴロックバンド「Very Ape」でドラムを叩き、ときには、WEBメディア「FREEZINE」で企画+取材+構成+イラストを担当。

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