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2021.08.06

【日本語版】world's end girlfriend × KASHIWA Daisuke 対談(後編) | BLOOM ~音楽で希望を咲かせるということ~

フラワーアート:相壁 琢人(ahi.) 撮影:田中 生(ahi.) 取材・構成:清水 里華(FREEZINE)
KASHIWA Daisuke 衣装提供:石岡 美久(algorithm)

二人が考えるメロディ、リズム、時間の概念について。

編集部(以下、編):後編は、お二人のファンがSNSで寄せてくれた質問コーナーにしましょう。ではまず、こちらの質問から。「お二人の音楽はいろんなジャンルの音楽の影響で溢れていますが、どんなアレンジであっても必ずメロディやハーモニーを大切にしてエモーショナルな表現に取り込んでいられるように思っています。ご自身の音楽においてメロディやハーモニーはどのような役割を担うものだとお考えでしょうか?特にwegは以前、雑誌のインタビューでメロディは誰にでも分かりやすく時代や流行の影響を受けにくいものとおっしゃっていましたが、音楽家としてのキャリアの中でメロディやハーモニーに対する感じ方、捉え方の変化がありましたらお聞かせください。」とのことなのでコメントをお願いします。

world’s end girlfriend(以下、weg):音色やリズムパターンは時代の影響を受けやすいですね。自分の作品においてはメロディやハーモニーはシンプルで素直なものにしようと思ってて。作曲を長年続けていると、ベタなコード進行は避けたくなったり、複雑なハーモニーを使いたくなったりもしますが、そういう気持ちには流されずに素直に音楽が行きたがってる方向にメロディは作っています。なので自分の音楽はごちゃごちゃ色んな音が入ってて複雑に聴こえるかもだけど、根本はとてもシンプルな音楽だと思っています。また作曲時においてはメロディ、ハーモニー、ベースなどと分けては考えていなくて、それらの境界線は曖昧でドラムも含め全てメロディ(=音/線の動き)とも言えるし全体で一つとも言える。それらが組み合わさる時に、所謂西洋音楽の理論から外れた音になっていても各パートが鳴りたい音であることを優先します。

LAST WALTZ | world's end girlfriend | Virgin Babylon Records

編:wegの音楽におけるメロディの役割とは?

weg:メロディの役割は、一般的に考えられるように感情表現であったりストーリーテリングでもあるし。それは人間の脳の情報処理の性能とメロディが持つ情報量のバランスが合っているためそうなっているのだと思う。しかしメロディは単体で存在してるものではなくその周りの音や音色、様々な要素によって様々な表現が可能になるね。

編:ありがとうございます。では柏さんにも同じことを伺います。

KASHIWA Daisuke(以下、柏):僕はそこまでメロディ重視してないです。ポップスとかいわゆる歌ものにおいては、どうしても声って耳がいきやすいのでメロディが重要なんですけど、インストだと別に主旋律じゃなくても聴きどころって幾らでも作れるわけで。特にメロディがなくても音楽は成り立つし、ノイズに耳がいく場面もあればビートが主役の場面もあって、もちろんメロが主役の場面もあれば。常にメロディが前にいなくてもいいというのが僕の考え方です。

編:ありがとうございます。では次に哲学的な質問です。「音楽は非常に時間を中心としたメディアですが、時間の本質や、一瞬一瞬に起こることについて何か特別な洞察をお持ちですか?」

weg:時間は各生命ごとにその個体が持つ時間軸があり、音楽も各楽曲ごとに時間軸があり、音楽を聴くときはその人の時間軸と音楽が持つ時間軸が影響しあうものだと思ってて。例えば水面に100個小石を投げたら、100の波紋が拡がって、それは石の大きさによっても波紋の大きさも異なり、各波紋は影響しあい変化していく。自分にとって時間は一つの線上を進むだけのものではなく円状に拡がりながら影響をうけあい変化するものだと思っています。

編:時間について、柏さんはいかがでしょう?

柏:質問からそれますが、「時間」っていうワードに最近感じた事がありまして。よく言うじゃないですか、今が自分の人生の中で一番若い時間、今この一瞬が、って。

編:そうですね。

柏:かつ、人生において一番経験値を積んでるのも「今」なんですよね。だから前向きに考えると、時間の概念で「今」が一番若く、最も経験値を積んでる時なんです。だから何でも遅いことはない、思いついたその瞬間からチャレンジしたいなと。僕がDTMを始めたのも比較的遅いんですけど、思い切って始めて道が開けたこともあり、常に今を大切にチャレンジしていきたいと思ってます。

編:ありがとうございます。音楽が時間っていうのを聞いてちょっと思い出したことがあって。音楽や映画やアートなどいろんな芸術作品がありますが、絵っていうのは観る側が自分の好きな時間を使って観ることができる一方で、音楽とか映像作品っていうのは、それが再生されている時間、たとえば20分間だったら20分間ずっと、観る側も向かい合わなければいけない、という議題についてはいかがお考えでしょうか。

柏:最近は、映画でも飛ばしながら観るって話も聞きますし、音楽もサブスクで始まってすぐフックがないとスキップみたいな話も聞くので、作り手もそれに合わせなきゃいけない雰囲気もあります。ただ僕が今回52分の曲を作ったのはそういう時代への抵抗でもあって。海外リスナーから「昔のレコードみたいな聴き方を思い出した」っていうコメントももらいました。時間をかけなきゃ得られない体験ってあると思います。小説や映画でエンディングが感動的なものでも、いきなりエンディングだけを観ても別に感動はしないわけであって。ストーリーや伏線、時間の流れとか感情の動きがあって初めて感動するし、やっぱり時間をかけなきゃ得られないものっていうのは必ずあるわけで。

weg:それはあるよ。今って、娯楽はいくらでもあるから、それを消化するために1.5倍速で動画視聴しちゃったり。オレもNetflixの回数多いドラマとかは1.5倍速で見ちゃうのでその気持ちもわかるけど、情報を多く消費することに必死になるのはアホらしいと思うよ。寄り道や面倒も無駄な時間も大事だなと。

柏:そうですね。結果だけ求めると人生って味気ないですよね。やっぱり過程や道中もストーリーの一つ。それも含めての感動なので、無駄に思える時間でもやっぱり必要なものだと思います。

weg:ま、自らの表現を他者に体験させるというのはある種、暴力的なものだと思う。その人の時間を奪い、感情や思想に揺さぶりをかけるようなものだしね。

二人が考える音と映像の関係、今後の活動について。

編:続きましてこちらの質問です。「音と視覚の関係について聞きたく思います。コロナがあったことで、音と映像の関係性は変わった様に思いますでしょうか?私が初めてwegのライブを見た15年くらい前から、音だけでなく視覚を大事にしていた様に思います。配信ライブにおいても、boolさんの映像や見せ方などにもこだわっていた様にも思います。一方で柏さんは音に注力していた様にも思います。このコロナを経て、音と映像との関係性は以前と変わったかどうか伺いたいです。」

柏:僕は元々、音楽に映像は必要ないと思ってまして。視覚というのは五感の中でも強いので、映像があることで意識が視覚に引っ張られてしまうし、純粋に音楽だけを楽しめない気がします。また「program music」シリーズに共通するテーマですが、曲を聴いたリスナーがそれぞれの世界を想像してくれたら、その人のストーリーのBGMになってくれたら嬉しいなと思ってます。

program music III | KASHIWA Daisuke | Virgin Babylon Records

weg:基本的にシングル、アルバムなどの音源作品、MV、ライブ、配信ライブ、これらはそれぞれ全て違った表現としてやってますね。それぞれの表現には特性や環境があり、伝えられる情報も異なり、そこにリスナー個人個人の持つ想像力が掛け合わされます。そのリスナーが持つ想像力の範疇を超えるために、映像や演出を掛け合わせていきます。音以外の要素は、伝えたい世界をある程度方向づけたり、感覚的刺激を高めることにより非日常に持っていく、という狙いはありますね。コロナによって音と映像の関係性は変わったか?というか、ライブとリスナーの関係性が変わったと思うよ。またライブと配信ライブは別物で、これまで良いとされたライブの形でそのまま配信ライブをやっても、当たり前に表現としては伝達力も強度も落ちる。それは音だけに限らず、映像、照明、音響も配信ライブ用のアレンジは必要になりますし、配信ライブにおいては視覚情報はとても重要。そして、今の現状や環境でしかできない表現や遊びをやらないともったいないな、とは思いますね。人間の歴史上でもなかなかない変化の時代なので。

編:ありがとうございます。続いて柏さん、質問をひとつお選びいただけますか?

柏:ステマ感ありますが「mizuirono_inu」のどういうとこに惹かれているのか、という質問ですね。まあ好きで応援しているんですけど、なんだろう、ミュージカルですね、最初に感じたことは。演奏というよりステージで劇を演じてる感じで、ダメで下品なんだけど、希望に転化する瞬間を表現してる。僕の芸術観で「闇の中の一筋の光」ってテーマがあって、そういう絶望から希望を感じる表現がすごく好きで。mizuirono_inuの根底にも同じものを感じました。リアルで突き刺さるなって。weg企画のイベントにも呼んでもらったので、wegがどういうふうに思ってるのかも聞いてみたいです。

weg:なんていうのかな。mizuirono_inuの「room」MV見た人は分かると思うけど、あの感じが伝わる人は意外といるんじゃないかなって思ってて。あの辺の表現自体をやってる人はたくさんいるんだけど、それを音楽作品としてしっかりやれてるバンドは意外といないなっていう。あのあたりを表現しようとすると大抵はフザケすぎたり過激になりすぎたりして大事な奥底の切なさが消えてしまっていて、mizuirono_inuはアホなことやりつつも奥底の切なさや情熱も表現されてるなと。弱みとしては、バンドだけではまだ完成まで持っていけてないところで、それはサポートの柏君のミックスが掛け合わさって表現の強度があがってる部分はある。ま、それでもあそこまで形にできてるのはいいなと。

柏:だから音楽っていうよりも、マンガを見てるような面白さですね。そして毒のある歌詞なのに聴く人を不快にさせない言葉選びのセンス、そこが彼らの卓越してる部分だと思ってて。そして最後に締めるところは締めるみたいな、珍しい表現です。

weg:珍しいっていうか。なんだろう。俺は別に珍しいとは思わないけど、あの感覚を表現する人はいっぱいいるんだけどあまりうまく表現できてない。ジャンルやスタイルに飲み込まれすぎたり、コミカルになり過ぎたりとかで。あの感覚をエモーショナルなものとしてちゃんと汚く、美しく、下品に切実にやれるっていうのがmizuirono_inuを俺が面白いと思ってるところ。あの感覚を分かるって人は多いと思うから、そこにピンとくる人に届くようにmizuirono_inuはそこを掘っていかないといけないと思う。

柏:やっぱり歌詞かな。言葉選びに独特な魅力があるというか、そこが一番引っかかったポイントですね、個人的には。

編:ありがとうございます。では最後に、次のアルバムのテーマとは?

weg:*と*です。初めてちゃんと****を正面切ってやります。

柏:僕はテーマというか構想は決まってるんですけど内緒です。まだ先になりそうだなと思ってますけど。wegの予定は?

weg:年内予定。

柏:まじすか?ぶつけていきたいな。

編:もっともっとお聞きしたいところですが、お時間ということで、これにて終了とさせていただきます。ありがとうございました。

weg:お疲れ。ありがとう。

柏:ありがとうございました。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて8月13日(金)からレイトショー1週間限定で、新編集を施したworld's end girlfriendのライブ作品 劇場版「DANCE ALONE」の、新感覚音響カスタムスピーカーシステム「odessa(オデッサ)」上映が決定!
映画『うみべの女の子』のメインテーマ曲である「Girl」のスペシャルMVも併映します。このMVは映画の劇中映像に未公開シーンを加え『うみべの女の子』のウエダアツシ監督が編集しました。

https://ttcg.jp/human_shibuya/

劇場版「DANCE ALONE」
【上映期間】
8/13(金)~8/19(木)
【場所】
ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1
【料金】
チケット均一:2,000円

■「DANCE ALONE」とは
『カラフルな闇の中で一人で踊り続けるための未知なる儀式』というコンセプトで制作されたコンサート作品「DANCE ALONE」は、美しい光と闇と轟音とともに新曲、初ライブ演奏曲、未発表アレンジverなどが披露された。ゲストVoにSmany, BOOLが参加。レーザー、照明にhuez、3Dワールド制作にyoung yAA、VJにrokapenis を迎え、全体のディレクションはworld’s end girlfriend自身によって行われた。本編尺は98分。

■odessa(オデッサ)とは
optimal design sound system(+α)の略。「劇場ごとに最適化されたサウンドシステム」に「劇場独自の映画体験が付加される」という意味。セルゲイ・エイゼンシュテイン監督『戦艦ポチョムキン』にあるオデッサの階段シーンが、モンタージュ理論を確立した映画史におけるターニングポイントとされていることから、この音響システムが、東京テアトルの新たな歴史を作るものとしたいと考え、名付けました。

PROFILE

world's end girlfriend
(ワールズ・エンド・ガールフレンド)

かつて多くの隠れキリシタン達が潜伏した長崎県の五島列島に生まれ、10歳より独自に音楽/作曲をはじめる。カンヌ映画祭に出品された是枝裕和監督作品「空気人形」の映画音楽を担当。クラシカルな楽曲からエレクトロニックな楽曲、ノイズからAKB48ドキュメンタリー映画音楽まで圧倒的美醜と振り幅で活動し続ける。2016年、アルバム「LAST WALTZ」をリリース。健全優良魑魅魍魎が集うVirgin Babylon Records代表取締役。

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KASHIWA Daisuke
(カシワ ダイスケ)

学生時代、プログレッシヴ・ロックに影響を受け作曲を始める。2004年にKASHIWA Daisukeとしてソロ活動を開始し、2020年までに9枚のフルアルバムをリリース。2009年には世界三大クラブ、ベルリンのBerghainでCLUSTERとの共演や、ドイツ最大級のフェスティバルFusion Festival 2009にも出演。新海誠 監督作品 "言の葉の庭"の音楽をはじめ、海外の映画やアニメの劇伴、多数のCM音楽なども務める。自身の創作活動の他、様々なメディアへの楽曲提供、ミキシング&マスタリングエンジニアとしても活動している。

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