FEATURE
2023.09.26
FEATURE
2023.09.26
もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。
全ての始まり。歪んだギターもさることながら、等身大かつウィットに富んだ歌詞に食らいまくった。自分の生活の延長線上の言葉遣いで捻りを加える…っていう今の作詞の原点がここ。なお筆者の人生初ライブは中学3年の「LIVE-GYM 2001 “ELEVEN”」長野公演。当時人生初の失恋直後だったことから「Raging River」で激泣きした。
メタルへ傾倒した転機。自分の中でこれを超えるライブアルバムなし。小学校の頃には解散していたのだが、中学校の友達が聴かせてくれた「紅」がB'zより速い!激しい!Voの人が怒ってるっぽい!と衝撃だった。ドハマりしたところにちょうどこの3枚組CDが出て、予約して購入。「WEEK END」はX JAPANになってからのライブアレンジが好きだな。中3の頃は図書委員長だったので、職権濫用でディスクガイドとかHR/HM系の本をガンガン入荷して読み漁った。
メタル以外をdigするようになった転機。終幕までのLUNA SEAが人生で一番好きな音楽と断言出来る。メンバーがインタビューで影響元と語る音楽をチェックしたり、ソロ作品の参加ミュージシャンから広げていった結果、退屈だと思っていた父親のレコ棚(主にジャズやフュージョン)は宝の山になった。SLAVE的には各々の一番好きなアルバムを語り合うのが定番なのだが、自分は表題曲「Love Song」が入ってないから一番好きなフルアルバムが決められない…。
日本語ラップに傾倒した転機。知ったきっかけはもちろんDragon Ashでfeat.した曲なのだが、ラジオで聴いた「結婚の理想と現実」に食らいまくる。ループの上でラップが曲を形作る構成、様々なMCがfeat.する曲作り、セルフボーストてんこ盛りのリリック…と、メタルやヴィジュアル系とは全く違うカタルシスに出会った1枚。
ポストロックやハードコアに目を向けた転機。高校2年の冬、隣のクラスの友達から「兄貴に借りた凄い音源」と聴かされ完全にやられた。壮大で深いサウンドスケープと、日本語のポエトリーリーディングやシャウトはそれまで触れたことのないボーカリゼーションで、言葉選びは詩的だが明らかに「本当のこと」を歌っているのが分かった。余談だが「友達の兄貴」とはmynameis…のGt.Vo.宮島大地さんである。
日本語ラップ熱を取り戻した転機。大学進学で東京に出てからはより攻撃的な音楽を求めてメタル(特にデス/ブラック)やハードコア(特にニュースクール)ばかり買っていて日本語ラップから離れぎみだったんだけど、友達の紹介で遊んだDJから新宿のタワーレコードで「このレーベルマークが付いてたら全部リアル、全部買い」と薦められ買った1枚。バンド音楽では感じられない「シャレにならない不穏さ」が全編に漂っている素晴らしい作品。これも余談だがそのDJは現在「神と和解せよ」というすんごい名前で第一線にいる。
kOTOnohaのきっかけになった1枚。2009年に就職で長野に戻ってからバンドを始め、当時はPay money To my Painにギルガメッシュを注射したようなラウドロックをやっていたのだが、かっちりとした拍子に囚われないアプローチと暖かい言葉選びはゴリゴリの音楽では得難いもので、心惹かれた。なお「雲の上のお話」でSUIKAメンバーと共に客演する詩人・小林大吾さんもkOTOnohaの数多ある影響元のひとつ。
kOTOnohaのきっかけ、その2。Vo目線でいくと反好旗のコウスケさんもSethの川ちゃん(と、ここ2年で呼ばせてもらっています)も純粋で、オーラあふれるミュージシャン。憧れまくってたけど、地元ライブハウスの店長に「啓志はこういうまっすぐなバンドには勝てないと思うよ」と言われ、自分らしい表現を見つけたいと決意した。のちに対バンするようになった時には両者とも大きく音楽性を変えていて、その懐深さにまた食らったな~。
バンドやる側になってから一番心動かされた音源。kOTOnohaの前のバンドやってた頃は国内メタルコアが超盛り上がってて自分もそういう音楽をやりたいと思っていたのだけど、aSPはしなやかな日本語、それもポエトリーアプローチを取り入れていて明らかに他のバンドと毛色が違った。Vo.Yonemuraくんの「本気でモッシュしたら県がひとつ消えるのでは…?」という巨漢ぶりも唯一無二。楽曲面で自分が理想とする「何でもありの音楽」を高純度かつ超硬度でやっていたり、地元に県外バンドを招聘する自主企画、繋がりを活かした音源制作やアートワークなど、活動面でも大いに影響された。
音楽の聴き方に新たな視点をくれた転機。メジャーリリースゆえ選曲自体はかなり定番揃いなんだけど、これが7inch使いかつMIXされているのがヤバい。大学時代から「踊れる音楽」という感覚で東映特撮サントラや徳間ジャパンのV.A.「テレビ狂時代」を聴いたりしていたものの、当時はその心地良さが言語化出来ておらず、あれってレアグルーヴ的楽しみ方だったんじゃん!と胸に落ちたきっかけ。何度かDJやってドラム打ってる和モノばかり流したところ「テクニックは無いのに選曲とマイクパフォーマンスで酒が進みすぎる」との好評を頂いた。
大好きな音楽は数あれど「転機」となると意外と容易に絞れて自分でもびっくり。
バンドを始めるまでは本当に友達が少なかったし、他人と関わるのがひたすら苦手だったので「息苦しさから解放してくれる音楽」「ナシをアリにしてくれる音楽」に人生を変えられたんだなと痛感。今もバンド、ラップ、仕事問わず「自分に真似出来ないやり方をしている人」に心動かされるのはその延長線上かも。
ほぼ日本語で歌われている作品なのも、ダイレクトにメッセージや言葉遊びが理解出来るからか。
ここ数年は「踊れて酒がうまい」という理由で70sのソウルやジャズファンクばかり聴いているが、この酒のうまさを言語化する転機も近々訪れるのでは…とワクワクしています!
ひろしと読む。1986年生まれ。長野県長野市に育ち、新卒就職後に音楽を始め「なんかバンド楽しい」というノリで大きく道を踏み外す。
ジャパメタバンド、ラウドロックバンドを経て2014年、kOTOnohaを結成。「なんか幅広い方が楽しい」というノリでジャンル問わず国内外様々なアーティストと共演を重ねる。
コロナ禍以降は「なんかラップ楽しい」というノリでサイファーに行き始め、UMBことULTIMATE MC BATTLE長野予選のオーガナイズや各種司会業にも携わる。
「なんか楽しい」時間と空間を提供することにこだわりたい男。