BLOG
2023.05.23
ライヴハウスとかバンド活動の未来
文:Ape
BLOG
2023.05.23
文:Ape
FREEZINE運営メンバーのApeです。
僕はEC事業などを営む自営業者であると同時に、毎月5本~8本ほどのライヴ活動を行うバンドマンでもあります。
現在40歳である僕の生き甲斐はライヴハウスでライヴをすることです。その活動があるから日々の生活や仕事もなんとか人並み程度にやっていけていると思います。もしも僕からバンド活動を取り上げたら、恐らくまともに働きもせず小汚い格好で意味もなくニヤニヤ近所を徘徊するヤバめのおっさんに成り下がってしまうと思われます。
要するに僕の人生というものは、ライヴ活動やライヴハウスに完全に依存しきっているということで、これは非常に危険な状態であると思うのです。何故なら、自身のバンドがいつまでも当たり前のようにライヴハウスに出演できるとも限らないし、もっと言えばライヴハウス自体がいつまでもこの世に存在し続ける保証なんてどこにもないからです。そう思うと途端に恐ろしくなってきます。
もし自分に需要がなくなってライヴ活動が出来なくなってしまったら人生の終わりだ。
もしライヴハウスという業態に需要がなくなって、この世からライヴハウスが消え去ってしまったら人生の終わりだ。
僕はこれらの恐ろしい現実に対し、どのように抗うことが出来るのだろうか。
ライヴハウスから見て、バンドに需要があればお呼びがかかるし、需要がなければお呼びがかからない。凄くシンプルな話です。僕らバンドマンは商品であり、ライヴハウスはお店です。お店はどの商品を仕入れるかを検討する際に顧客のニーズを分析したり、これまでの販売実績を見たりすると思いますが、ライヴハウスのブッキングでもそれと同じようなことが行われていると思います。(出演料とかノルマを払っているバンドのことは知らん)
だから、ファンをたくさん持っている売れっ子のバンドというのはライヴハウスからしたら是が非でも売り場に並べたい、ライヴハウス的に言うと出演して欲しい商材ということになります。それなら僕も売れっ子バンドを目指せばライヴハウスからの引き合いも多くなって取り敢えず問題は解決しそうな気がしますが、それはまたちょっと本末転倒というか、目的がずれてくるんですよね。
僕がバンドをやる目的というのは、自分にしかできない自分が本当にやりたい音楽・表現を追求することなので、売れることを最優先にしてしまうと恐らくトレンドを追いかけたり、やりたくないこともいっぱいやらなければならないと思うので、そうすると我が儘で心の弱い僕はメンタルをやられて塞ぎ込んでしまい、結局日々の生活や仕事もままならなくなってそのまま人生が終了するということになってしまうのです。
では、どうすればよいか。これはもうある程度自身の経験則で答えが出ているのですが、ちゃんと格好良い曲・音楽を作り続けて、ちゃんと格好良いライヴを継続する。そうすれば仮に分母が少なかったとしても、認めてくれたり応援してくれたりする人が少しずつ現れる。その人たちの期待を裏切らないように、でもいい意味でたまに裏切ったりしつつ、自分に嘘をつかずに真摯に活動を続けていけば、その輪はほんの少しずつ広がっていったり、たまに色んな偶然が重なって一気に広がったり、と思ったら飽きられたり、見放されたり、それでも腐らずに続けていけば「お前らは客入んないけど俺が好きだからずっと呼ぶから」なんてことをライヴハウスのオーナーや店長が言ってくれたり、ということが結構あります。
だから正直、自分自身の需要のことはあまり心配していないです。ちゃんと格好良いバンドであり続ければ、ライヴハウスに出演し続けることは可能だと思います。ただ、その状況に甘えきってしまうと両者共倒れになってしまう恐れもあるので、もうちょっとちゃんとお金のこととか数字のことも考えなくちゃいけないよね、と思う訳です。
20数年バンドをやってずっとライヴハウスに出入りしておりますが、昔と比べてライヴハウスに来る人は明らかに減りました。
理由はたくさんあると思います。娯楽の多様化。少子化。貧困化。チケ代高すぎ。YouTubeでええやん。ロックダセェ。ハズレの日多すぎ。なのにライヴハウス多すぎ。など、挙げようと思えば他にもまだまだ挙げられると思いますが、現在のライヴハウスは一部のコアなリスナー・一部の太いお客さんのおかげでギリギリ成り立っているように個人的には感じています。
このまま何も策を講じずに、成り行きに任せていて大丈夫だろうか。ライヴハウスという業態は今後も存続できるのだろうか。僕はただの一バンドマンという立場ながら、勝手に心配しております。
ちなみに、僕は独立して自営になる前はサラリーマンとしてとある企業に勤めていましたが、退職する直前は経営企画室室長という大層な役職に就かせていただいており、会社の経営方針や中長期計画などを考える立場におりました。その僕の感覚からすると、これからの時代はきっと泥臭くロックな姿勢に拘ってライヴハウス経営一本でやっていこうとするのはちょっと厳しいのではないかと思います。コロナとかああいったイレギュラーが発生することも分かった以上、ライヴハウスは今のようなギリギリの資金繰りでは次に何かあったら一気に吹っ飛んでしまいます。もう前回のコロナ禍のようには皆がクラファンとかで助けてくれたりということも無いと思うので。なので、自ら経営状態を改善したりリスクヘッジの方法を考えたりすることが出来る、もうちょっと経営に携わったことがあるとかビジネス的な視点を持った人がどんどんライヴハウス経営に参画していくべきだと思います。
あとはもう単純に客商売なので、まあまあ高い料金設定でクソ不味い酒を出すとか、社会性ゼロのクソみたいな接客態度とかは論外なので(一部そういう箱があっても面白いけど)、その辺はちゃんと経験者を採用するとか新人教育を徹底するとか、並行して従業員の待遇も改善していく必要があるからやっぱり何らかの方法でもっと利益を出していくことを考えないといけないと思います。
僕の中に利益を生むためのアイデアはぼんやりといくつかあったりはするのですが、ここにそれを書いても「実情を知らねーくせに机上の空論で適当なこと言ってんじゃねーぞボケ」と反感を買うだけで損しかしなそうな気がするので具体的なことは何も書きませんが、とにかく一部のコアなリスナー・一部の太いお客さんだけに依存していると、いつか彼らも疲弊してしまうかも知れないし、何よりお客さん・ライヴハウス・バンドの3者が全員ちゃんとハッピーな状態が理想なので、ちょっとだけ未来に目を向けてそれぞれの立場で出来ることを考えていけたら良いですねーと思う訳です。
僕は昨日も自身のバンドVery Apeでライヴをしまして、素晴らしい共演者とバチバチやりあって、終わったら肩を組んで笑いながら乾杯して、来場したお客さんも楽しそうで、本当に最高の夜だったのでこんな日がずっと続いて欲しいなあと思いこれを書きました。
Ape
戦慄のオルタナティヴロックバンドVery Apeのヴォーカル。
バイドク、mizuirono_inu、ロザンナのサポートベーシスト。
東京の端っこの高尾という町に生息。
生業はECサイト運営、プリンタブルTシャツ卸売販売。
AprilFool主宰。FREEZINE運営メンバー。