COLUMN

2021.02.16

「東京で魔女になる方法」 by 猫島虎雄 第4回/IKEAの家具が組み立てられない。

今まで住んでいた場所を出なくてはならなくなり、引っ越しをすることになった。
家具を新しく新調しちゃおうということで、IKEAを大量に購入した。
女一人暮らしで組み立てられるか心配もあったけど、美大出てるし大丈夫だろ、とか思って組み立てサービスは頼まなかった。
だって私はマンションで行われる秘密のサロンで変態行為を見ながらすき焼きを食べる会💕みたいなのには一人でしれっと顔を出せるんだが、業者であろうとなんだろうと知らない男の人を自分の部屋に上げるのは無茶苦茶気持ち悪いんだ。


しかし、困った。

どうにもこうにもIKEAの家具が一人で組み立てらんないのであった。
力が足りなくてネジやボルトがしめらんないし、2人で支えながらビスを打たなきゃいけないところがいくつかあった。

途方に暮れた。テーブル2つ棚も2つおまけにベッドもあった。
ムンクみてえなギリギリ具象、みたいなムカつく指示書には2人のゆるキャラが描かれていて、にっこり助け合って組み立てていた。

もう部屋もぐちゃぐちゃである。

こんな時どうしたらいいの。
女の体は弱くて損だ。子供を産むことでしか、役に立たないわけ?
したら産まない女はどうなるの?社会のお荷物なわけ?とかメソメソした。

私が今まで暮らしていた中国は家具がついていたし、
何より生活を助け合ってる誰かが常に身近にいた。
愛し合っていようがいなかろうが、セックスをしようがしていなかろうが。

セックス、そう、IKEAの組み立てを、気軽に人に頼めないのは、セックスの問題が関わってくるからなんである。

だって家に上げるなんて、誘われてると思われる。
私より力のある人じゃないと意味がないんだから、女の人は頼めないし。

いやしかし、そんなことを悶々考えている場合ではない。
IKEAはどーすんの。マジでどうにもなんないんだから。

私より力があって、部屋に入れても怖くなくて、私とのセックスに興味を示さない、おまけに日々親切にしている。そんな逸材が2人、思いついた。が、一人は締め切りに追われていると言い、もう一人はそんな下らない事で呼ばないでくれと言った。(ひどい)

何人か、声をかけたら来てくれるだろう人ってのはいた。部屋に入れたら気まずい思いをさせてしまうかもしれない、25歳の男の子とか。私とのセックスに興味があるだろう、52歳の男の子とか。

だけどそんな気まずい思いさせたりとか、そんなにしんどい組み立ての対価を払いたくなかった。

私の考える組み立ての対価としての理想は、セックスじゃなくて引っ越しの手伝いとかなんだ。
私だってキッチン用品とかさくさく段ボールに詰められるよ。人の家の引っ越しの手伝いは好きでよく行ってたな。
組み立ての手伝いに行ってあげたから、引っ越しの手伝いに呼びやすい。そんな助け合える関係が理想だった。少なくとも中国では、そうやって迷惑掛け合って関係を築いてきた。


いやしかし、そんなことを悶々考えている場合ではない。
セックスしたいだろうがしたくないだろうが、知らん。そんなことはどうでもよい。
IKEAが組み上がるなら、何よりじゃないか。

だってどうにもこうにも、IKEAの家具が組み立てらんないんである。

25歳に3万円支払おうか、52歳とセックスしようか、
部屋に入れて気まずかろうが何でもいい。組み上がるならいい。
お願いだから来てほしい。たのむ。


猫島

PROFILE

猫島虎雄

アジアに恋しているジプシー、愛犬家。女