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2019.02.05

三上ちさこ インタビュー | もがきながら「いま」を生きる 同志として発信したい。

取材・構成:清水 里華 撮影:ゆうばひかり

fra-foa解散後、出産・育児を経て、
もう一度、曲を生み出す感動を求めて。

編集部(以下、編):一世を風靡したバンド「fra-foa」の解散後、実に13年ぶりとなるフルアルバム「I AM Ready!」を2018年11月にリリースされましたが、どんなきっかけがあったのですか?

三上ちさこ(以下、三上):妊娠・出産を契機にバンドを解散し、ひたすら育児に専念してきました。子供が大きくなってくると、何か足りないというか、満たされないという気持ちになって。歌詞や曲が出来上がった時のあの感動をもう一度味わいたくて、貯金をはたいてゼロからソロ活動を始めたんです。ミニアルバムを作ったりライヴを行ったりはしたものの、なかなか次につながらず限界を感じていたときに、ちょうど「SEKAI NO OWARI」のプロデュースを手掛けた保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)さんからFacebookで連絡をいただいて。実はその頃、10年ぶりにアルバムを購入したアーティストが「SEKAI NO OWARI」だったので、なんてタイムリーなのかと(笑)それで日産スタジアムのライヴを見させてもらった後、控室で保本さんと話した時に「音楽活動をこれからちゃんとしていきたいという気持ちはありますか?」とお誘いいただいたのがきっかけです。成功している人は与えられる夢の大きさが違うんだなと感じ、自分もそういう立場に立ってみたい、と思ったんです。

一人よがりでは、
本当の「自由」は実現できないと気付く。

編:アルバム制作期間中に苦労したことや、やりがいを感じたことは何ですか?

三上:実は、プロデューサーの保本さんから「俺、もう無理」と何度も言われたんです(笑)保本さんは、自分の時間や労力、気力のありったけを注いで、楽器も演奏もプログラミングもミックスもアレンジも全部やってくれているのに、自分の気持ちだけで迂闊な発言をしてしまうことが多々あって。自分の発言に責任が持てない人についてくる人なんて誰もいない、と本音でアドバイスをいただいて、ようやく自分の姿を客観視できるようになった感じがありました。楽曲についても、自分一人だったら今作のようにデジタルとアナログの絶妙な融合は絶対にできなかったと思います。新しいマイクで録った声がすごく良くて、すでに歌録りが終わった曲をそのマイクで歌い直しをさせてもらうなど、試行錯誤を繰り返して作り上げたんです。いまにして思えば、自分の足で立って発信する人ほど、第三者の目線や助けが必要なんですよね。一人よがりでいるだけでは、本当の「自由」を実現できない。だからこそ、気配りであったり、愛される部分が必要で、「この人の力になりたい」と思ってもらえるような人でいるということも大切なんだと学びました。

「破壊」から「共有」へ。
もがいている感情や姿勢のすべてをさらけ出す覚悟。

編:新作やインストアライヴでの印象と、バンド時代の印象とでは180度くらい変わられた感じを受けたのですが、ご自身ではどのように感じていますか?

三上:そうですね、fra-foa時代はとにかくすべてを「破壊」したかったですね。ライヴ=自傷行為という感覚で、音の洪水を浴びて自分の魂を浄化したい、そんな欲求に苛まれていました。「絶対」なんてありえない。自分も人も信じない、そんなスタンスだったのですが、子供を産んでからは価値観がガラッと変わりました。自分が死んだとしても、子供への愛情だけは絶対にずっと残ると感じるようになって。それと、2018年に大阪で行われた「ミナミホイール」というライヴイベントに出演した時に、待っていてくれたファンの方たちの熱気に直面して、改めて音楽の力ってすごいと思ったんです。作り手にとって、歌は作り終えた時に手を離れるものなのですが、歌そのものは聴いてくれた人の人生にその後もずっと寄り添っていく。ああ、自分はそういう仕事をしていたんだ、という発見があったんです。だったら、もっともっと凝縮して濃いものを届けたい。満身創痍でボロボロになりながらも、信じていることに全力で取り組んでいる姿をさらすことで、自分と同じように劣等感に苛まれてもがいている人に共感してもらえて、明日を生きていける力になったらいいな、と思うようになったんです。

人にはみんな、それぞれの輝き方がある。
自分にしかできないことを一緒に追求していきたい。

編:新作の中で特に三上さんの思い入れが深いと言われる「Anti Star」という曲には、そんなメッセージが込められているのですね。

三上:そうですね。人は誰もが、自分にしか出せない輝きをもっていると思うんです。私自身、いろいろなことに興味があるものの、他の人にできることならあえて自分でやる必要はなくて。自分にしかできないこと、それはやはり歌や自分の声だな、って思うんです。だから、ステージの上で喝采を浴びるスターとしてではなく、聴いてくださるみんなと同じ立ち位置に立って、「私もとことんまでキツイ思いをして頑張るから、みんなも一緒に自分だけの輝きを探して前へ進んで行こうよ」というメッセージを込めているんです。

編:なるほど。かつての三上さんは、映画「LEON」のマチルダのように哀しみを背負った少女のような印象だったのですが、先日のインストアライヴでは、民衆を力強く扇動するジャンヌ・ダルクのように見えました。

三上:本当ですか(笑)

「死」を意識するからこそ、
残された時間=いまをどう生きるかが大切。

編:では逆に、fra-foa時代から変わることなく引き継いでいるものは何ですか?

三上:幼い頃に兄を病気で亡くしているのですが、火葬場で白い煙を見た時にもう兄はいないんだと実感し、「死」を意識するようになりました。それはネガティブな意味ではなく、悲しみの中にも希望を見出すというスタンスです。自分の人生は有限だからこそ、残された時間で何をしたいか、いま何をすべきかと常に考えています。たとえば、ステージが終わった後に余力を残していたら嘘だと思うし、嘘はイヤなんです。歌だって、上手く歌えているのを見せたいわけじゃない。声が枯れていても喉をひらく努力をして、いまできうる最大限のパフォーマンスを引き出したい。どこまでも全力を出し切る、いまを生き切る、そんな根底はバンド時代から変わっていないですね。

編:いま、三上さんがやりたいことは何ですか?

三上:フルアルバムを出したばかりなのですが、実はいま新曲を作っている最中でして、自分で聴いても心が動くというか、これを届けなかったら自分の人生は一体何のためにあるのか、と思うくらいの出来なので、乞うご期待です(笑)やはり、過去よりもいまつくっているものが一番面白い。いつもそんな風に感じます。

フラットに過ごす時と、ここぞという時と。
たいせつなのは、メリハリ。

編:ところで、とてもミステリアスで生活感がまったく感じられない三上さんですが、ふだんの暮らしはどのような感じなのですか?

三上:昔はミステリアスなイメージを売ろうとしていたかもしれないですね(笑)でも実は私、ポンコツなエピソードには事欠かないんですよ。大学時代は学校にも行かずにダラダラしていたんですけど、歌だけは好きだったので、夜中にスタジオへバイクを飛ばして夜通し歌い、力尽きてそのままコンクリートの床で寝ちゃったりとか。あとこれも学生時代の話ですが、部屋で歌を歌っていたら隣室の医学部の学生から苦情が来たので、ヘルメットをかぶりながら歌い続けたりとか。結局、掃除機で壁ドンされましたけどね(笑)あと、子供が小さかった頃は子供を抱いて京都の鞍馬山に登り、登山中に授乳したりとかも普通です(笑)ふだんの生活ではあまり考え込むことなく、あえてフラットに暮らすようにしているかもしれないですね。でも、決めるべき時は絶対に決める。そんなメリハリがある方がいいと思っています。

1日のタイムテーブル

ライブ当日

  • 7:30起床、朝食&弁当作り
  • 8:30朝食
  • 9:00掃除、洗濯
  • 10:00入浴、準備
  • 11:00夕食作り
  • 12:00個人リハ(昼食)
  • 16:00会場入り、リハーサル
  • 19:00ライヴ本番
  • 22:00打ち上げ(夕食)
  • 翌1:00就寝

一番好きなリボンマイク、 RCA44BXと。

愛用ののど飴。「ボイスケアのど飴」は 口内炎ができにくくお気に入り。

最近ハマっている、 SONYのノイズキャンセラー付ヘッドフォン。

趣味のスイーツ作り。

PROFILE

三上 ちさこ
(ミカミ チサコ)

シンガーソングライター

1998年仙台にてバンドfra-foa(フラホア)を結成、2000年にfra-foa(フラホア)のボーカリストとしてトイズファクトリーからメジャーデビュー(代表曲は『澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。』『青白い月』『小さなひかり。』など)。全身全霊を振り絞るように歌う圧倒的なパフォーマンスで観る者を強烈に魅了し、旧赤坂BLITZにてワンマンライブを成功させるも、2005年にバンドは解散。その間、ソロ活動において2枚のアルバムと、自主制作で1枚のミニアルバムをリリース。観客側がそれぞれの才能を発揮できる場をライブで提供するなど、自分にしかできない活動を模索してきたが、先が見えず行き詰まりを感じるようになっていた。そんな中、SEKAI NO OWARIやゆず、井上陽水などを手がけたCHRYSANTHEMUM BRIDGE保本真吾氏と出会い、「今の音楽シーンを覆すような、最高のアルバムを作ろう!」と意気投合。試行錯誤と紆余曲折の末、3年という制作期間をかけ、実に13年ぶりとなる渾身のフルアルバム『I AM Ready ! 』を完成させた。2019年2月からはこちらも13年ぶりとなる全国ツアーを開催する。

《2019 年ワンマンライブ・ツアー “I AM Ready! TOUR”》
2 月 10 日(日)名古屋 ell.FITS ALL
2 月 11 日(月・祝)梅田シャングリラ
2 月 23 日(土)仙台 HooK
3 月 2 日(土)下北沢 GARDEN
開場:16:00/開演:17:00
料金:全自由¥5,000-(税込)※整理番号順入場 ※ドリンク代別途必要

2019 年ワンマンライブ・ツアー “I AM Ready! TOUR” チケット一般販売中

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衣装協力:White Mountaineering
<お問い合わせ先>White Mountaineering 03-6416-5381

アルバム情報