PEOPLE

2021.07.20

Hello1103 インタビュー | 時間芸術に関する一歩先の未来を自力で引き寄せる。

企画・撮影・取材:miNami 構成:FREEZINE

新宿で育ち、南米の風を浴びたヴォーカリストにしてFREEZINE運営メンバーのmiNamiが、独自のフィルターで「波」に乗っていると感じる各界のフリージンに密着撮影&インタビュー。さまざまな枠を超えた新たな出会いをお届けします。

第1弾は、リアルVRライヴという新しい試みにチャレンジする
電子音楽&映像ユニットHello1103!

miNamiによるmy-Namiポイント解説

Hello1103のVRライブで最もおすすめするのが視覚と聴覚で体感する没入感!VRは360°、上下横はもちろん、後ろまでHello1103が手がけた世界が広がり30分間、目の離せない瞬間ばかりです。そしてHello1103の最高の音楽。VRライブの為にスピーカーの配置などを会場と念入りに打ち合わせをし、後ろからも、そして装着しているVRゴーグルからも音を体感できるようになりました。体全身で感じるHello1103の音楽は、更に没入感を感じます。日常的に没入感を感じるという方はほとんどいらっしゃらないと思うのですが、音楽とVRでいい意味で非日常的に感じる没入感をぜひ体感してもらいたいです。また、回を重ねるごとにこのVRライブ、どんどんパワーアップしています。VRライブという新しい試み、更に進化していく過程を体感させてくれるHello1103。今までの音楽の常識をぶち破ってくれる最高のお二人です。

写真左から:
Hitomi (Hello1103:Trackmaker/Engineer)
miNami(FREEZINE:インタビュアー)
yukako(Hello1103:VJ/Visual Creator)

Q:ユニット結成の経緯と名前の由来は?
A:共通の知人から誘われたバンドが前身。Hello1103という名前は固有名詞かつ覚えやすいものを求めてヒトミの名前をもじりつつ。

Q:楽器を使ったベーシックなバンドを組んだ経験は?
A:yukakoは大学のジャズ研究会、ヒトミはクロスオーバー研究会のメンバーでした。当時のyukakoのパートは鍵盤で、今でもソロではシンセを弾いています。ヒトミの当時のパートはギター。こちらはたまにトラックに入れる程度ですが、弾くのはもっぱらMoog Guitarです。Moog Guitarは2008年頃にMoogから発売されていた特殊なギターで、電磁気をフィードバックさせて持続音を作り出すことができるユニークな楽器です。

Q:現在のライブ形式にするまでの経緯や苦労談は?
A:4リズムの生楽器バンドからエレクトロへの大転換だったので、結成から数年間は音楽性を固めるためにトラック制作に集中していました。しかし、楽曲を揃えてみると、バンドでもなくダンスチューンでもないHello1103の音楽はどのライブハウスからも音楽的な距離が遠く、迷子のような状態に。当時は仲間も拠点もなく、本当にゼロからのスタートでした。基本的には2人とも楽観的なので、どこかに水の合う場所があるだろうと様々なライブハウスに直接連絡を取り、頂いたブッキングのオファーも片端から受けていました。そんな中、とある企画の共演者に大宮ヒソミネを勧められ、それからはkilk recordsのライブハウスを中心に活動しています。
音楽・技術的には、単なる生楽器の代替を越えるもの、エレクトロでしかできない可能性を求めて今に至ります。わりと機材を入れ替えるのでそのたびにトラブルと闘っているのですが、日本画家・速水御舟の「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」という言葉を胸に前進を心がけています。

Q:音と映像の組み合わせにおいて、原点となった体験とは?
A:映像の質感そのものは木漏れ日や波間の光などの自然物からインスピレーションを得ることが多いですが、「組み合わせ」という意味ではゲームが原体験だと思います。幼少期から現在まで、常にその時々の新しい娯楽を切り拓いてきたコンピューターゲームに強い畏敬の念を抱いています。最近のゲームで印象に残っているのは、ビジュアル面では「Ghost of Tsushima」、システム面で革新的だったのは「SUPERHOT」。後者はVRゲームという新しい土壌のうちでも特に衝撃的でした。

Q:VJはどのようなテーマで制作しているのか?
A:VJ素材はyukakoが制作しています。メインツールはAdobe After Effects、Resolume Arena。
演出のテーマは対象のミュージシャンによってさまざまですが、Hello1103の場合、
1. 直線・曲線・幾何学…未来や先進性
2. 日常風景や植物を混ぜた抽象・ノイズ…心象風景や過去・郷愁
を意図して制作しています。他のアーティストのVJに入るときの制作テーマは打ち合わせ等で決めます。音楽ジャンルにもよりますが、VJの映像は基本的に音より前に出過ぎないように気を付けています。映像作家というよりは、ライブハウスの照明に近いVJだと思っています。VRのVJのシステムは、現時点では全てTouchDesignerで動かしています。3DモデルはyukakoがCinema4D等で制作し、それ以外のビジュアルエフェクトはヒトミがTouchDesignerで組んでいます。

Q:VRを使ったライブをしようと思った経緯とは?また、今後VRに加えてやってみたい試みとは?
A:2019年頃から個人的にVRゲームを楽しんでいて、その新しさと今までの娯楽にないトリップ感に夢中になりました。この感覚と普段Hello1103が行っているライブの興奮を組み合わせて他に類を見ないものを作れないかと思案していたところ、その年の末頃に現在のシステムを思いついてデモを作成。1年ほど試行錯誤を重ね、2021年初頭に晴れて初公演となりました。半年間VRライブを続けている中でも新たな発見がいくつもありました。ビジュアルに関しては開発当初技術レベルでの制約があったため、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を参考にフラットな方向に寄せていたのですが、徐々にリアルなテイストも出せるようになってきています。
サウンドチームも毎回新たな挑戦と発見があります。VRゴーグル内で壮大な景色を見ているとき、そこに響く音声にも無意識のうちに相応の迫力を求めてしまうようで、迫力あるVR映像に負けないサウンドを獲得するためにリアスピーカーとトップスピーカーを加えて4.2.2イマーシブオーディオのシステムを導入します。これ以上の展望はまだ見えません。自分たち自身、「Hello1103 Live:VR Experience」の公演を重ねて磨き掘り下げていくなかで次の原石を探しだすのが目的のひとつになっています。

Q:Hello1103の活動を通じ、目指していることとは?
A:音楽を中心とした時間芸術に関する一歩先の未来を自力で引き寄せること。

Q:今後のライブハウスシーン、はたまた人生における使命とは?
A:自分自身の使命からは離れますが、ライブハウスシーンに対しての所感としては、もともと日本のライブハウスが育んでいる表現の多様性には素晴らしいものがあり、しばしば聞かれる「来ればすごいものを見せる」という言葉自体に嘘は無いのだと思います。問題は前半の「来れば」に集約されている広告・周知・来場に詳しい人間がいなかったり軽視していることでこの部分の流れが弱いことです。「ライブハウスをオンラインに引っ張り出して来場の敷居を下げる」という目標は奇しくもコロナ禍によって爆速で達成されたので、次はネット上での個性的かつ魅力的な見せ方を各ライブハウスが確立していければ。変な内輪ノリにならずにオープンに人を招いてほしいです。

PROFILE

Hello1103
(ハローイチイチゼロサン)

Hitomi (Trackmaker/Engineer)、yukako (VJ/Visual Creator)による電子音楽ユニット。
有機的なデジタルサウンドと叙情的な旋律、潜在意識を具現化したかのような映像表現を用いて非日常の空間を表出させる。

2019年よりRegular Setによるライブに加え、静謐な美しさを求めたAmbient Setを開始。ライブハウスでの演奏にとどまらない活動を展開し、好評を博している。
2021年にはVRワールドの自由さとライブハウスの迫力ある音響を融合させたライブイベント『Hello1103 Live:VR Experience』を開始。

VJとしては即興的なエフェクト操作によってリアルタイムに映像を生成するスタイルを持ち、自身のライブでの演奏にとどまらずmouse on the keysをはじめとして数多くのミュージシャンの映像演出を手がけ、またライブハウスの映像制御システムの構築も行う。

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