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2021.11.09

takuto インタビュー | ⾃分で⾃分に驚けるかもしれない。そんな願望が、創作の源泉。

取材・構成:清水 里華 撮影:ゆうばひかり

過去にやったことのない要素を
作品の中に必ず⼊れること。

編集部(以下、編):ツインドラム+ツインベースという特異な6人編成バンド「about tess」を率いるtakutoさんですが、結成に至るまでの経緯を教えていただけますか?
takuto(以下、t):2004年にabout tessとメンバーが4人被る前身バンドが急遽解散することになり、その時点で決まっていた3本のライブをキャンセルするのが嫌で結成しました。そのバンドから引き続き一緒に活動できるメンバー(G・B・ DS・DS)と、新たに加入したメンバー(G・B)でこの編成になったのですが、2019年にギターが体調不良による休養、その後サポートで加入したギターが体調不良で脱退したので、ギターを探すのはやめて、2021年現在はサポートKEYが加入してツインドラム、ツインベース、G、KEYという6人編成で活動しています。

編: 「about tess」に込めた想いや名前の由来とは?
t:ロマン・ポランスキー監督の映画「tess」が大好きだったので。 tessだけでも良かったのですが、バンド名にするにあたり、新たな名称として引用する形にしたくてaboutを頭に付けました。バンド名自体が意味を持つもの、意味を主張するものにしたくなかったというのもありますし、読めるけど意味がわからないものにしたかったのですが、「tess」という映画は本当に美しい悲劇なので、こういう機会で映画のことを知り、それによって映画に辿り着いて、やっとなんとなくニュアンスが伝わって欲しい感じです。

編:作品制作の時にこだわっていることは?
t: about tessに限って言えば、バンドが自身の過去作品においてやったことのない要素を必ず入れるようにしています。今後の制作ではどうなるかわかりませんが、ライヴで熱量を持って演奏できること、今のメンバーの技量で演奏可能なことを前提とした楽曲を制作してきました。もちろん、なるべく6人という編成を音でもわかるようにしたいと思うのですが、これは非常に困難ですし、場面によっては10人以上の音が鳴る場合もあります。アーティストとしてのクライアントがいる制作だとオーダーに沿ったものになるのですが、僕らしい部分を必ず入れるようにしています。CMの制作等に関しては特に何もありません。

無難で凡庸なものになる危険性を認識し、
自分なりのエッジを求める。

編:ライヴの時にこだわっていることは?
t: about tessに関しては、一生懸命集中して演奏する部分と、そこにぶつけれるカウンターを探し続けることで、自分達にも、観てくださってる方にも、閃きと余白が同時に生まれて欲しいと思っています。サポートやゲストとしては、そのアーティストの音楽が最適な形で表現されるよう、音も身体もすべてを注ぎ、最大限に一員になろうとします。

編:ものづくりで大切にしたいことは?
t:僕は音楽というのは「責任の取れないものに責任を取ろうとし続ける行為」だと思っているので、時間的、技術的、金銭的に限界や制約はあるにせよ、「あとひと手間」を大切にしています。そして良い物を作ろうとする行為は、その過程において無難で凡庸なものになる危険性を絶えず孕んでいると思いますので、その選択したものに自分が考え得るエッジがあるかどうかは、大切にしたい重要な要素です。

編:作品を通じてどんなことを伝えたいですか?
t:具体的なメッセージ等を伝えたいということは一切なく、思い思いに聴いて自由に解釈して欲しいのですが、大袈裟な話ではなく聴いて下さる方の様々な経験、人生、日々の出来事が同じように僕にもあって。そこが完全に一致、共感するなんてことはないけど、曲を通して「生きてればこそ」という曖昧な、でも強い思いが相互的に伝わればいいなと思っています。言葉にすると凄く難しいですし、陳腐になる怖さもあるのですが。だからこそというか自分の音、演奏は可能な限り良いものでありたいと思っています。

編:創作の源泉について教えてください。
t:自分が自分に驚けるかもしれないという願望です。

編:ミュージシャンとしてのやりがいは何ですか?
t:ギターを弾いていなかったら出会えなかったはずの年齢性別国籍問わず多くの方達との出会い、国内外問わず様々な場所へ行き演奏ができる喜びでしょうか。そして、音という形のないものだからこそ可能な、言語化できない未知の感覚を体感できること、また自分の音が音楽というものの一部となれる感覚は、本当に掛け替えのないものです。

大好きなのは、スタンダードを破壊し、
新たな音楽を生み出すアーティスト。

編:音楽をはじめたきっかけや、幼少期~学生時代のことを教えていただけますか?
t:幼少の頃から姉の影響でピアノのレッスンを受けていたので、楽器との出会いは物心ついた頃です。自分でもバンドをやりたいと思ったきっかけは、14歳の時に大阪城ホールでレインボーのライブを観て、ライブ自体にも感動したのですが、多くの人がそのステージに対して熱狂する様子を見て、僕もこれがやりたいと思いました。それでピアノをやっていたのもあってキーボードを買いに楽器屋に行ったのですが、何故かギターを買ってしまうというのがすべての始まりです。高校生でバンドを始め、その楽しさにのめり込む日々でした。朝ギターを弾いて面白くなるとそのまま学校を休んで弾き続けたりしていました。地元ではかなり上手い方だったので他校からちょこちょこ腕自慢のギタリストがちょっと喧嘩腰で会いに来ましたが、結局みんな仲良くなって共同でライブの企画を市の公民館でやったりして本当に楽しかったです。そう言えば高校2年生の頃、初めてオリジナル曲を演奏するバンドを組み、何故かそこそこ人気が出て、少し離れた街のライブハウスでワンマンをやりました。

編:影響を受けたアーティスト・クリエイターは?
t:作風で誰かに影響を受けたことはほとんどないというか無自覚なのですが、逆に言えば今まで見聞きして来たすべてのアーテイストに影響を受けているのだと思います。例えば僕はマイルス・デイヴィスが大好きなのですが、影響を受けているのは音楽そのものより、その当時のスタンダードを破壊していくような、新たな音楽を生み出していくような活動だったりします。ただ身近にいる友人知人の音楽家には直接的な影響受けまくっていると思います。

編:3年間、音楽を離れた時期があったとのことですが、どんな理由や思いがあったのですか?
t:21〜27歳まではひたすら売れたいが為に活動していたのですが、ある日突然、曲を作る、ライブ活動をするモチベーションが消失しました。本当に「あれ何でこんな事やってるんだろう?」という感じで気持ちがなくなりました。それは今思うと、売れる為だけにすべてがあったので、その都度流行している曲を分析して、曲の構成を考えたりすることに強い虚無感と自失を感じたのだと思います。その3年後、ジャコ・パストリアスを聴いて衝撃を受けて、再びギターを手に取るまでは一切ギターにも触れなかったですし、小説を書いて応募したり路上で絵を描いて売ったりしていました。

言語化できない心の動きを補ってくれる
数少ないもの、それが音楽。

編:なぜ人生に音楽が必要だと感じますか?
t:僕の人生なのか、人々の人生なのかでまた答えが変わってくるような気がします。一般に音楽が持つ力というのはあまりにも教育的で、その仕組み、楽しみ方を知っている限られた人達のもののような気がします。が、それを踏まえた上でこの現代の日本に生きている人々に限って言えば、他愛のない事や繰り返しに感じられる日常を特別なものにする力は、音楽が持つ最大の力の一つだと思いますし、構造が複雑で高度に形成された音楽を自分なりに経験と共に解釈できるようになることは、所謂、情緒と言われる心象形成を豊かにすると思います。そして自分が感じる言語化できない心の動きを補ってくれる数少ないものだと思います。が、しかし2021年現在、広く聴かれる音楽は、あまりにも商業依存かつ固有のキャラクター依存が強いと感じます。音楽って良いもんだなぁと感じるエピソードとしては、ライブハウスで観た誰かの演奏が、とか、フジロックでみたあのライブがとかも色々あるんですがそれより、僕の知人のオペラ歌手が修行の為ナポリに住んでいた時、夕食時、丘の上でオペラを歌ったら、丘の下の街から拍手と歓声が大きな波のように丘の上まで響いてきたというもので。本来音楽は、知っているもの同士だけが共感し合うものではなく、普段は全く聴かないけど触れたら感動できるものだと思います。そういう意味では、音楽でしか伝わらない人生の彩りが確実に存在する以上、人生にとって音楽は必要なのではないでしょうか。

編:音楽を通じて社会や世界にどんな変化を起こしたいですか?
t:この設問も非常に難しくて、結果的に社会や世界に変化が起こる可能性はあると思うのですが、その為に音楽を作ることは考えたこともなくて、聴いてくれた個々の中で何かが少し変化したり豊かになったり何かを始めるきっかけや救いになれば本望ですし、そんな大きな働きかけではなく、言葉では全てを言い表せない感覚、なんか分からないけど良いとか、喜怒哀楽に分別できない感情とか、その心象の波が大きくなって結果的にその人の次に繋がるものになれば良いなぁと思いますし、その人が他の音楽を聴く時により深く解釈できるようになるとか、前より楽しめるようになれば、役割を全うできたんだと思います。

自分で進んだ道に訪れる不自由さの中に、
見つけられた自由は尊い。

編:takutoさんの考える音楽の可能性とは?
t:難しい質問が続きますね(笑)ポップスのフィールドでの新しい音楽のジャンル的な、または娯楽としての他分野との融合としての可能性なのか、医療や化学や農業、その他娯楽意外の分野に関するところまで広げた話なのか難しいですが、総じて乱暴に言えば、僕が接してきている音楽は西洋音楽のある限られた一部分でしかないと思うので、世界中に存在する、そしてこれから鳴るであろう音、音楽が未知の領域に介入しその在り方を変化させて行くという意味では可能性しかないと思います。そんな拡大解釈した可能性と同時に、僕が弾く一発のコードが、誰かが弾く一発のコードが、聴いた人の人生の彩りを豊かにする可能性というのも、音楽の持つ大きな可能性だと思います。

編:スキルアップ面で工夫されていることは?
t:基礎的な修練は怠らないようにしてますが、技術的な壁にぶつかった時はとにかく機械的に練習します。例えば弾けないフレーズが出て来た時にそのフレーズをまず鍵盤で打ち込んで、速度を遅くした状態で鳴らしながら、同時に録音しながら弾きます。録音したフレーズが音楽的に成立していれば、その速度を徐々に上げていくのですが、このやり方で大体のフレーズは弾けるようになります。あとはギター以外の楽器のフレーズを弾くことを定期的にやっているのですが、ギターでは困難な運指が出て来て非常に良い訓練になります。

編:今後の目標や展望は?
t:長らくabout tessの新作を出せてないのと自分のソロ作品を形にしたいです。両方ともモチーフというか断片は大量にあるのですが、納得できる落とし所に持っていきたいです。あとはあらためてギタリストとしてスキルアップと、ミュージシャンとしての立ち位置を明確にする必要性を感じているので、その為に修練と準備をしています。おそらくここ数年ではっきりした形にできると思います。

編:では最後に、takutoさんの思う「自由」とは?
t:全ての事は自由だと思えば自由、不自由だと思えば不自由で。自由ではない状態が不自由なのかと考えればそれはまた違うのかなと。世捨て人のような生活をしたら自由なのかもしれないですけどそれはそれで多くの不自由がありそうですよね。曖昧な言い方をすれば「感じれるかどうか」だと思いますし、具体的な自由が欲しければ必要なものがあるんだと思います。何となくわかって来たのは、自分で進んだ道の先に訪れる不自由さの中に見つけられた自由は尊い気がします。明確に定義するなら自ら選んだ、もしくは受け入れた世界の中で自分の意思でコントロール出来るものが自由な気がします。なんかいろいろ大変でも、まぁ生きてればこそだなぁと感じれるのが自由です。

1日のタイムテーブル

  • 11:00起床→ギターを弾く
  • 12:00家を出る
  • 13:00スタジオ→ライブハウス→人の家でギターを弾いたり音楽の事したり
  • 1:00帰宅→ギターを弾く
  • 6:00就寝

【メインギター/ fender ストラトキャスター】テレキャスターを探していたらfenderの人がこれどうですか?と出してきてくれて一目惚れ。時と共に鳴るようになってくれて一緒に成長しています。

【メタルピック】14歳の時に好きになったギタリストがこれを使っていて、ピックはステンレスなんだと思って使い始めました。僕の立ち上がりの早い音はこのピックである事が大きな要因です。

【お化けのペダル (JHS Pedals Haunting Mids )】Midに特化したEQプリアンプで格段に抜けが良くなります。そして非常に見た目が可愛いです。

【SHIGEMORI/Ruby Stone】何十年も歪の音に納得できなかったのですが、このペダルに出会って解消されました。「凛として時雨」の北嶋君がメーカーを紹介してくれてtakutoモデルを作ってくれました。

PROFILE

takuto
(タクト)

ギタリスト

about tessをメインのバンドとして活動しながら、
world's end girlfriendのサポートギター、
Maison book girl band setのギター、
圭(baroque)のライブゲスト参加、DURANとの競演等、
ジャンルを超えたライヴ・レコーディング活動を精力的に行う。

トリッキーな演奏、即興演奏から楽曲、アンサンブルを重視した演奏、どんな場面でも押し引き巧みで自在なアプローチ、オールラウンドでの多種多様な表現を得意とするが、いずれもtakutoらしい立ち上がりの早い音が唯一無二である。

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