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2020.01.21

三島友加里 インタビュー | 働く女性の背中を押す アクセサリーを作りたい。

取材・構成:清水 里華 撮影:ゆうばひかり

大手アパレルメーカー勤務を経て辿り着いた、
自分らしいものづくりの形。

編集部(以下、編):2015年より個性的なアクセサリーブランド「nezu」デザイナーとして大活躍の三島さんですが、ブランド立ち上げの経緯を教えていただけますか?
三島友加里(以下、三島):nezu立ち上げの前は、大手アパレルメーカーに8年ほど勤めており、洋服や小物のデザインを手がける部署に所属していました。売上を上げるべくいかに生産を回すかが問われる会社で、なおかつピラミッド組織のためデザイナーとして経験を積んでベテランになるまでに時間がかかるんです。そんなこんなで徐々にフラストレーションを感じるようになり、会社に勤める傍ら個人の作品を作り溜めていて。そんな頃、同じくものづくりの好きな友人から展示会への出品を勧められて、その時から「nezu」の屋号を名乗るようになりました。
編:「nezu」の名前の由来は何ですか?
三島:学生の頃の学園祭でたこ焼き屋を出店したのですが、その時にみんなで動物の仮装をしたんです。私はネズミに扮したんですがそれがハマり役で(笑)、以来「ねずちゃん」と呼ばれるようになったのが由来です。もともとブランド名も名前っぽい方がいいかなと思っていたので、そこから改めてコンセプトを固めました。
編:nezuのアクセサリーは、毛糸やアクリル素材など、独特の素材感が特徴的ですよね。ご自身が一番こだわっているポイントは何ですか?
三島:やはりnezuならではの質感でしょうか。もともと洋服のデザイナーをやっていたため生地の質感にはこだわりがあって、理想の手触り感と軽さを実現すべく、生地は糸から手織りで作っています。

1本の糸から世界観を織り上げていく、
nezuのシーズンコレクション。

編:わざわざ糸から生地を手織りされているとは、相当なこだわりですね。
三島:そうですね、テキスタイルやニットの作家は多いのですが、差別化を図るためにも、やわらかな素材の中にもシャープな印象を作り出したかったんです。横糸にはウールを使い、縦糸には金属やアクリル、PVCなどの硬い素材を組みあわせることで、やわらかな素材感と硬い織り目とのコントラストを生み出しています。実は私の出身地である岐阜の尾州地域は、奈良時代から続く毛織物の一大産地でして、シーズンごとに地元のツイード生地工場へ出向いて糸を分けていただいているんです。
編:コレクションごとに糸を選定するところから始められているのですか?
三島:アクセサリーブランドでは珍しいのですが、自分自身がアパレル出身であることから、洋服のブランドのように半年に一度コレクションを発表するようになったんです。そのたびに糸選びから始めるので、まあ本当に大変です(笑)。
編:コレクションの作品はどんなところから着想されるのですか?
三島:nezuの場合、単に作品を制作するだけではなく、まずはシーズンごとにテーマを設定して、テーマに沿った大きな世界観を構築することから始めます。イメージボードを制作しながらトータルコーデまで考えて、最後のエッセンスとしてアクセサリーをデザインするんです。たとえば、19-20FWのテーマは「Rolling Wind」なのですが、これはビルの隙間から巻き上がる風をイメージしながら、風にも負けず都会で働く女性を応援するというメッセージが込められています。実は表には出していませんが、nezuのコレクションにはすべて「働く女性の背中を押したい」という隠しコンセプトが設定されているんです。

背中を押してくれたファッションのように、
女性の気持ちを強くできる作品を。

編:それはとても素敵な隠しコンセプトですね。「働く女性を応援したい」という想いはいつから抱かれていたのですか?
三島:会社勤めしていた頃、ファッション業界に身を置きながらも、自分自身がその日に身にまとうファッションに背中を押されてきた、という経験がたくさんあったんです。着るものが強い気持ちをくれるというか。また洋服に限らず、アクセサリーもその一端を担っているんじゃないかと。働く女性たちが「これを身につけていれば大丈夫!」と思えるようなアクセサリーを作っていきたいと考えています。
編:そうなんですね。表に出さないのがもったいないように感じましたが、それもきっとnezuならではの美意識なのですね。ちなみに、nezuブランドの顧客はどんな方が多いのですか?
三島:そうですね、いろんな方に手に取っていただいていますが、デザインやアートに関わる仕事をされている方が多いように感じます。
編:クリエイター同志の豊かな感性が共鳴しあうんでしょうね。それではここから三島さんの創作スタイルのバックボーンについて伺っていきたいのですが、幼少期はどのようにお過ごしだったのですか?
三島:父が掛け軸を販売する仕事をしていた関係で、家には絵画や掛け軸がたくさんありました。掛け軸を収納する桐箱の香りとか、日本画家の片岡球子のパキパキっとした絵画の色彩バランスなどをぼんやりと覚えています。3歳になる頃から母は女手ひとつで私を育ててくれたのですが、実は小学3年から中学卒業まで学校に通わなかったんです。そんな私に、母は「学校に通わない代わりに、毎日、ひとつものを作りなさい」と教えてくれました。

正解がわからないビジネスにおいて、
攻めの姿勢で10年続けていく覚悟。

編:ご理解のあるお母様だったのですね。
三島:そうですね。母は本音では私を学校に通わせたかったと思うのですが、私が幼少期からものづくりは好きだったので、お菓子を作ったり、図書館に通ったり、映画を観たりという独自の経験をさせてくれたんです。高校に進学する際に、お菓子を作るか、服飾を修めるかで迷ったのですが、当時の自分を外に連れ出してくれたのが洋服だったので、服飾の道へと進学していまに至ります。
編:そんなお母様の進歩的なご思想が、現在の三島さんのベースを形成されているのですね。なおお母様はどんなお仕事をされているのですか?
三島:毛皮の販売をしつつ、実家の「パッチン食品」の手伝いをしています。実家は岐阜県の日本三代稲荷として有名な商売繁盛の神様である「千代保稲荷神社」の参道に出店しているんですが、この神社が月末毎に24時間体制で夜市が開かれるという面白い神社で、お店も昼夜なく賑わうんですよ。なので毎年年始には私も寝ずに手伝いに行っています。
編:いまの三島さんのご活躍にはお母様もお喜びなのではないですか?
三島:2019年に金沢21世紀美術館のミュージアムショップでnezuを紹介いただいたのですが、そのときにはわざわざ観に行ってくれたそうです。
編:それは何よりでしたね。各地で注目が高まっているnezuブランドですが、今後のビジョンは?
三島:今後はアクセサリーに限らず、洋服までトータルに手掛けて行きたいです。ただ、ものづくりは好きなのですが、ビジネスの正解は未だにわかりません。アパレル業界は特に栄枯盛衰が激しいので、この先どうなるかわかりませんし、スタッフも抱えているので、福利厚生の面でも継続させていくためには年商を上げていくのが絶対条件です。

立ち止まるのも、進むのも、
その人の自由だから。

編:ご自身の創作における世界観も追求しつつ、会社としての規模感も大切にされたいのですね。
三島:はい、nezuのように小さなブランドでありながら、一緒に運営してくれているスタッフには日々感謝しかないんです。できるだけみんなで楽しんで長く働いていけるよう、たとえば年に一度はみんなでヨーロッパ旅行に行けたらいいなと思っています。あとは新作の制作にも取りかかるためにも、利潤の確保は絶対ですね。
編:ブランド立ち上げから5年目を迎えようとするいま、経営者としてどう売上を拡大していくかも、三島さんが取り組むべき課題なのですね。
三島:はい、攻めの姿勢を貫きながらも、ブランドとして10年を越すのが当面の目標です。
編:なるほど。作家として、経営者として、日々全国を駆け回っている三島さんですが、健康管理はどのようにされていますか?
三島:かつてはパーソナルジムに通うようにしていたのですが、出張続きで通えなくなってしまって(笑)そろそろ再開しないとな、とは考えています。
編:では、最後に三島さんが思う「自由」とは何でしょうか?
三島:進み続けることだけが自由なのではなく、立ち止まるという自由もあると思います。私自身、いまは経営者としては完全に自由ではないかもしれません。それでもいいと思っています。ものづくりは楽しいということを、みなさんにお伝えしたいです。

1日のタイムテーブル

  • 09:00起床
  • 10:00スタッフ出勤
  • 余裕があれば、仕事はじめにYouTubeのYOGAを10分
  • 業務内容の確認・段取り
  • メール
  • 職出し準備
  • 納品分の仕上げ
  • 制作
  • 14:00まかない昼食。コーヒーを入れつつ作業に戻る
  • 15:00ディスプレイのシミュレーション
  • 16:00制作
  • 18:00納品準備・職出し出荷
  • 19:00什器等の確認・準備
  • 20:00移動〜搬入
  • 23:00終了

気分を変えるためにいつも数本持ち歩いているカラーリップ

アトリエ作業での気分転換にはハンドドリップでコーヒーを淹れる

iPadとAppleペンシルはデザイン制作に欠かせない

ハーブ系のロールオンアロマはほのかに立ち上る香りがお気に入り

PROFILE

三島 友加里
(ミシマ ユカリ)

アクセサリーデザイナー/「nezu」主宰

1986年生まれ。アパレルメーカーのデザイナーを経て、2015年よりデザインレーベル「nezu」をスタート。要素と要素を掛け合わせてできる新しい”たのしさ”をデザインし、手触り感にこだわり生地から織り上げる独創的な作品は、アートやデザインに造詣の深い顧客層からの支持を集めている。百貨店・セレクトショップ等へ全国展開する傍ら、2019年には金沢21世紀美術館ミュージアムショップで紹介されるなど、アクセサリーを超えて「身に付けるアート」としての認知も着実に広げている。

nezu ブランドサイト

インタビューを終えて 〜FREEZINE編集長の編集後記〜

小っちゃくて不思議な雰囲気を持ってる、妖精みたいだな。

それが三島さんの第一印象だ。
お邪魔させて頂いた自宅兼アトリエはそんな三島さんを優しく包むように建てられている感じがした。

三島さんと話していて1番印象に残った言葉はこちら。
~私は少学3年生から中学まで学校に通わなかったんです。そんな私に母は
「学校に通わない代わりに、毎日、ひとつものを作りなさい」と教えてくれました~

、、、、素敵すぎるだろっ!!

作中で三島さんが教えてくれた、立ち止まる事も自由なんだよとの言葉。
自由と言うと前進!邁進!突き進め!!みたいに「進むこと」をイメージする事が多いと思う。
でも「立ち止まる」事も自由なんだよね。

読者の皆さんもどうか疲れたら無理することなく「立ち止まって」コーヒーでも飲みましょう。

nezuは「働く女性の背中を押したい」が隠しコンセプトの事。
ぜひ働く女性の皆さんにはnezuをチェックしてもらいたいです。
って事でnezuのアクセサリー、読者プレゼントで用意しました!
三島さんに選んでもらいましたよ!
働く女性でもよし、女性にプレゼントしたい野郎でもよし!

その辺の詳細はTwitterでするので今しばらくお待ちを。

最後に。
nezu男性ラインの発売も心待ちにしてます!


FREEZINE サシ