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2022.10.04

赤木葉子 インタビュー | お客様の本気に、本気で向き合うという覚悟。

取材・構成:清水 里華 撮影:miNami

相場価格の8割で、
120%の成果を出したい。

編集部(以下、編):日頃からFREEZINE運営メンバーも個人的にお世話になっている税理士の赤木先生ですが、「あおい税理士事務所」の代表税理士として、普段どのようなお客様と、どのようなお仕事をされているのですか?
赤木葉子(以下、赤):お客様は医療・介護・福祉関係から、製造業、IT、飲食店、地主、宗教法人など、多岐に渡ります。基本的には顧問契約の中で、記帳代行・給与計算・申告業務・年末調整・償却資産税申告・法定調書合計表作成といった通常業務から、日々の税務相談・決算対策・今後の提案まで総合的に行っています。顧問契約が中心ではありますが、フリーランスの方の年に一回の確定申告のお手伝いや相続税の申告業務もあり、最近ではコロナ禍で各種支援金等の申請業務が増えたため、全体の業務量も約2割程度増えてなかなかハードな状況です。でも、どの中小企業の経営者の方も必死に戦われていますので、自分ひとりで頑張れる分は許される時間はすべて使い、全力で対応させていただいています。

編:赤木先生のお仕事ぶりや心構えは、誤解を恐れず申し上げれば「男前」だなと感じ入ることが多く、なんて格好の良い税理士さんなのだろうと感服しております。仕事に向かわれるスタンスを伺えますか?
赤:そうですね、お客様にとって顧問料は継続的な費用ですから、費用も重要なファクターと考えているので、相場価格の8割で120%の成果を出したい、と常に考えています。とは言え、個人事務所ですので正直回らないと感じることもあります。ですが、どんなに多忙な状況にあっても「忙しそうだから」という理由から税務相談を遠慮されてしまうのは本末転倒ですので、いつでも気軽にご連絡いただけるようお客様にはなるべく忙しそうなそぶりを見せまいと気を張っていますね(笑)

編:まさに「士業」の名の通り、侍のようなスタンスで仕事に臨まれていらっしゃるのですね。ところで、元々所属されていた税理士法人を辞め、独立開業された理由を伺えますか?
赤:時代に逆行するようですが、いまこの時に最終的に一人税理士として独立開業を選んだのは、小さな個人事務所だからこそ身軽に変化に対応できることも十分にあるのではないか、いまこの時代でも身近に相談できる税理士としての本質は変わらないのではないかと感じていたからです。責任感を持って、どれだけ自分たちの会社のことを考えてくれるか、お客様は最終的にはそこしか望んでいないはずです。個人事務所ゆえに、多くのお客様を顧問できないかもしれませんが、お客様との信頼関係を大切に、長いお付き合いをさせていただけるよう覚悟を持って、お客様の本気に、本気で向き合いたいと考えています。

編:大手の事務所ではできないご提案もできると。
赤:そうですね、業務をマニュアル化していない分、お客様に合わせた対応へ変化がしやすいです。事業の種類や規模に関わらず、“もっとよくなる”ポイントは常に必ずあります。それを一緒に見つけながら、小さなリスクを一つひとつ取り除いていくためのお手伝いは、必ずできる。個人事務所ならではの身内感覚を大事にしたいんです。

手に職をつければ、
意にそぐわない環境下で働かずに済む。

編:お人柄を知るほどにファンが増えてしまいそうな赤木先生ですが、そもそも税理士を目指したきっかけを伺えますか?
赤:学生時代に祖父の死をきっかけに医師に憧れたこともありましたが、やがてさまざまな患者さんお一人おひとりの心理に寄り添える「臨床心理士」に就きたいと考えるようになり、臨床心理士の資格を取得できる大学院が併設された大学へ進学しました。しかし、授業を受けるにつれ、徐々に仕事としての重さを実感していきました。患者さんの状態を非常に冷静な立ち位置で分析するある教授のお話は、当時の私には冷徹に感じることすらあり、また、芸術療法の授業では、患者さんが描かれた様々な絵画の強烈な個性・世界観に引きずられるような感覚を体験するなど、自分自身の適性に不安を感じるようになり、将来の職業としての選択を諦めました。就職活動では、大学時代にアルバイトをしていたコンビニで時々本部からやって来るスーパーバイザーがとても格好良く見えたので(笑)コンビニチェーンに就職しました。しかし、人手不足で1日18時間労働もザラな状況で、どんなにがむしゃらに働いても一向に改善しないため転職を決意。ご紹介を通じて大手のシンクタンクの財務経理部へ入社しました。大企業でしたし、一流大学卒の社員も多かったのですが、無駄な残業をダラダラしたり、若手社員をいじめるお局社員がいたり、過呼吸で倒れた社員に声がけすらしないという社風に触れるにつけ「このままここにいたら腐ってしまう」という思いを募らせるようになりました。また、大きすぎる組織がゆえに、細分化された業務は退屈で、“お客様”を感じることもできず、モチベーションを見出すことも難しかったです。とは言え、次に転職すると3社目。「自分の手に職がない限り、意にそぐわない環境下で今後も働き続けなければいけない。それは余りに悔しい。」との思いから正社員の打診を辞退。手に職をつけられ、経験を積み重ねていける資格を取って生きていこう、と決意しました。

編:数ある資格の中で、なぜ税理士を選ばれたのですか?
赤:実は大学の時、簿記3級の資格取得をきっかけに会計事務所でアルバイトをした経験があったんです。場所が赤坂だったためかお客様にプロレスラーの方もいて、領収書を通して「プロレスラーって本当に焼肉たくさん食べるんだ!」という発見があったり(笑)お金を通してその方の事業を知ることができるのがとにかく楽しかったんです。事務所で働いている方々もみんな楽しそうでしたし、何より「赤木さんは税理士に向いてるよ」という嬉しい言葉をいただいたことも頭の片隅にあったので、税理士の資格取得に挑戦し、地元の税理士事務所へ就職しました。

編:その後、複数の事務所で経験を積まれたのですね。
赤:士業って、私が思うに板前さんと同じで、たとえ年収は低かろうとも下積みの期間にいかに勉強するかが大事なんです。「人の褌で経験を積める」とでも言いましょうか、事務所の先輩についていろんな顧問先の方々に会えるので、OJTの絶好のチャンスだと考えていました。時代もあったのでしょうが、労基法をはみだしてがむしゃらに働けたあの経験は、キャリアの基礎を形成したかけがえのない経験だったと考えています。その後、出産・離婚を経て復職し、4年前に独立しました。

お客様とタッグを組んで
一緒に問題を乗り越えられる喜び。

編:税理士とシングルマザーとの両立は、相当ハードだったのではないでしょうか。
赤:そうですね、この業界で正社員に就いているシングルマザーの方には残念ながら出逢ったことがありません。女手一つで食べていくのって本当に大変なのですが、娘には絶対に不自由な思いをさせたくなかったので、両親・ママ友・保育園や習い事の先生など、周りの方にもたくさん助けていただきました。できないことはできないし、甘えられることはちゃんと甘えることも大切だと学びました。

編:そんな赤木さんの事務所なら、税理士を目指すシングルマザーの方にとって絶好の職場になることでしょうね。
赤:そうですね、逆に言うと、こちらが100%本気ですので、税理士の仕事に情熱をもって向き合えない方とは一緒に仕事ができないと考えています。どんなに高学歴な方でも、家庭という狭い世界に閉じこもる内に顧問先の方が置かれる環境への想像力が働かず、現場感覚を失われてしまうのは大変残念だと感じます。

編:もったいないことですよね。ちなみに、税理士に向いているのってどんな方ですか?
赤:データ入力ひとつをとってもアンテナを張れる人と張れない人がはっきり分かれるんですよね。いかに“当事者意識”をもつことができるか、あとは常に向学心があり、勉強熱心で自分から知識をアップデートし成長できる人でしょうか。

編:法改正も多い中、赤木先生ご自身はご多忙のスケジュールをぬってどのようにスキルアップを図られているのでしょうか?
赤:専門誌を複数購読し、法改正の知識を常にアップデートしています。また実際に顧問先で1件でも該当するケースがあれば、その時に徹底的に勉強して習得するようにしています。

編:なるほど。ところでこれまでの税理士業務の中で、一番やりがいを感じた経験と、苦労された経験を伺えますか?
赤:お客様から「私でなければダメ」と言っていただけるような、替わりの効かない存在になりたいと常に考えています。ですので、自分の事業に本気で向き合っているお客様としっかりタッグを組めて、うまくマッチして問題を一緒に乗り越えられた時には、心からやりがいを感じますね。逆に言えば、本気でタッグを組めない社長さんと仕事するのは辛いです。自分の事業には、自分が一番真剣で必死でなければならないと思っています。だからこそ、税理士である私が、社長以上に社長の事業に必死になることはできません。社長自身が自身の事業に真剣に向きあえないまま、5年、10年と事業を続けたところで、借金が膨らむばかりで行き詰まってしまうという危険を感じた時には、思い切ってショッキングなこともお伝えするようにしています。決断するのは社長自身ですし、すべては社長の気持ち次第。それに、苦言を呈することができるのも、第3者である私の役目だと思っています。私にもともに何年も歩んできた責任の一端があるわけですし。そのように、自分の中に明確な判断軸をお持ちでない社長とご一緒するのは辛い体験となりますが、一方で、そこから殻を破り、どんどん変わっていかれる姿を見られるのも、税理士の醍醐味でもあります。

船長、浪曲師、元ヤンキー。
個性派の家族に囲まれてのびのびと育つ。

編:そもそも学生時代に医師や臨床心理士を目指されただけあって、経営者が抱える問題をお医者様のように治していく感覚に近いのかもしれないですね。ところで、ご家族に士業の方はいらっしゃるのですか?
赤:それが全然いなくて(笑)父は外国船の船長として海外を回っていて、家にいない期間はずっといないのですが、まとまった休暇は、バイクや車をいじり、ギターをひき、少年がそのまま大人になったようなタイプで、サラリーマンのイメージは全くなかったです。母は専業主婦だった時代もあったのですが、もともと名古屋甚句・小唄・三味線を嗜む人で、いまはプロの浪曲師として活動しています。父と母はキャンプが好きで、幼い私たち姉妹にはお構いなしにキャンプを楽しんでいて(笑)私は妹の面倒を見ながらも、そんな風に自由に楽しんでいる大人たちの様子を見ているのが好きでしたね。ちなみに妹はバリバリの元ヤンキーで(笑)輸入車ディーラーの営業職に就いたのですが、そのキャラクターを生かした接客スタイルがお客様から面白がられて、成績優秀賞を何度か獲ったりしていました。いまではその当時の同僚と結婚し、宮城で農業生産法人を経営しているのですが、持ち前の営業力を発揮して東北各地で業務範囲をバリバリ拡大しています。

編:それぞれのやりたいことできっちり成果を出す、なんともユニークで魅力的なご家族ですね。
赤:そうですね、親としてのこだわりを一切押し付けることなく、どんなに幼くても一人の独立した人間として扱い、意志を尊重してくれていた両親には本当に感謝しています。いま中2の娘にも自由に熱中できること、どんな分野でもいいので、専門性を身に着けていってほしいなと思っています。絵を描いたり模型を組み立てたりするのが好きなようで、クリエイティブなお仕事に興味があるようです。

編:それは将来が楽しみですね。赤木先生ご自身は学生時代に何に熱中されましたか?
赤:文章を書くのが好きでした。あとは中学で剣道を始めて高校で剣道2段、そして大人になってから3段を取得しました。

編:それもまたすごいです。他に登山やドライブなど、ご両親ゆずりのアクティブな趣味をお持ちの赤木先生ですが、日頃のリフレッシュ法や休日の過ごし方を伺えますか?
赤:独立してからこれまでの4年間、コロナ対応も重なり、ずっとがむしゃらに働いてきたので、ほとんど休日も取れなかったんです。いまはようやく、確定申告業務も3月決算法人の申告も、コロナの支援金対応ももひと段落しましたし、昔はまっていたホットヨガにも定期的に通うなどして、心身の健康も大事にしていきたいです。そして、娘と一緒に登山も復活したいです。

自分が信じる正義を貫き、
いいと思うことしかしない、という自由。

編:ところで、赤木さんが思う「自由」とは?
赤:そうですね、私個人の話をすれば、いまがいちばん自由だと感じています。自分が信じる正義を守り抜き、自分がいいと思うことしかしないという働き方は、組織にいたらできないことだと思うんです。勤めていた時は、“今この顧問先へこの支援をしたい”と思っても、自分の一存ではできないこともありましたし、自分の意にそぐわない形で担当が変わって関与できなくなってしまうこともありました。今回のコロナ関連の支援金についても、私は顧問先が元気で初めて自分の仕事があると思っていますから、無償サポートを行いましたが、事務所によっては、引き受けない方針の事務所もあったかと思います。勤務先がそのような事務所だった場合には、当然私もサポートができなかったかと思うと、本当に独立してよかったと思いました。自分が経営のリスクを持つことで、自分が思うようなサポートを存分にすることができる、そんなすべての決定権が自分にある状態は理想的だと考えています。

編:一筋縄には手に入らない自由ですね。素晴らしい働き方だと憧れてしまいます。では最後に、FREEZINEの読者層である「自由に作る人、自由を作る人」へのメッセージをいただけますか?
赤:独立して活躍しているフリーランスのみなさんを見ていると、勤めていた時代にある程度の「蓄え」をされている方が多いように感じます。いくら有名な方であろうと買い叩かれることもありますし、収入も不安定なのが実情ですが、貯金がある程度あれば耐性が保てますから。そして、何よりも勤めていた時代に構築したコアな人脈をしっかり持っている人が多いと感じます。独立する前に、感覚の合っている人とつながっておけば、会社が変わろうとも信頼関係ってつながっていくものじゃないですか。逆に、そういった蓄えがまるっきりゼロの状態でフリーランスの世界に飛び込むのは非常にリスキーです。あとは、若い頃にがむしゃらに働くという経験をぜひ積んでおいてほしいですね。いまはすぐに「ブラック」と言われ叩かれる風潮がありますが、それでは貴重な経験を積むチャンスも削がれてしまいます。経験を積むという腹決めをし、そういう環境に積極的に身をおいてどんどん吸収し、経験を蓄積してほしいですね。

編:まさに赤木先生がこれまで身を持って学ばれてきたことですね。大変貴重なお話をありがとうございました。
赤:ありがとうございました。

1日のタイムテーブル

  • 6:00起床・お弁当作り
  • 8:00出社
  • 9:00顧問先訪問 2~3社
  • 16:00事務所に戻り社内業務
  • 21:00帰社 家族との団らん・残務業務
  • 1:00就寝

【電卓】2代目、3代目の電卓。武士で言えば「刀」!ちなみにCASIO派です。

【パソコン・スマホ】電卓を合わせて税理士3種の神器。基本的にこれがあれば、仕事はできます。

【インコ】顧問先の社長がくださった、わが事務所のアイドル“あづき&だいず”。難しい案件でしかめ面の時にも、ふっと笑顔にしてくれます。

【花・絵画】常に多種多様の案件を抱えている分、頭の中の切り替え リセットが必要で癒やしグッズはかかせません。心を落ち着かせ、前向きにしてくれる、原色系の絵画、時節を感じられるお花たち。

PROFILE

赤木 葉子
(アカギ ヨウコ)

あおい税理士事務所 代表
税理士

新卒でコンビニの店舗運営部に入社するも、ハードワークに将来を悩み転職。シンクタンクの財務経理部に入るも、単純作業に心が折れ退職。資格で生きることを思い立ち、経験を蓄積できて様々な方とお付き合いのできる税理士に魅力を感じて会計事務所に就職。多種多様なお金に関する考え方に対応した顧問先様の“心地よさ”を重視した節税提案をモットーとしています。

あおい税理士事務所 公式サイト

インタビューを終えて 〜FREEZINE編集長の編集後記〜

編集後記

自分を含め周りの友人も何人もお世話になっている赤木さん。
経験がある人も多いと思うが、税理士ってまじピンキリでいい人と出会う可能性はまじで運。
ボクも何人もババを引いてきたが、赤木さんに出会えてもうずっとお世話になっている。

もともとは大手税理士事務所にいたのだが独立された事もあって今回オファーしました。


赤木さんは税理士だけではなく社会人としての経験もあるから話がずれないんですよ。
またありがちな頭デッカチな人でもないからなんでもフランクに相談に乗ってくれる。
プライペートの人生経験豊富なんでそこもばっちり!笑 酒も強い!

と長年お付き合いしてますが褒めるところしかないんです。
確定申告が手に余るようになってきた人や税理士探している人はFREEZINE見ましたって連絡してみてください。


ほんとはあまり人に紹介したくないのだけど。。
出血大サービス!!