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2018.12.12

癒し系税理士アカギのもう怖くない!税金のちょっといい話 第14回/知っているようで知らない医療費控除

医療費控除について、意外と知られていない項目に絞ってご紹介します。

通院費

医療費控除で、実際にはかかっているのに、計上がもれている代表格に、通院費があります。
通院費として医療費控除の対象となるのは、電車賃・バス賃などのような人的役務の提供の対価として支払われるもので、通院のために通常必要と考えられるものです。
この基本的考え方を軸に、次の場合を考えてみましょう。

・タクシー代
・自家用車で通院した場合のガソリン代、高速代、駐車場代
・付き添いの人の交通費

タクシーについて、「通常」の手段として法律は考えていないため、一般的には医療費控除の対象とはなりません。電車やバスで行けるにもかかわらず、特段の事情もなくタクシーを利用するのは贅沢の範疇と考えられているんですね。電車もバスもないような場所に自宅がある、骨折や陣痛など病状から電車・バスが利用できない場合など、やむを得ない場合に限って、対象となります。
また、自家用車での自己の通院や家族の送迎については、それにかかるガソリン代等の実費も、医療費控除の対象とはなりません。医療費控除の対象となるのは、電車賃・バス賃などのように人のサービスに対価を支払う場合であり、自力で行った場合にまでは考慮されないということになります。
ただ、例えば小さいお子さんや高齢者など一人での通院が困難な場合などに、家族が一緒に付き添った場合の、家族分の電車賃・バス賃は対象とされています。

よくいう「10万」とは?

医療費控除は10万円超えていないとだめですよね?よく受けるご質問です。
医療費控除は、簡単にいうと、所得の5%を超えるような医療費の支出をした場合に、その超える部分の金額(200万円が上限)を税金計算上考慮してくれるというもの。その5%部分が10万を超える場合、すなわち所得が200万円を超える場合には、10万円とされていますので、10万円を超えて切り捨てられることはありません。これが足切限度額の考え方です。
給与収入だけの人で考えてみると、所得が200万以下となるのは、収入が311万~312万以下の場合ですので、その収入以下である場合には、10万以下の支出でも、医療費控除の対象となることになります。

※ ここでは取り上げていませんが、平成29年より医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制も創設されています。ドラッグストアなどで購入した一般の市販薬などが対象で、その支出が1万2千円を超えるとき、その超える部分の金額(8万8千円まで)について所得控除を受けられる制度で、予防接種、健康診断などの健康増進などの一定の取り込みが要件となっています。

足切限度額をうまく使おう~家族内での視点

同一生計の親族の医療費を支払った場合には、例えば、奥さんの医療費を夫が支払った場合には、夫で医療費控除ができます。
仮に、夫と妻がそれぞれ自分の医療費を15万ずつ支出していたとします。
夫 15万 - 足切限度額10万 = 5万
妻 15万 - 足切限度額10万 = 5万 
夫婦それぞれが、10万の足切りをされているので、医療費控除の対象となるのは
(夫分 15万 + 妻分 15万)- 足切限度額10万×2 = 10万 となります。


これを夫で全額申告した場合には
夫 30万 – 足切限度額10万 = 20万
となり、10万の足切りが一度で済んでいます。
同一生計内であれば、一番所得の高い人が医療費を負担して、申告するのが一番お得です。

足切限度額をうまく使おう~支払時期での視点

例えば、歯の治療費などで、総支払額30万のものについて、H30年12月に15万、H31年1月に15万の支払いを行ったとします。
H30年 15万 – 足切限度額10万 = 5万
H31年 15万 – 足切限度額10万 = 5万
所得税は、1月1日から12月31日を一年としてそれぞれ計算するので、足切りも年ごとになされてしまいます。
仮に、ちょっと無理してでもH30年12月に全額30万支払っていた場合には、
H30年 30万 - 足切限度額10万 = 20万
の医療費控除を受けられることになります。

ちょっとした、いつ払うか、だれが払うかということだけで、控除額が大きく変わってきます。
今年は出産があるから医療費が絶対に10万を超えるな~といった場合、長年治療をしないでほっておいた虫歯の治療に同じ年内にかかってみるのはいかがでしょうか。

領収書をなくしてしまっても・・・

これまで医療費の領収書を提示又は提出していましたが、平成29年分の申告から、
「医療費控除の明細書」を添付することで、領収書の提出が省略できることとなりました。
提出しなかった領収書は、ご自宅で5年間保管が必要です。
また、健康保険組合等から発行される「医療費のお知らせ」を添付すると、明細の記入・領収書の保管も不要となります。
これまで、医療費の領収書捨ててしまった、再発行もしてもらえない、といったような場合でも、「医療費のお知らせ」をもとに、医療費控除が受けられることになります。

PROFILE

あおい税理士事務所 税理士
赤木葉子

新卒でコンビニの店舗運営部に入社するも、ハードワークに将来を悩み転職。シンクタンクの財務経理部に入るも、単純作業に心が折れ退職。資格で生きることを思い立ち、経験を蓄積できて様々な方とお付き合いのできる税理士に魅力を感じて会計事務所に就職。
顧問先様の“心地よさ”を重視した節税提案をモットーとしています。隠れ目標は、大事なものを大切にしながら働くことを諦めない業界にすること!
趣味は登山(次注目する山は甲斐駒ヶ岳)、剣道(四段に向けて修行中!)、運転(気になる車はプジョー3008)です。