COLUMN
2022.08.23
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2022.08.23
「好きなことで生きていく」、巷ではよく聞く言葉だけれど、
本当に好きなこと“だけ”で、フリーランスとして生きてくためには具体的にどうしていくべきなのか?
どんな心構えが、どんな機会が、どんなスキルが必要なのか?
好きなことで食っていきたいすべての人たちに向けた、全5回の連載です。
はじめまして、ミツビシテツロウと申します。
作曲家、マニピュレーター、レコーディングエンジニア等々、ざっくり言ってしまえば音楽で生計を立てている33歳です。
この連載は、「好きなこと」で食っている(食えるようになった)僕が、これから好きなことで食っていきたいすべての人たちに向けて、好きなことで生きていくための具体的な手引きを記したものです。
僕が通った道は「音楽」で食っていく道なので、いかんせん具体例は音楽に偏りますが、話の全体はあくまで「好きなこと」で食っていく一般論に寄せられればと思っています。
なので、音楽で食うための本当に具体的な話は書かれていません。そこが知りたいんだ!ってパッションをお持ちの方は僕のTwitter(ページ最後にリンク貼ってます)にでもDMをください。業務に差し支えない限りで答えます。
さて、今回はそもそもこれから書いていく手引きの大前提になることを書いた上で、今回と次回の前後編をかけて、「好きなことで生きていく」大きな流れを解説していきます。
まず大前提を先に話しておきますが、この連載で解説する内容は、「正面対決」をしたくない人に向けて書かれてあります。
「正面対決」とは何か。
それは平たく言ってしまえば、「まっとうに練習を重ねたり、自分の才能に向き合い続けたりする」あり方のことです。
音楽で言えば、まっとうに楽器の練習をしたり、自分の作曲の才能を高めることだけにまっしぐらになるというあり方ですね。
僕はそういう道は通りませんでした。
理由は単純で、「嫌いなことをしたくなかったから」です。
僕はとにかく練習というものが嫌いな人間です。音楽を志すなら普通であれば何らかの楽器の練習をすることは避けては通れないのですが、僕はとにかく楽器の練習が嫌だった。だから、練習をしなくていい道を通ることにしました。
言い換えればこの手引きは、「本当に」好きなことだけで生きていきたい、つまり嫌いなことはせずに好きなことだけしたい人のための手引きです。
人によってはこんなあり方は邪道だと思うかもしれません。
「好きなことをやるためにはそこに伴って起こる嫌いなことも我慢してやらなければならない」、そんな考え方もあるでしょう。
むしろ正直に申し上げるならば、「正面対決」の方が楽ではあります。
楽というのは、工数の問題です。「正面対決」は、やることがはっきりしている分、工数が少ないです。一方でこれから紹介するやり方は、ある種の周り道と言えなくもないので、工数はその分かさんでしまいます。
しかし、工数がかさんで多少面倒だとしても、それでも嫌なことはやりたくない、そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような、とことん嫌いを避けて好きだけでやっていきたい人のために、この文章はあります。
好きなことのためなら嫌な努力も何だってできる、そんな方はむしろぜひ「正面対決」でがんばってください。僕にはできなかったので、単純に尊敬します。
やっとここから本題に入っていきます。
今回は、好きなことで生きていくための大きな流れの前半を紹介します。
あまりに当たり前のように思えるステップですが、ここが最初に大事な点です。
「好き」だけで生きたいなら、「好き」は多い方がいいに決まっていますね。そういう意味で、たくさん遊ぶのは大事です。「好き」「楽しい」は触れてみて、体験してこそ生まれます。音楽でもスポーツでもゲームでも、まずはジャンルを問わず「好き」を増やしましょう。
一方で、「嫌い」を避けて「好き」だけで生きるためには、好きと嫌いを自分の中で明確に理解しておく必要があります。音楽が好きだと思ったなら、音楽の中でも好きなこと・嫌いなことを見極めていきましょう。
僕はもちろん音楽が好きですが、先にも触れた通り楽器の練習は嫌いですし、歌が下手なのでカラオケも好きではないです(バンドでボーカルはしているんですがね……)。別の分野であれば、文章を書くのは好きだけれど、商業的なWEB記事のような文章を書くのは嫌いだと語っていた友人もいました。
ざっくりした「好き」であると、うっかり「嫌い」を踏み抜いてしまう可能性が高まるので、ここは軽んじずにしっかり時間をかけて向き合うべきだと思います。
次のステップとして、ジャンルを定め、そのジャンルでの稼ぎ方を調べたり考えたりします。
音楽が好きだとして、音楽で食うための方法はたくさんあります。バンドマンとしてメジャーデビューする、作曲家になる、演奏家になる、PAになる、音楽教室の先生になったり、楽器屋さんで働くことも含まれるでしょう。
「音楽 仕事」という単純なワード検索でも、けっこうな記事が出てきます。聞いたことのないような仕事が出てくる場合もあると思うので、可能な限り網羅的に調べましょう。
先のステップで調べた方法を、競合の数の多さで分類してみましょう。
これはもちろん競合数を具体的に調べられるならそれに越したことはありませんが、そうでないならば印象論でもかまいません。単純に考えれば、その分野の仕事について詳しいわけではない自分でも思いついたものなら競合は多いでしょうし、調べて初めて知ったようなものならニッチな可能性は高いです。
音楽なら、バンドマンとしてメジャーデビューするのはかなり競合が多そうです。一方で、BGMを作っているような人はメジャーデビューを目指す人に比べるとかなり少なそうでした。なので僕はそこから始めることにしました。
この部分がこの手引きの肝と言ってもいいです。先のステップで競合が少なそうだと判断した分野において必要になるスキルを、レベル10をMAXとした場合のレベル6くらいに上げましょう。
レベル6がどの程度かと言うと、素人にはできないけれど10年の鍛錬が必要なものでもない、具体的には3ヶ月で習得できるようなレベルです。むしろ逆説的に言えば、3ヶ月である程度習得できるくらいのスキルを選んだ方がいいです。
たとえばギターの演奏は(もちろん3ヶ月みっちり死ぬ気でやれば話は別かもしれない)、3ヶ月で習得するのはちょっと厳しいかもしれませんが、短いBGMの作曲ならおそらくできます。いや、正直に言うと作曲も難しいんですが、すごく好きなら可能です。「すごく好き」とは具体的に言うと、1日の中で仕事や学校などの時間以外のすべてをそれに費やせる程度の「好き」です。その時間が1日12時間あるなら3ヶ月でレベル6になれます。もちろんそれは自分の時間と期間との兼ね合いではあるので、1日6時間の半年でレベル6を目指すことも可能です。
別の言い方で言うと、これは本当に嫌な言い方にはなりますが、3ヶ月でレベル6というのは、素人なら騙せるというレベルです。レベル10は世に流通しているもの、音楽で言えばテレビCMで流れているようなものですが、音楽に詳しい人であればレベル8とレベル10の差もよくわかります。ですが音楽にさほど詳しくなければ、レベル6でも重宝してもらうことは可能です。
自分が今レベル何なのかの判断はもちろん難しいとは思いますが、3ヶ月前の自分はからっきし素人だったわけですから、3ヶ月前の自分ならすごいと思うな、と思えればOKです。
さて、ここまでの前半でやっと仕事を受けるまでの土台が出来上がりました。
実際に仕事を受け始める後半のステップは、次回の後編記事でまとめたいと思います。
ちなみに今後のステップは、
5.仕事を必要としている人を探し、アプローチし、タダないし低価格で仕事を受ける
6.枝葉のスキルを増やしていく
7.仕事をグレードアップしていき、友達を増やす
になります。
この記事を読んでちょっとでも役に立ちそうだなと思ってくれた方は、ぜひ後編の方も読んでください!
aka Souichiro Igari
福島県双葉郡大熊町出身、東京都板橋区在住。
音楽制作チーム wave technique主宰
大学在学中に音楽制作を始め、広告音楽フィールドでの活動を開始する。
電子音楽を主軸にTVCM、WEB広告のBGM制作、サウンドロゴ制作を行う。
マニピュレーターとしてカタカナ mizuirono_inu 等のバンドで活動を行い、Persians,GEEKS,悲撃のヒロイン症候群等のアーティストサポートも行う。
2014年東京芸術劇場にて自作タッチパネルを用いた8chサラウンドインスタレーション作品Pythagorasを展示。尚美学園大学より音響賞を受賞。