COLUMN

2019.01.08

「よく描き、たまに書く」by kubo 第3回/「私という商品」のコンセプト

こんにちは、凹(kubo)です。
フリーランスのイラストレーターです。

実感のまったくわかないままに、このコラムも第3回となりました。
思うことをつらつらと書いているだけですが、少しでも皆様のお役に立っていたらいいな…と思います。
今回のお話は、クリエイティブ系の方ならきっと誰しも悩んだことがあるのではないでしょうか。

「なんでもできます」と「これだけは負けません」はどちらが強い?

私は普段、仄暗く静かなイメージの絵をよく描きますが、依頼を受ければ「ポップ」「素朴」など、さまざまなテイストのイラストを制作します。
また、グラフィック&ウェブデザイナーも兼任しているため、時には一日中Adobe Illustlatorでベクターデータをいじっていたり、htmlやjavascript、PHPといったウェブ開発用言語の文字列と睨めっこしている時もあります。

どのお仕事も本当に好きで、楽しんで取り組んでいます。
でも、たまにふと「これでいいのかな…?」と思うことがあるのです。

例えば、おいしいイタリアンが食べたくなったとします。
目の前には、「イタリアン、和食、中華、エスニックなど何でも作れますよ」というレストランと、「本場イタリアで修行したシェフのパスタとピッツァをお出しします」というレストラン。
同じ場所に並んで店を構えていて、価格帯も似ていたら、入るのはどちらでしょうか。
後者を選ぶ方が多いのではないでしょうか?

「なんでも作れる」というのは、練習や勉強の時間をそれらに分散して割いた、ということです。
それよりも、イタリアンに集中して腕を磨いたシェフの方が、おいしいパスタとピッツァを作ってくれそうです。

ここで思うのは、「私は前者になっていないだろうか」ということ。

クライアントからすれば「フリーランス」はよりどりみどり

私は昔から「器用貧乏」と呼ばれるタイプでした。
何をやっても、まあまあそつなくこなす。
でも、ずば抜けて得意なものは何もない。
今の私の「どんな絵でも描くしデザインもやります。ウェブ制作もできますよ」というスタンスは、まさにこの「器用貧乏」の延長にあるような気がします。

私のような作り手は、会社のような形態では重宝されるかもしれません。
ひとり分のお給料しか発生しないまま、その時の需要に応じてさまざまなものを作ってもらえるのですから。
他の人を雇う手間もかかりませんしね。

でも、これが「フリーランス」になったらどうでしょう?
クライアントからすれば、「フリーランスに依頼する」と決めた時点で、選択肢は世界中無限大に散らばっています。
そんな中、わざわざ「なんでもそこそこなクオリティで仕上げる人」に頼むでしょうか?
私ならきっと、「このテイストの絵ならだれにも負けない、一点集中型のすごい人」に頼むと思います。

もちろん、価格にもよると思います。
「一点集中型のすごい描き手」はきっとお値段も高くつくでしょう。
予算があまりない時は「なんでもそこそこなクオリティで仕上げる人」にあたるかもしれません。
この感覚がもし一般的なものだとしたら、「なんでもそこそこなクオリティで仕上げる人」には、そういう価格帯のお仕事しか来ないのかもしれませんね。

まさに「器用貧乏」です。

「器用貧乏型」にもチャンスはあるか

ここまでこき下ろしてきましたが、「器用貧乏タイプ」にもメリットはあると思っています。
フリーランスは実力も大事ですが「人同士の信頼関係」も非常に重要だと感じているからです。

企業や個人がフリーランスに仕事を発注する時、全く知らない人よりは、一度でも仕事をしたことのある知り合いに頼む可能性が高いでしょう。
器用貧乏…「マルチタイプ」と言い換えましょうか。
マルチタイプの人は、いろんなことができるため、未来の顧客とつながりを持つための間口が広いのが強みだと思います。

「そういえばこないだデザインを頼んだあの人、イラストも描けるって言ってたな…」と、思い出してもらえるチャンスがあります。
ひとつひとつの粒は小さめでも、たくさんの案件に携われるのがこのタイプなのかもしれません。

「時間」を支払って「スキル」を買う

「お金を払って物を買う」というのはとても一般的な行為ですね。
ところで私は「時間」と「スキル」が同じ関係にあたると思っています。
私たちは、練習や勉強や実践に時間を割いて、それを通してスキルを得ていきますね。

「お金」は、はじめから持つもの持たざるものがいたり、投資運用などで増えたり減ったりと複雑ですが、「時間」はとてもシンプルです。

1日は24時間しかありません。
1週間は7日しかありません。
1年は365日しかありません。

みんな平等に与えられ、途中で増えることも減ることもありません。
だからこそ、「時間を何に使うか」がその人の個性になっていく。

一点集中型の「すごい作り手」になるか。
何をするにもまず名前のあがる「マルチタイプ」になるか。

ところで私は今「このコラムを書き上げた後、絵を描くか、ウェブ開発の勉強をするか」…迷っています。

PROFILE

凹(kubo)

よく描き、たまに書くイラストレーター。
仄暗くて寂しげなタッチの絵が得意ですが、本人はとても能天気です。
絵を描くお仕事があればぜひご連絡ください。

◆Mail
kubo.ekaki★gmail.com(★→@)