COLUMN

2020.05.12

「よく描き、たまに書く」by kubo 第19回/三つ子の魂

こんにちは、凹(kubo)です。
フリーランスのイラストレーターです。

この記事を執筆中の4月某日。世界は未曽有の混乱のさなかにあります。

今の時代は見えるものが多く、その分「目は届くけど手は届かない」ものが増えました。
その結果、無力感で気を病んでしまう人が多い。
わたしもそういった傾向を持つひとりです。

「どうせ自分にできることはない」と感覚器官にフタをしてしまうのではなく、漠然とした焦りに突き動かされて軽率に行動してしまうのでもなく。
自分にできる事を冷静に見極めて、粛々と過ごしていきたいです。

というわけで、世界の動きも気になりますが、私はあいかわらず、等身大のコラムをお届けしたいと思います。

ツールを新調しました

以前の記事で、絵を描くのに使用している道具のお話をしました。
その時に「今は13インチの液晶ペンタブレットを使用しているが、いつか24インチの大画面が欲しい…」と書いたのですが。

実は、去年の暮れに、とうとう奮発して購入しちゃいました。

大きいです。絵描き以外の仕事(コラム執筆など)は右のモニタで作業しているのですが、視界の左に映り込む大画面の圧迫感がすごい。
個人的に一世一代の大奮発となった今回の買い物。
せっかくですから、いい絵をたくさん生み出したいですね…。

ところで、写真撮影のためにこの向きにしましたが、実は普段はこうやって使っています。

かなり変わった使い方だと思います。
ネットなど見ていても同じ人はほとんど見かけません。

私も最初は横向き画面でスタンダードに使っていたのですが、ふと思い立ってこの向きで試してみたところ、今までに比べ驚くほど筆が走るようになったのです。

若かりし頃のお絵描きスタイル

この描き方を試してみた経緯は、自分の昔からの「絵を描く時のスタイル」にあります。

さかのぼること二十余年。
一番古い私のお絵描きスタイルは以下のような感じでした。

「おえかきせんせい」って、わかりますでしょうか?
白いボードの中に砂鉄がたくさん仕込んである、今でも現役発売中のおもちゃです。磁石のペンを使って砂鉄の位置を誘導することで絵が描けます。
それの、もう少し大きくて細かい描きこみができる類似品を、幼少期はこんな姿勢でずっと愛用していました。

ちなみにもう少し時が進んで、学校で勉強するようになると、私のお絵描きは磁気ボードから紙に移っていきました。

家で勉強するときは、母がとっておいてくれていたチラシの裏をよく活用していましたが、そこにも絵ばっかり描いていました。思い返しても、あまり勉強しない子供でしたね…。

とるに足らない走り描きばかりでしたが、とにかく描いては捨て、描いては捨て、量産しまくっていました。
「描く行為」自体が目的だったので保存しておくという発想がなく、ほとんど残っていないのが今となっては少し残念です。
まあ、あったらあったで、恥ずかしくて見られたもんじゃないでしょうけれど…。

私の筆がもっとも走るフィールドは「A4縦」

ここまでを反芻して気づいたのが、私のお絵描きはつねに「A4縦」とともにあった、ということです。
ノートもA4、チラシも大半がA4。最初に買い与えてもらった磁気ボードのおもちゃも、思い返せばA4くらいのサイズでした。

そして24インチの液タブを縦向きにすると、もろもろのツールパレットも出した状態で、「A4縦」サイズのカンバスがすっぽり入るのです。
(横向き画面だと上下が微妙にあふれてしまう)

これは大発見で、24インチの液タブが「最高に有意義な買い物だった」と自信を持てた瞬間でした。
デジタル絵は、ズーム機能を活用すれば小さな画面でもこと足りてしまう側面があるので、「そんな大画面、必ずしも必要じゃないのでは…?」という意識がそれまであったのですが。
自分の目の前に実寸のA4が現れることでこんなにも描きやすくなるとは、嬉しい大誤算でした。

ちなみに、「A4縦」が必要になるのは構図などアイデア出しの段階のみで、その後の細部描きこみは絵によって最適なカンバスサイズでやっています。
なので最終的にはどんなサイズ感・縦横比の絵でも大丈夫。描けますよ(営業)。

長い間制作活動を続けているけどなんだか最近鈍化している…と思うかた。「かつての制作環境の再現」、おすすめです。
できる範囲で、ぜひやってみてください。

おまけ

いつぞやのノートに残っていた落書きです。うわあ、若い…。
当時ハマッていたビデオゲーム「ICO」の影響をかなりうけていますね。
大元はPlayStation2のゲームですが、PS3(リマスター版)やPS4(PlayStationNow)でも遊べるので、よかったらチェックしてみてください。傑作です。

PROFILE

凹(kubo)

よく描き、たまに書くイラストレーター。
仄暗くて寂しげなタッチの絵が得意ですが、本人はとても能天気です。
絵を描くお仕事があればぜひご連絡ください。

◆Mail
kubo.ekaki★gmail.com(★→@)

◆Pixiv (当コラム掲載イラストを原寸サイズでアップしています)