COLUMN

2020.07.14

「よく描き、たまに書く」by kubo 第22回/インディーゲームの魅力

こんにちは、凹(kubo)です。
フリーランスのイラストレーターです。

今日は、私の好きなものについて少し語らせてください。

物心ついた時からゲームがだいすき

以前から何度か話題にしていますが、私はビデオゲームが大好きです。
幼少期のいちばん古い記憶は、父がファミコンでプレイする「スーパーマリオブラザーズ」を横で見ていたこと。
それ以降、激動のゲームの進化を肌で感じながら育ってきました。

最近は、仕事用にスペックを積んだのをいいことに、おもにパソコンで遊んでいます。
SteamというPCダウンロードゲーム専用プラットフォームが存在していて、最近はコンシューマーゲーム機と合わせてSteam版も展開するタイトルが増えました。いい時代です。

アクションからロールプレイング、パズルまで幅広いジャンルを遊びますが、近年特に気に入っているジャンルがあります。

少数精鋭で作られた「インディーゲーム」

インディーゲーム(インディーズゲーム)。

定義はあいまいですが、個人~少人数で開発されたゲームを指します。
大規模チームで作った「AAAタイトル」には劣る部分もありますが、それを補ってあまりある魅力があります。

①価格が安い
インディーゲームの相場はだいたい1,000円前後。高くても3,000円台で、安いと100円以下なんてものもあります。
AAAタイトルが安くても5,000円台~高いと10,000円弱くらいするのと比べると、かなり気軽に手を出せます。
比例してプレイ時間も短めなモノが多いので、失敗しても(たのしめなくても)「まあいいか」と割り切れる。

②世界観が美しくまとまっている
ゲームに限らず言えることだと思っていますが、少人数で制作された作品は、世界観に統一感があり、なんというか「雑味がない」のが魅力だと思います。
たくさんの人がセンスとアイデアを持ち寄った大作に圧倒されるのも大好きですが、それとは別腹で、私はこの「小さく綺麗にまとまった世界観」が本当に好きなのです。

③斬新なコンセプトのタイトルが多い
人員と時間をたっぷりつぎ込んで作った大作ゲームは、その開発費用を回収するため、必然的に「なるべく多くの人に受け入れられる」ストーリーやシステムを求められます。
しかしインディーゲームにはその枷(かせ)がない。特定の人に深く刺さればそれでいいのです。
結果、「王道のAAAタイトル、実験的なインディータイトル」という対比が生まれます。
カジュアルゲーマーをターゲットしたタイトルも多いインディー界ですが、個人的にはゲーム慣れしたプレイヤーほど新鮮さにワクワクできると思っています。

kuboのおすすめインディーゲーム

最近プレイした中で特におもしろかったタイトルをいくつか紹介させてください。

●Return of the Obra Dinn
Steam版
Nintendo Switch版
Playstation 4版

時は19世紀。5年前に海上で消息不明となった巨大商船「オブラ・ディン号」が、突如としてロンドンの母港に姿を現した。
60人いたはずの乗船者は消え、甲板に数人分の白骨遺体が転がるのみ。
保険調査員である主人公は、謎の依頼人から託された不思議な時計を手に「この船で何が起きたのか」調査に乗り出す…というストーリー。

不思議な時計「メメント・モーテム」は、死体にかざすと彼もしくは彼女の「死の瞬間」を再生できます。
凄惨な一瞬で時の止まった世界をくまなく歩きまわり、乗船者60人すべての身元・死因を特定するのがゲームの目的。
本人の死亡シーンだけで身元がわかるケースは稀。基本はたくさんの死亡シーンを渡り歩いて、手がかりの断片を組み合わせて推理します。
中には消去法でやっと特定できるような難易度の高い人物も。考えるのが好きな人におすすめしたいタイトルです。

●Baba Is You
Steam版
Nintendo Switch版

フィンランドの学生が開発した、可愛らしいグラフィックのパズルゲーム。受賞歴あり。
基本ルールはシンプルで、「You(あなた=プレイヤー)」が「Win(勝ち=ゴール)」のオブジェクトにたどり着けばクリアです。
…が、ここからがクセもの。「Baba is You(ババがあなた)」「Flag is Win(旗がゴール)」といった「ルールを示す文章」が各ステージに設置してあるのですが…なんとこの「ルールテキスト」もオブジェクトのひとつで、組み替えることでルールを書き換えることができます。
頭のやわらかさが要求される、見た目にそぐわぬ超高難度パズルです。プログラマーの人なら得意かも?

●Hollow Knight
Steam版
Nintendo Switch版
Playstation 4版

こちらもかわいらしい見た目にそぐわぬ歯応えたっぷりのタイトル。
ベースはオーソドックスな2Dアクションゲームですが、暗く荒廃したマップ、雑魚でも囲まれたら死を覚悟する戦闘難易度、いやらしい配置のトラップなど、玄人向けのゲームデザインです。
高難易度で有名な大手タイトル「ダークソウル」シリーズを意識しているようで、システムもストーリーも似た部分が多少あります。多くを語らず、各所に散らばるオブジェクトからふんわり考察させる感じもそれっぽい。
というわけで、そういった部分がハマる方には最高の作品となるでしょう。(たとえば私のような!)
インディーらしい価格帯ながら、ボリュームがたっぷりあるのも嬉しいところ。縦にも横にも広大なマップにいくつものエリアとボスが配置されていて、かなり長く遊べます。

●GRIS
Steam版
Nintendo Switch版
Playstation 4版
iOS版

いわゆる「雰囲気ゲーム」といわれるタイトルです。
こちらもベースは2Dアクションで、システムに特段変わったところはありませんが、特筆すべきはその世界観。
淡い水彩で描かれるステージと、ピアノベースの儚い音楽が生み出す、寂寥感のある世界。その中を主人公の少女を操って進んでいきます。
難易度はわりとカジュアル。ゲームオーバーはなく、エンディングを見るだけならシビアなプレイングは要求されません。
トレイラーを見て雰囲気に惹かれたなら、それが答えです。ちなみに私はサントラも含めて購入しました。

●風の旅ビト
Steam版
Playstation 4版

これも「雰囲気ゲー」に入りますね。
最近と呼ぶには少し古いゲームですが、今でも色褪せずすばらしいので紹介します。
視界いっぱいに広がる広大な砂漠。その中でふと目を覚ました主人公を操り、目的もわからないまま、さびしくも幻想的な世界を進んでいきます。
プレイ中、世界中のプレイヤーとマッチングが発生しますが、チャットや挨拶といったマルチ特有の煩わしさを心配する必要はありません。
なにせ言語コミュニケーション手段が存在しないのです。唯一できる事と言えば「ぽ、ぽ、ぽ…」と声(音?)を出すことだけ。(相手も返してくれたりするとちょっと嬉しくなったり)
その状態で、相手と出会い、寄り添い、時に助けあい、時にはぐれて別れながら、「かの地」へと旅をします。
邦題の「風の旅ビト」もすばらしいのですが、原題「Journey」が本当にゲームにぴったりで。権利関係で日本では使えなかったのが惜しいです。

いつかゲームを作るのが夢

ちなみに、これらのインディータイトルに触発されて、私も何度かゲーム作りに挑戦したことがありますが、ことごとく挫折しています。

コンセプトづくりから始まり、グラフィックやサウンド素材を用意して、プログラムを組んで、テストプレイを重ねて…と、ゲーム作りにはとにかく途方もない作業が伴います。
しかもそれらをこなす間、ずっと「このゲームはきっと面白くなる」と信じ続けなくてはいけません(個人的にはここがいちばん大変)。

インディータイトルでもAAAタイトルでもソーシャルゲームでも、ゲームを制作している方々には本当に頭が下がります。
彼らに感謝しつつ、今日もゲームを楽しみたいと思います。

(でも…やっぱりいつか、自分でも作ってみたいなあ)

PROFILE

凹(kubo)

よく描き、たまに書くイラストレーター。
仄暗くて寂しげなタッチの絵が得意ですが、本人はとても能天気です。
絵を描くお仕事があればぜひご連絡ください。

◆Mail
kubo.ekaki★gmail.com(★→@)

◆Pixiv (当コラム掲載イラストを原寸サイズでアップしています)