COLUMN

2020.06.27

「職業・蟲役者」 by 梅原江史 第4回/違うと言えるひと

幼馴染がいまして、彼は主に海外で仕事をしています。
帰国した際、自分が現在暮らしている新潟まで故郷である高知を経由して会いにきてくれました。

彼はサッカー好き(見るほうじゃなく、蹴るほう)が高じて大学卒業後にイタリアへ渡りました。
「どうして年功序列に従って頭を下げている人間の手下にならないといけないのか」という危機感からアルバイトで大学在学中に渡航費をためたという。
とはいえ、留学生扱いなので在留期間は知れたものです。
彼は地元のアマチュアチームで活躍したといいます。
「こんな日本人をみすみす国に帰してなるものか」と地域の重鎮が働きかけて就職先まで斡旋してくれたとのこと。
彼は靴を取扱う仕事に就きました。
そこから革の知識を得て、女性向けの高品質な鞄の分野へと移りながら、イスラム圏や社会主義圏も含む世界中で20年を過ごしたという。

そんな彼が何故、幼馴染であるだけの自分に会うためだけに遠く離れた新潟まで来てくれたのかをきいた。

「日本の中におるだけやったら見えんもんがいっぱいあるがって、そういう話をできる幼馴染は梅ちゃんしかおらん」

懐かしい話をするつもりでいたけど、これからの話を夜通し語り合った夜であった。

翌日、彼を連れてドライブに出掛けた。
「どんなところに行きたい?」とは敢てきかなかった。
自分が親友に対して心から案内したいと思うところだけに連れていった。
彼は言った。
「ここが新潟やのーても梅ちゃんに会いにきてよかった」

仕事を志すときにおもてなしの心は確かに大切だと思います。
ただ、自らのアイデアを他人に委ねたとき。
そこはあなたじゃなくてもいい。
信用とはかくも傷だらけの罰ゲームなのだ。

PROFILE

梅原江史

インディーズバンド「MUSHA×KUSHA」のパフォーマー。
1998年結成以降、ライブ総数は2000本を超える。
踊りを担当する他、作詞の多くを手掛けており、MUSHA×KUSHAにおける精神的支柱として知られる。

MUSHA×KUSHAサイト

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