COLUMN

2023.07.11

「ズッコケマンション売却日記」 by 清水 里華 第8話/内見24件目の奇跡

FREEZINE運営スタッフの清水です。コラム第7話では、原宿から高尾への住み替え劇をお送りいたしましたが、今回は、退去後の原宿のマンションの売却活動についてレポートしてまいります。


2021年2月6日
高尾へ越して1週間。夫婦揃って表参道のマンションの退去手続きへ。ガスを止めて、仲介業者へ鍵を返却。正味3ヶ月の居住(在庫)期間だったが、おかげで本当に助かりました。

その足で原宿のマンションに向かい、退去後の清掃。鍵を閉めたら、これにて原宿のマンションとはおさらばです。8年間、本当にお世話になりました。どうか心ある買主さんに買われておくれ。よく夫婦で通っていたタイ屋台料理「チャオチャオバンブー」でご飯を食べ、いまはなきカフェ「モントーク」で茶をしばいて、高尾へ帰宅。

2021年2月7日
引越しに伴って一時停止していた原宿のマンションの売却活動を再開。この先はぜんぶ仲介業者にお任せである。

しかし、この時点で11月の売却活動スタートからすでに3ヶ月が経過。原宿+高尾の2軒分の諸経費の支払いも、ずるずると続いている。さすがの仲介業者もいっとき弱気になり、不動産業者による買取を提示してきたほどである。うーむ。

確かに、間取りや眺望のネガはありつつも、立地・構造・設備・築年でのポジは強いはず。よって、買取や値下げ、といった弱気な選択はまだ早いと判断。

それから実に15件の内見予約を経ても成約には至らず、ひたすら粘り強く待ち、の日々が続く。



2021年3月29日
3月も終わろうかというこの日、とつぜん山が動いた。
累計24件目の内見客から、ついに購入の申し込みをいただいたのであった。キター。

買主さんは、神楽坂在住の50代のご夫婦とのこと。神楽坂のご自宅を賃貸に出して、住み替えることを検討されているそうな。そして、ご自宅のローン残高を含めたローン限度額を鑑みて、売出価格からマイナス180万の購入価格を提示される。満額回答を狙いたいところではあったが、それでも十分に採算ラインなので即決。本当にありがとうございます。丸5ヶ月にわたる売却活動は、これにてようやく終了である。長かった…

2021年4月11日
野村不動産渋谷営業所にて、買主さん同席で原宿のマンションの売買契約を締結。

うっかり髪の毛をピンクに染めてしまっていたことを激しく後悔するも、それっぽいジャケットなどを着用してのりきる。

買主さんは、なんと自分が従事している広告制作会社の、取引先企業の執行役員の方でした。業界狭い。しかも、タイムリーにも、その取引先と毎日のようにやり取りしていた最中だったので、何やら妙な気分になる。自分の仕事のギャラを払ってくれている企業の方が、巨額なローンを組んで自分の家まで買ってくれるって一体。マジで悪いことはできない。


2021年5月20日
野村不動産渋谷営業所にて、買主さん同席で決済・引渡し。

買主さんの住宅ローン契約銀行からウン千万円が私の口座に振り込まれたと思いきや、瞬く間に原宿のマンションの住宅ローン契約銀行へ振り出され、原宿のマンションの住宅ローンは無事に全額完済。同時に抵当権も抹消され、鍵や取説などもお渡しして、取引終了。

実に人生3度目の「いってこい」体験であったが、今回ばかりは、取引額が巨額なだけに、武者震いしました。


2021年5月21日
昨日振り込まれたばかりのウン千万円の売却益を手に、高尾のマンションの住宅ローンの全額一括返済の手続きを行うべく、朝イチで「きらぼし銀行 豊田支店」へ向かう。

いまこのタイミングで暴漢に襲われたらどうしよう、などとしょうもない妄想に悩まされつつ、売却益ウン千万円を握りしめ(正しくは通帳)震える足で銀行へ向かったものの、完済手続きは拍子抜けするくらいあっという間に終了。売却益は、仲介手数料の支払いなどにも充てられ、すべて気持ちいいくらいにすっからかん。

契約からわずか4ヶ月で、住宅ローン完済である。

つまり、来月からは、夢の家賃ゼロ生活のスタートである。うーん、にわかには信じがたい上に、実感も湧いてこない。そしてこの取引、きらぼし銀行にとってどんだけメリットがあったのだろうか…。当然、その他の金融商品を勧められるも、笑顔でスルー。ごめんなさいね。

その帰り道、一人で900円の焼肉ランチに行き、ひとまず勝利の美酒に酔いしれたのは言うまでもない。

この後、都会の喧騒を離れた高尾山エリアの自然豊かな暮らしにもすっかりなじみ、夫婦による「川活」(=近所の川縁で、みんなで酒飲んだり焚き火したりしてゆるっとチルする活動)が本格化。おまけに私は私で、意味もなく夜明け前から高尾山界隈を毎朝10km走る、という習慣が定着するのであった。

~後日談~
2022年2月、この原宿のマンションの売却益を確定申告することとなり、FREEZINEでもおなじみのスーパー税理士・赤木葉子先生にご相談。

赤木葉子 インタビュー | お客様の本気に、本気で向き合うという覚悟。

売却益にかかる所得税の税率は、20%。これを持ってかれるとかなりの痛手なのだが、さすがの赤木先生。「3000万円までの譲渡所得税控除」を適用していただき、所得税を全額非課税にすることに成功したのであった。赤木先生、本当にありがとうございます!


そんなこんなで、原宿・表参道・高尾の3軒のマンションを巡るドタバタ劇も、ついに終幕。ここまで読んでいただいたみなさま、本当にありがとうございました!そして高尾の自然を感じたい川活メンバー、常に募集中でございます。

(完)

PROFILE

清水 里華(シミズ リカ)

都内の広告会社に勤めるクリエイティブディレクター兼コピーライター。
ときには、戦慄のオルタナティヴロックバンド「Very Ape」でドラムを叩き、ときには、WEBメディア「FREEZINE」で企画+取材+構成+イラストを担当。

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