COLUMN

2024.10.17

「ドキッ‼️ まさかだらけの心臓病闘病体験記」 by 清水 里華 第6話/オペ、そして生還

文:清水 里華

この連載コラムも、今回で最終回。ついに8月に執り行われた心臓ペースメーカーの植込みオペの模様から退院、術後の経過についてレポートいたします。

2024年8月13日/入院初日

今日から、ペースメーカー手術に備えた入院である。日課である10kmの早朝ランニングを終え、家事を一通り完了。心のお守り「BAIDOKU」キャップを被って行こうかと思ったが、さすがに病院じゃ不謹慎なので、すんでのところで回避。

予定時刻に6人の大部屋に通されると、さっそく不整脈を24時間モニタリングすべく、心電図モニターを装着。やはり安静時の心拍数が時々30拍台の危険ゾーンになってるらしい。ここまで良く持ってくれたな、俺の心臓。血圧、体重を計測して、点滴の針のみ装着。

医師から夫とともに明日のオペの説明を受ける。治療症名は「完全房室ブロック」。お盆最中のオペでもあるので、1日に6件も予定されているらしい。私は最後とのことで、17時くらいになるやも。ひたすら眠く、アマプラで動画を流し見しつつ就寝。

8月14日/オペ当日

いよいよオペ当日。予定では、17時過ぎのオペ開始に向けて14時から点滴開始とのこと。4時起床、Kindleで読書しつつ起床時間を待つ。6時、館内放送で起床。血圧、体温、体重を計測の後、7時30分ごろ普通食をいただく。「どうせ午後まで暇やろ」ってんで余裕をぶっこいてベッドで爆睡してたら、9時30分ごろ、担当医師よりバタバタと「昼くらいのオペに繰り上げになるかも」との通達がある。えらいこっちゃ。夫に急ぎ連絡し、コンビニで購入したT字帯(要はレディースふんどし)とオペ着に着替えて、点滴の管と尿道カテーテルをつける。

まったく予期してなかったんですが、尿道カテーテルってのが本当に嫌ですね。抜けるのが怖くて動けないし、管を入れるだけなんだけど地味にずっと痛いし、違和感がずっと続くのであった。

10時20分に、点滴とおしっこパックを左右に装着したかっこいい車椅子で病室から運ばれ、10時30分に病棟1階のオペ室に入り、頭上に6面モニタが煌々と灯るベッドに上げられる。上半身には帽子、酸素マスク、抗生剤、麻酔やらを一気にいろいろ装着されて、下半身では患部の消毒、尿道カテーテル固定などがなされている。

ちなみに補足。今回のペースメーカー手術は、胸を開いて心臓に直接ペースメーカーを装着する開胸手術ではなく、右足のつけね、いわゆる鼠蹊部からカテーテルでリードレスペースメーカーを心臓まで運んで装着するカテーテルオペなのである。いやあ、VIO脱毛しといてマジでよかった。断酒といい、VIO脱毛といい、半年前のひょんな思いつきが、見事に回収されている感。

「P波が伝わってない」「ジャンクションが機能してない」などの会話をぼんやり聞きつつ、麻酔剤を注入される前に名前と生年月日を確認されつつ、「いったいいつまで意識あるんやろ。これ自分だけ麻酔効かないやつでは?」などと不安になり、忙しく立ち働くみなさまの頭と天井を眺めるしかない自分であった。

それから、どれくらいの時間が経過したのか。気づいたら、病室のベッドの上でした。夫によるとオペ終了は12時ごろ。夫はオペ後に医師からいろいろ説明を受けて、私が目を覚ます前に帰宅したようだ。仕事の合間に急遽立ち会ってくれた夫に大感謝である。15時30分ごろ、麻酔から完全に覚醒。右の鼠蹊部の傷口と尿道カテーテルの痛みが拮抗する。17時、尿道カテーテルを抜いてもらい、血と体液まみれのオペ着とタオルとT字帯から普段着に着替えたら、シャネルの香水を軽くつけてQOL確保。今日のトイレは、看護師さん立ち会いがマストだが、明日からはトイレもコンビニも自由である。あとは明日の朝食までひたすら寝るのみ。カロリーゼロ飴で空腹をしのごうと思っていたら18時に夕食出た。わーい。食後はトイレも洗面もせず、速攻で爆睡。

8月15日/オペ翌日〜退院

深夜0時30分に目が覚め、尿管を抜いた後の初トイレ。ビクビクだったが、出血もなく普通に回復。ついでに、缶コーヒーを自販機でこっそり購入。オペつっても、自分はただ寝てただけなのに、缶コーヒーがしみるぜ。Macで作業しながら朝を待つ。Kindleのコレクション仕分けをしつつ、積ん読してた手塚治虫「陽だまりの樹」を一気読み。何度読んでも本当に面白い。

今日のタスクは、採血・心電図検査・傷口の抜糸、そして植込んだペースメーカーの調整である。これまで、遅い時は30拍台を普通に叩き出していた私の心拍数だが、最低でも60拍前後をキープできるよう調整してくれるそうだ。ベッドの上を右に左にごろごろ、院内をうろうろ歩き回ることおよそ15分、ペースメーカの出力調整が完了。自宅でBluetoothの機器を使ってモニタリングもでき、数値が病院と連携されるので、万が一に異常値が出ても安心なのである。

それらを終えてしまうと、いよいよやることがない。「入院中に仕事でもするか」とあれこれ準備してきたけど、なんだかんだで集中できないし、退院予定日の明日は台風が関東直撃ということで、今日退院できないかとダメ元でごねてみる。すると、「じゃあもう一度、ペースメーカー調整後の心電図検査とレントゲン撮って、それで判断しましょう」との急展開に。おおー。速攻で2度目の心電図とレントゲンを撮りに行き、ベッドで寝ながら待っていると、14時過ぎに医師から「退院の許可がおりました」との通達をもらう。やったぜー。夫にすかさず連絡を入れて、秒で身支度を終え、お迎えに来てくれた夫のタクシーにそのまま乗り込んで隣のモールで食事と買い物して帰宅。正味1日ぶり。短っ。帰宅後、速攻で荷解きを終え、シャワーを浴びて自宅ベッドで爆睡。やっぱり自宅はいいなあ。

8月16日/退院初日+電動アシスト心臓0日目

新生「電動アシスト心臓」との暮らしは、深夜にはじまる。ということで、退院初日もうっかり深夜0時起床。夏はとかく睡眠が不規則になりがちである。早朝から大型の台風7号が関東に再接近するとはいえ、入院で2日も運動できてないので、体がなまって気持ち悪い。夫に付き添ってもらい、嵐の小康状態を見計らって、ゆっくり散歩から身体を慣らしていくべく、明け方3時発で高尾山ICまで徒歩往復。

8月20日/電動アシスト心臓4日目

お盆休み明けの月曜日。今日から仕事もあるので気合を入れ直すべく、夜明けランもぼちぼち再開。おっかなびっくりランニングシューズとウェアを着用し、散歩か?と思うくらいのスローペースでスタート。時間はいつもよりかかったが、10km完走。この分なら問題はなさそうだ。

ちなみに、ペースメーカーは自脈が60以上になった場合はサポートを自動でストップして見守ってくれるそうなので、動悸や息切れはすべて自分の心肺機能や胃腸の具合を反映している。うーん。わずか4日走らないだけで、走り方を忘れてしまっているのか。心拍数が180拍近い。まあ徐々に慣らしていくしかあるまいて。ひょんなタイミングでもらった人生のロスタイムは、意外と長い。

8月29日/電動アシスト心臓14日目

その後も早朝10kmランを毎日続けつつ、つつがなくオペ後2週間が経過。画像の通り、安静時の心拍数も、8月14日のオペ後はびったり60拍をキープしてくれている。心肺機能を示すVO2MAXの数値は芳しくないが、走れているだけでもめっけものである。

今日は久々に通院し、心エコー検査、心電図検査、ペースメーカーの出力調整を行い、専門医による診断を受ける。術後の経過は順調であり、次回の診察は半年後で良いと太鼓判をもらう。やったぜ。

最後に

その後、私の植え込んだリードレスペースメーカーは、稼働データを病院と同期することで24時間体制での監視が可能。よって、新たな不整脈や機器の不具合をモニタリングしてもらっている安心感に支えられ、まさにTOP画像のように明るく楽しい毎日を過ごしております。

今後の日常生活に万全を期すために、ヘルプマークとペースメーカーカードを準備。さらに、病院で診断書を発行してもらい、障害厚生年金の受給と障害者手帳の発行手続きを行えば、ひとまずやるべきことは終了である。

ちなみに、病院判断による障害等級は、なんと、最重度の第1種1級とのこと。(下記の画像をご参照ください)

本人にはその自覚はないのだが、改めて重度の障害と共に生きていく覚悟を決めるしかあるまい。そこで、バンドのライヴ活動再開も鑑み、10kmの早朝ランニングを毎日欠かすことなく、体力の維持向上と精神の鍛錬を続けたいと思う。
(2024年10月現在、毎月の走行距離は約300kmをキープしております)

これにてこのコラムの連載は終了。ここまで読んでくれたみなさま、本当にありがとうございました。みなさまもどうか健康を軽視することなく、人間ドックや健康診断は定期的に受けてくださいね。

PROFILE

清水 里華(シミズ リカ)

都内の広告会社に勤めるクリエイティブディレクター兼コピーライター。
ときには、戦慄のオルタナティヴロックバンド「Very Ape」でドラムを叩き、ときには、WEBメディア「FREEZINE」で企画+取材+構成+イラストを担当。

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