FEATURE

2021.11.26

赤城文の人生の転機になった10の音楽

FREEZINEが選ぶ「人生の転機になった10の音楽」シリーズ。
第22弾は、セルフプロデュースアイドルグループ「あたし全部あげる。」のドールレッド担当、赤城文!

もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。

DJ宇多丸申し訳Jr.&ミッツィー申し訳『申し訳ないとフロム赤坂 アーバンMIX』

私が幼い頃に車の中で家族がよく流していたアルバムなので自然と聴いて育ち、そして自分自身で好きな音楽を開拓するようになってからは父の音楽英才教育から巣立ってしまいあまり聴かなくなってしまったのですが「私のひっちゃかめっちゃかな音楽の趣味の基盤を作った物って何だろう?」と考えた時に真っ先にこのアルバムが思い付きました。
幼少期はmix2のアイドルメドレーが特にお気に入りで、20歳になった今coco、Melody、キーヤキッスなどの90年代~00年代初期のアイドルにどハマりした際にこちらに収録されていた美少女クラブ21の「DO YOUR BEST」という神曲の存在を思い出してシングルを買ったり、他にも収録アーティストを見返してみたら「フィッシュマンズ」「小島麻由美」など今自然と聴いてる方の名前が並んでいてれっきとしたバイブルだと思います。

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イエロー・マジック・オーケストラ『テクノ・バイブル』

父がお家で流していて私が「これいいね」と言って中学生ぐらいの時に借してもらったアルバムなのですが、私が小中学生の時はアイドルソングかばかり聴いていたので初めて洗練された曲を聴いて「大人が聴いてる音楽って全然古臭くなくて良いもんだな」と気付かせてくれたアルバムではあるのですがYMO自体がどの層も新鮮な気持ちにさせる音楽なのでそこで私の認識がズレたというか耳が肥えてしまいました笑
高校生の時に自然と聴いていた中森明菜の「禁区」や「ハイスクール・ララバイ」の作曲者は細野晴臣さんですしそこからどんどんJIN-SAYや核P-MODELやSOFT BALLETやタコや戸川純を聴くようになったりめでたくピコピコ大好き!テクノ大好き!ニューウェーブ大好き!メカノは天国!みたいな女子高生になったのでこれが本当の「テクノ・バイブル」ってやつ

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麻丘めぐみ『ゴールデン☆ベスト』

私が16歳だった思春期真っ只中の人間を形成する大事な時期に出会えて良かったアルバムの一つです。
歌謡曲は「君が好きさ~」みたいな若い子に刺さる現代の分かりやすいラブソングは商業ソングと気付かせてくれて本物のラブソングを教えてくれました。
父と双子の妹(innesの可愛唯)が筒美京平先生の大ファンな為麻丘めぐみさんの存在自体は存じ上げていたのですが、当時はあまり歌謡曲に興味がなくて麻丘めぐみさんの姫カットと美脚に赤いワンピースというビジュアル惹かれて物は試しという感覚でこのアルバムを手に取ったのですが丁度その頃に初めて大人の恋愛というものを知って「白い部屋」という曲に惚れ込みました。
「これが愛するということか」「これが女か」「恋愛って物憂げなものなんだな」と初めて感じた少女と女の狭間の気持ちが全て凝縮されていて全フレーズが名言なのですが特に「私が私でなくなるみたい」という歌詞に共感をしましたし「黒い髪 白い爪 赤い頬 いいわ」という女になっていく姿に自惚れているようなうっとりする歌詞もロマンチックで大好きです。
「白い部屋」という意味深なタイトルも好きですし「丸い鏡」というフレーズもまだ新鮮に感じるホテルの鏡に向かって恋に自惚れているのかなと思わせるコケティッシュなフレーズを聴くと一瞬であの頃に引き戻されます。

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SPANK HAPPY『ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ』

コンテンツの為に生きたいと思わせてくれたのもパズルのピースがハマったように狂おしく愛おしい気持ちにさせてくれたのもスパンクスが初めてでした。
絵に描いたようにイケオジな菊地成孔さんが煙草をふかしながらお人形の様な岩澤瞳さんの腰を抱いて1つのマイクで2人で歌うパフォーマンスに雷に打たれたような衝撃が走った「ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ」という曲が収録されているアルバムです。
幼くて無機質な声の岩澤さんとお酒の席で隣でしっとり口説くような声の菊地さんのセリフの掛け合いがひたすら続いてサビで「ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ」とだけ歌う不思議なハウス調の曲なのですがフランスの文化に深く精通している菊地成孔さんが描く世界観は濃厚かつ独特かつこれまでにないほど官能的でロリータでロマンティックでこの曲を聴くと香水の瓶に直接鼻を近づけた時のようなツンとする甘い香りが漂うような気がします。あとヴァルテュスの絵を思い出します。
好きなフレーズを抜粋したいのですがこの曲は短編の小説のような一曲なので頭から聴く事をお勧め致します。
まるで地下の気品漂うクラブで踊り狂う人を眺めている気分にもなれるし澁澤龍彦の犬狼都市を小説を読み終えた時のような充足感も味わえます。知性とエロスは紙一重と教えてくれた曲です。

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倉橋ヨエコ『色々』

倉橋ヨエコ様は思春期に狂ったように聴いていたことをこの記事を書いていて思い出しました。
私は中高生の時に酷く鬱々としていて身も心も隙間だらけで訳もなく泣いてばかりの自責の日々でありましたが「この世に木を見ただけで泣いてしまう自分の様な人間にヒットする繊細な音楽はあるのだろうか…」と彷徨っている時に倉橋ヨエコさんに出会いました。そして女性ボーカルの良さに改めて気づいてそこから白波多カミンさんや小島麻由美さんや松崎ナオさんなどを聴き始めました。
倉橋ヨエコさんの歌は救いではないけど常に寄り添ってくれる様な感覚でした。
このアルバムを聴くと放課後に本を読む為だけに夜まで滞在していた大きな桜の木が綺麗な公園を思い出して懐かしくなります。
桜道の落ちサビの「詰める隙間はもうないですか」で転調する部分があまりにも切なくて泣いてしまいます。
特に当時聴いていたのが「花とダンス」なのですが泣きながら帰る学校の帰り道で何度「泣かない 笑え」というフレーズに助けられた事か。
「幸せは近づいてますか」という疑問系のフレーズにヨエコさんも同じ様に悩んでいたのかなと考えて孤独を免れていましたね。
他にも「夜な夜な夜な」「金魚想う」など雰囲気があって素敵な曲もございます。

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アーバンギャルド『ガイガーカウンターカルチャー』

幼少期に父から借りたipodに入っていた赤道小町ドキッを聴きながら「この曲をBGMに黒髪の少女が真っ赤なワンピースをまとって築70年ぐらいの和室に居る世界観が好きなんだけどどこに存在していて何ていうジャンルなんだろうなぁ」と昭和エログロナンセンスな作品や少女性を感じる作品が好きだけれど何というジャンルなのか分からずに悶々としていましたが晴れて15歳の時にハッキリとそのジャンルの漫画や小説に出会う事ができたのですが音楽面ではアーバンギャルドさんが始まりでした。
ロリータ服が好きだった為ロリータイメージの曲は無いのかと探していたところ「ロリィタ服と機関銃」という曲に出会って、先程から述べている歌謡テクノを彷彿とさせるサウンドと徹底された世界観に惹き込まれたのですが「眼帯譚」を聴いて一気に心を掴まれました。
アーバンギャルドさんはキャッチーな名曲揃いだけれど眼帯譚はその中でも特にシンプルでその無機質さに何故か影を感じて切なくなります。
あと歌詞に登場する「暗闇坂」が実在する事を知って嬉しかった思い出があります。
私がP-MODELやSPANK HAPPYを聴き始めたり元祖病み系ネットアイドルの南條あやさんのエッセイや澁澤龍彦を読み始めたり所謂私がアングラカルチャーに出会えるきっかけになったバンドでもあり人生に楽しみを与えて下さって辛い思春期を支えて下さった大好きなバンドの一番好きな曲でもあります。

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溶けない名前『おしえてV感覚』

こちらも懐かしい雰囲気に翻弄されていた時に文少女が出会ったバンドです。
シューゲイザーという音楽にあまり馴染みがなかったのですが、青春の清涼感を感じられるサウンドとどんな気分の時に聴いても邪魔しないような柔らかい声質が心地よいのですがキャッチーでベースは尖った演奏をしており全てのバランスが良いです。
思春期の感覚を大人になっても大事にしているアーティストが好きなので今でもたまに聴いてしまいます。
特に「ぼくらの倒錯ごっこ」のイントロの歪んだバンドサウンドに灼熱を感じて胸が焦がされ、更に清涼感のあるクセになるシンセサイザーのメロディが入り混じり「眠れる?眠れない 十七歳」というフレーズがノスタルジックで耳に残ります。
「十七歳」という思春期を彷彿させるワードがジャケットのセーラー服ワンピース眠る少女と結び付いて更にノスタルジックな世界観が強まっています。アートワークはもしかしたらこの歌詞が元になっているかもしれませんね。
「ことばならめさっけ 夢日記の徹底放棄 そこでくられまって ぼくらの倒錯ごっこ」と突然の方言と何通りも捉えられる「くられ」という禁忌的なフレーズもコケティッシュで好きです。この曲は私のnoteで歌詞解釈させて頂いたのでそちらも是非読んで頂きたいです。
「おしえてV感覚」は夏に、「制服甘露倶楽部」は春に聴きたくなります。アートワークもMVも素敵なので是非チェックしてみてください。
夏、思春期、セーラー服というシンプルな題材は彼らの手により全てコケティッシュかつ影を感じさせる楽曲へと昇華されているので初めて聴いた方も誰でもあの頃に戻れます。

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AKB48『SET LIST ~グレイテストソングス~完全盤』

私の中で特に惹かれるかつブレない気持ちというかスローガンが「少女性」なのですがこのアルバムを聴いていた当時小学生ながらにそれを初めて感じて16才になった時に「少女性」という存在をハッキリ認識した時に改めて聴いてこれも自分のバイブルだなと感じたアルバムです。
「Dear my teacher」は題材は先生と生徒の禁断の恋ですが、歳の差愛や未成年の好奇心を表すフレーズで構成されている否定も肯定もしない非常にメッセージ性の強い名曲だと思います。
特に「愛とは 別なものかもね それって いけない ことですか?私には先があるのよいろいろ試したいじゃない?」というフレーズに痺れました。あぁ秋元康先生はおじさんじゃなくて現役女子高生なんだなって。
このアルバムは「軽蔑していた愛情」「制服が邪魔をする」「スカート、ひらり」「ロマンス、イラネ」「Virgin love」など少女性を感じられる影のある曲ばかりなのでアイドルが好きでない方にも聴いて頂きたいです。
メッセージ性が強い歌を影のある10代のメンバー達が歌った事で一生モノの作品になったと思っています。それがアイドルだと思います。

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面影ラッキーホール『typical affair』

面影ラッキーホールと言えば「好きな男の名前腕にコンパスの針でかいた」と「あたしだけにかけて」が有名だと思うのですが、どのアルバムも名曲揃いで特に面影ラッキーホールさんの中でも「セカンドのラブ」と「今夜巣鴨で」が好きです。
私は音楽も映画も小説もファンタジーに長けているのはあまり好まなくて人間の汚い生き様をリアルに映し出す露骨な作品が好きなので面影ラッキーホールさんは一切何も包み隠さない歌詞が好きです。
高校生の時に人間のリアルが見たくて色々追い求めて生きていたら夢みがちなラブソングやハッピーエンドな漫画や小説からどんどん遠ざかってしまい、本物はどこにあるんだろうと探していた時に人からオススメされて面影ラッキーホールさんに出会いました。
私的には面影ラッキーホールさんは夜のクレイジーケンバンドだと思っています笑
女の痛ましさを露骨にそしてユニークに歌い上げるだけではなく影を感じさせる部分に美しさを感じるのと男性ボーカルが女性目線で歌うのも色っぽくて好きです。
「セカンドのラブ」に「愚図ね」というフレーズがあり中森明菜ファンとしては大変素敵なオマージュ(?)だと思います。
特に「彼じゃない人を選んでいれば本命にだってなれるの」という歌詞が頭では分かっていても恋愛は理性が効かない物だと表していてお気に入りです。

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ミッシェルガンエレファント『ギヤ・ブルーズ』

ワタクシが愛してやまないミッシェルガンエレファントと出会ったきっかけはあまり覚えて居なくて古きを訪ねて新しきを知る人間なので自分の世代ではない音楽を聴くのが当たり前になって居た為ミッシェルと同世代のナンバガやゆら帝などにはガッツリハマっていたのでなんとなくミッシェルガンエレファントは当たり前の存在でした。
ですが19歳の時に憧れていた方にミッシェルかっこいいよと言われ高校生の時に聴いて一番良いと思ったG.W.Dが収録されていたのでなんとなく「ギヤ・ブルーズ」を手に取りました。
そこには私が知らないミッシェルの魅力が沢山詰まっていてベースの音が大好きな私はウエノコウジさんの虜になりました。
ウエストキャバレードライブがこんなにカッコイイベースとドラムから始まるのに押し押しのシングル曲じゃないなんて!と驚きましたね。
「スター」とは何かとステージを見て気付かされたり学ぶことも沢山ありますし、私もライブでSEの入場の際にウエノさんのお辞儀を真似させて頂いてカタチから近づけております笑
今の生きる希望は彼らなので各々が音楽を続けている事に感謝ですしアベフトシさんのギターは鳴らなくなってもかつての彼の演奏は私にとっては常に新鮮なものです。

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改めて「人生の転機になった10の音楽」を選んでみて。

自分の人生は音楽でできていると言っても過言ではないぐらい音楽と共に成長している自分ですが改めて自分に影響を与えてくださった音楽を振り返ってみると、これが凝縮されて今の自分ができているなぁと感じました。
今回は幼少期と思春期に特に影響を受けた割とダウナーな作品をピックアップしたラインナップでもあり10では足りなかったので第二弾も是非書かせていただきたいです…!

PROFILE

赤城 文(アカギ アヤ)

2000年11月28日生まれ 東京都出身
セルフプロデュースアイドルグループ「あたし全部あげる。」のドールレッド担当。
主に作詞と振り付けを行なっている。

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