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2024.03.15

キタ(than)の人生の転機になった10の音楽

FREEZINEが選ぶ「人生の転機になった10の音楽」シリーズ。
第36弾は、日本代表になったことのあるバンドthanギターボーカルのキタ!

もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。

サザンオールスターズ『人気者で行こう』

小学生の頃、兄からテープで渡されて聞いたのがこれ。何を原体験とするならこのアルバムになる。繰り返し聴きながら思春期に突入するのだが、音楽を通して何故がエロティシズムまで感じていた一枚。今でもほぼ全曲歌えるし、なんなら今でもちょっとエロい気持ちになる一枚。

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THE BLUE HEARTS『THE BLUE HEARTS』

中二、14歳、一番いけない年齢、毎日夕方にサンテレビ(関西のローカルTV局)で「ミュージックトマトジャパン」という日本のいろんなMV流しっぱなしの番組がありインターネットとか無い時代の貴重な情報源だったのだが、その番組に突如ブルーハーツのライブ映像が流れる。隠れてオナニーばっかりしていた私にハンマーが振り降ろされる。完全に人生が変わってしまった。高校に上がるとブルーハーツのコピーバンドを始めるに至る。
数年前、とあるライブでドラムの梶原さん(梶くん)と共演させてもらったのだが、とにかく嬉しくて中二に戻ってしまった。梶くんは私らのライブを観て「ブルーハーツに憧れて、なんでこうなっちゃったの? まあでも、いろいろあるよね」と優しく感想をくれた。うん、私もそう思います。

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THE STALIN『STALINISM』

高校生の頃、甲本ヒロトさんが「僕パンクロックが好きだ」というから僕もパンクロックが好きだとなり、もちろんピストルズなども私の人生を変えるのだが、同時進行で日本のパンクシーンのなんというか怖さや恐怖感に憧れ、サウンドも含めてしっくりきたのがスターリンだった。時代的には少し前の世代で生で観る事は叶わなかったが、むしろ観ていたらさらに人生が変わってしまっていて、五体満足に生きていなかったかもしれない。
余談だが私、阪神大震災の際震度7地域に住んでて、地震の真っ最中、寝ていた私の顔にこのアルバムのLPジャケットが落ちてきた。それを手に構えながら天井が落ちてこないことを必死に祈った。今でも「あいつにはぁー肉をくれてやれ!」なんて聴いたりすると生きていて良かったなあと思う。

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King Crimson『Larks' Tongues in Aspic』

ハタチくらいだろうか、小さなレコード屋でバイトをしていたのだが、そこの店長からいろいろと音楽について教わり、幅広く音楽に触れていく中、プログレッシブロックに傾倒していく。とはいえ割とベタなクリムゾンやフロイドなどを繰り返し聴いていた。その中でも特に好きなのはこのアルバムで個人的な意見だがクリムゾンの頂点的アルバムだと思っている。
何かあるたびによく聴いているアルバムでまさに人生に寄り添ってくれている音楽ではないかと思う。ジェイミーミューアに寄り添われるのはちょっと御免だが。なんか匂いそうだし。
そう、これ(リンク先:YouTube)面白いよ。

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dinosaur jr.『GREEN MIND』

マンチェスターブーム、グランジ、ローファイだあ精神解放ノ為ノ音楽だあなんだの割と直撃世代で、ハタチくらいの頃はプログレなんかも聴きつつやはり心を掴まれてしまうのは同時代的に発生している音楽。そんな中でも特にぐりぐりキテいたバンドの一つがダイナソーだ。当然ニルヴァーナやソニックユースやマッドハニーなんかも好きだったのだが、選べと言われるとダイナソーなんだよなあ。しかもBugとか選びたいのだけど、やっぱりGREEN MINDになっちゃうんだよなあ。WAGONよなあ。[1991: The Year Punk Broke]ってビデオ作品があって、ダイナソーはフリークシーンを演奏していてこれがめっちゃカッコいいのだけど、でもやっぱりGREEN MIND選んじゃうよなあ。音ちっさいのになあ。

ちなみにダイナソーの映画「Freakscene」。不覚にも感動してしまった。内容的にはめっちゃダラダラしてるのだけど、「ああこれがバンドマンの人生か」と思う一作。

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Soft Machine『Third』

こちらも前述のレコード店の店長からの教育の賜物であるソフトマシン。ちなみにその店長は日本のプログレ界ではめちゃくちゃ高名な方(アインソフの山本さんという方)で、今思えばなんという贅沢な環境だったのかと。んでソフトマシンなのだけど、どんなバンドか知らん方はググってね。サードはめっちゃくちゃ聴いてて、まあベタですがMoon In Juneみたいな曲作れたらなあ、って今でも思う。このサードでソフトマシンはジャズロックへと変化していき、最終的にはオリジナルメンバーもいない状態になるのですが、それも含めて、「ああ、バンドだなあ」としみじみするす。

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Polvo『Today's Active Lifestyles』

これもハタチそこそこ、20代前半くらい、時は90年代前半、情報源と言えばロッキンオンをはじめとした雑誌。んでMUSIC MAGAZINE読んでたら小さいレビューでPolvoが紹介されてて、たまたまショップでCD漁りをしていた時に発見、ノーガードで購入したのだがそれが良くなかった。家帰って聴いた瞬間から「なんやこれ」の連続。脳みそが洗濯されるような感覚。
1998年に解散して2008年に復活するのだけど復活作の「IN PRISM」ってアルバムもこれまた新鮮でたまらん。
Polvoみたいなバンドしたいなあああこんな曲書きたいなあああと思いながら未だ叶わぬ夢の状態。人生を変えられていない一枚。

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CONDOR44『Good Bye 44th music』

私、10年ほど音楽やライブの世界から遠ざかっていた時期があったのですが、その真っ只中に偶然聴いたのがこのアルバム。まあ正直めちゃくちゃ嫉妬しましたよ。54-71なんかもそうなんですが、オレが音楽やってない間にこんなかっこいい音楽が生まれてるのかって、純粋に楽しむよりも嫉妬の感覚が強かったすマジで。
おかげさんでその嫉妬が限界を迎え、再度音楽をやる生活になった時にはコンドルも名前を変えた上にいなくなってて、54-71もいなくなっていた。ああ、同時代にやっていたかったなあ。少しの後悔。

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Jawbox『Novelty』

thanを始めた時、ベンチマークにしていたのがJawbox。こんなバンドになりたいなあと思っていた。しかし今現在こんな風にはなっていない。のだがJawboxやBurningAirlines、Jロビンスのイズム的ニュアンスは随所に絡めているつもりだし、特にバンドとして転換期を迎える際には何故かめちゃくちゃ聴いている。
しかしまあ人生思った通りになるもんじゃないなとも思える。なんでかって、Jロビンスすんごいんだもん。

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eastern youth『SONGentoJIYU』

実はイースタンをしっかり聴き始めたのはこの10数年ほどなんやけど、今では心酔のレベルで大好きである。ライブもよく観てるし。歴史を追ってみてもバンドとしての在り方には敬服するし、近年においてはキャリアと積み重ねたモノの最大積載量を超えてくるこのようなアルバムをリリースするという面で戦慄に近いものを覚える。まあアタシらいつまで経ってもサボられへんって人生にクサビを打たれるような思いっす。

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改めて「人生の転機になった10の音楽」を選んでみて。

みなさん往々にしてそうなのだが、このテーマに関して10個限定で選ぶってのはなかなか難しいし、なんなら昔の彼女とSEXしながら聴いた曲とか選んでしまいそうになって筆を止めるなど無駄な作業も挟みながら、どないかして選びました。選んでみると見事に90年代がメインになるし、そのルーツを選ぶし、今現在やっている音楽は当然今の音楽だと自負してやっているものの、その背景にはルーツがあるのだなとあらためて思います。ここ最近特に思うのですが、突然自身の中から発生する新しい音楽なんてものはなくて、自分が追いかけ曲がりなりにも理解をしたであろう歴史が今の自分の今の音楽として脳みそからひり出されているのですな。歴史のお勉強も大事だなとつくづく思います。まあ、突然自身の中から発生する新しい音楽を諦めてもいないし、出てけえへんかなーとは思ってますけどね。

PROFILE

キタ(than)

日本代表になったことのあるバンドthanのギターボーカル。大阪在住だが最近は頻繁に関東、特に中央線沿線に出没する。ソロも含めたライブ本数は年間200本を超えたこともあり、昨年(2023年)は170本強のライブを行った頑丈で堅牢なミュージシャン。

最近血液検査を行ったが、ほぼ全ての数値が基準値内で、摂取する酒と煙草の影響を受けないという奇跡の体を持った健康優良オルタナおじさんである。

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