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2022.11.15

toshikiの人生の転機になった10の音楽

FREEZINEが選ぶ「人生の転機になった10の音楽」シリーズ。
第29弾は、ロックバンド「alt of the society」Ba/Voのtoshiki!

もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。

COCOBAT『return of grasshopper』

高校生の頃SEX MACHINEGUNS のコピーバンドでベースを弾いてたんだけど、やっていくうちにベースが永遠とルートの早弾きで面白く無くなって、「つまんねーな」って思ってた頃、BASSマガジン買った時に、白黒ページのベースがイケてるおすすめCD紹介みたいなコーナーで『ザッカザッカで超ブリブリ』ってキャッチフレーズで紹介されていて、めちゃくちゃ気になってCDを買った。

最初聴いた時どれがベースか全く分からなくてVHSのライブ映像を買ってみたんだけど、一番バキバキうるせーのがベースだった!

この時に俺の中のベースの概念(ベースは縁の下の力持ち的な存在)がぶっ壊されて『ベースでも目立って良いんだ』って救われた気持ちになった。※今思えば、やり方をはき違えて抜き差し全く無し。結果バンドアンサンブルを全無視して台無しにしまくってたと超反省してます…

自分たちの楽曲で、昔はスラップとか超やってたけど今は全くやってないんだけど… ベースの攻めた姿勢とかは完全にこの曲やTAKE-SHITさんのプレイで確立されてます。

特にreturn of grasshopperはノリと勢いが最高で今聴いてもアガる。

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eastern youth『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』

この曲も高校の頃。当時はBa /Vo ではなく、BassのみのプレイヤーだったのでBassばかり見てたんだけど、多分フジロック2000年初頭のVHSを友達と見ててeastern youthがこのアルバムの曲「青すぎる空」やってたんだよね。

その頃めっちゃ青春パンクや何でも青春パンクカバーが流行ってた中、この曲が俺の中でリアルすぎてめちゃくちゃ刺さった。

昔から生きる事、死ぬ事に結構敏感でその感情のやり場が良く分からなくでギスギスしてた時に「いずれ暮らしの果てに散る」って歌詞が自分を落ち着かせてくれてた。

それからイースタンはずっと自分の応援歌的な存在なんだけど、曲が俺の中で美化されまくって、本物(ライブ)を見るとそのイメージが壊れてしまいそうで。

結局ライブを見る事になるのはものすごく後の事になってしまうんだけど、それぐらい自分が当時葛藤していた気持ちや感情にリンクしまくったアルバム。

その後上京してeastern youthのライブをUFO CLUBで見たんだけど、開演早々ミュートから始まり歪み踏んだ5秒で空気が揺れて衝撃波みたいのが飛んできて、俺が美化してたイメージを遥か高く超えてった事。『本当にすみませんでした』とニコニコしながら思った事は今でもバンドの原動力の一つ。シャウトでは無く叫びを俺に教えてくれた1枚です。

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G-FREAK FACTORY『島生民』

高校卒業後、当時自分は鹿児島に住んでいてBass/Vocalではなく、BaのみでVoは別の奴(タテイシって奴)がいたんだけど、そいつと鹿児島から東京に車で旅に出た時の話。

今思えば俺は2回上京してるので、1回目の上京の時の事。

鹿児島で仕事を辞めたタイミング、俺はバンドをやりたくて悶々としてた。タテイシも親のコネで入れられた愛知県の職場からバックれて鹿児島に無断で帰って来てて。超ばったり地元の街でそいつと会ったんだよね。

その時、俺もタテイシもバンド熱があり、「バンドやろうぜ」ってなり。そのまま超ノリで、車で鹿児島から東京まで音楽の旅に出た。

この間めっちゃ色々あって、あんま言える様な事でもないし、話が長くなるから過程は端折るけども、結局俺達は東京で音楽は出来ず…

日雇いの仕事で明日生きる為の金を稼ぐだけで時間だけが過ぎていった。

それでも音楽を続ける方法や大都会で希望を見つけたくて。東京の音楽事情も全くわからないので取り敢えずHMV(CDショップ)に行った。

その時に買ったVHSのオムニバスにG-FREAK FACTORYが入ってて、地元群馬へのリスペクトと音楽への姿勢を語っていて、鹿児島で音楽を続けられなくて東京に出てきた俺たちは超超超衝撃を受けた。



その後、このアルバムを買って「島生民」って楽曲を聴いた時に、曲中ほとんどポエトリーで更に衝撃を受けた。そもそも曲は歌メロを付けなきゃいけないって観念を根元っからぶっ壊された。

結局東京では生きる事に精一杯で音楽活動は出来ず、鹿児島に帰る事になる。

同時にどんどんこのバンドにのめり込んで、鹿児島のCAPARVO HALLにライブを見に行ったんだけど、その時のライブが本当に本当に衝撃で。どこまでがMCかどこまでが曲か分からないぐらいの雰囲気作りと、スムーズな演奏とボーカルのパワーで圧倒的なライブ感。

「自分たちもこんなバンドや音楽がやりたい!」となる。

その後、メンバーを集めて、俺(Ba)とタテイシ(Vo)とアキラ(Gu)こうた(Dr)でバンドをやる為に、2回目の上京。この過程でタテイシが脱退してそのまま東京に残った3人でalt of the societyを結成。

どうにかしてジーフリークみたいな楽曲を目指した結果、語りが小節に収まってしまい今のalt of the societyの曲調に繋がってる。俺らは地元を背負って音楽活動は出来なかったけどローカルイズムは今でもバチバチにある。

「このバンドに出会わなければどうなってたんだろうか?」と思うくらい影響を受けたバンドです。ONE LOVE!

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THE BACK HORN『何処へ行く』

ポップジャムだったかな?当時のバックホーン が空星海の夜をテレビで演奏してて。

ジーパン、白のデカTで出てきて、なんか生々しい演奏とシャウトしてる。そんなバンドをテレビ見る事が初めての経験で衝撃的な体験だった。

その後、人間プログラムってアルバムを友達から貸してもらって、メロコア、青春パンク正義みたいな風潮の中、めっちゃ暗い楽曲が超リアルで当時の自分に刺さりまくった。結果俺はバックホーンに出会って根暗になった。

そしてその後、アルバムを掘り下げてたどり着いた『何処へ行く』が当時の不安定な自分の希望の光みたいな感じで聴き狂ってた。

10代後半から20代前半に沢山の友達が地元から出ていき、環境がどんどん変化していく中、このアルバムの最後の曲「何処へ行く」 の歌詞が自分の支えになってた。



このバンドに関しては聴くだけじゃ収まらなくて。この当時出てた曲達全てが好きすぎて、曲を再生したら自分で歌わなければ気が済まないくらいに。

元々俺は超絶音痴で人に笑われまくっていたんだけど… でも、車の中でフルボリュームで聴き狂って、フルボリュームで歌い狂った結果、普通にピッチが取れる様になり、人並みに歌が歌える様になった。側から見たらかなりヤバイ奴だったと思う…

人に笑われるぐらい音痴だった俺を歌が歌える様にしてくれたのは間違いなくバックホーンだし、独学だけど歌い方や声の出し方を学んだのもバックホーン。

このバンドに出逢わなければ俺は歌ってないと思う。

辛い時期はあったけど、お陰で今は歌うことが凄く楽しい。

今の自分の人格を形成したバンドの一つと言って過言ではない特別なバンド。名盤です。

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Linkin Park『Hybrid Theory』

個人的にはメロディも好きでシャウトもある曲が好きで、そんな中Linkin ParkのHybrid Theoryがリリースされてこのアルバムで脱帽。

収録曲のCrawlingって曲がかっこよすぎて、めっちゃ歌って理由もなくニュアンスを身につけようとしまくった。

結局モノには出来なかったけど。メロディからスムーズにシャウトが出来る様になったはCrawlingを歌いまくったからこそ身についた賜物だと思う。

個人的に自分のボーカルはこのアルバムからめちゃ影響を受けてます。

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安藤裕子『Merry Andrew』

20代前半のころ、意味もなく夜中まで起きている事が多く、テレビを付けていたら月桂冠のCMでこのアルバムの最後の曲、のうぜんかつら(リプライズ)バージョンが起用されていて、CMの曲が良すぎて気になり調べまくった結果、安藤裕子さんの曲という事を知った。

そこから安藤裕子さんの、明るいけど何だか深くて暗くて寂しいメロディや声に惹かれてすごく聴きまくった。

自分自身が精神的に全く安定もしないし。毎日憂鬱だし。そんな時にこの曲を聴くと気持ちが和らぐ感じがして救われてた。

歌詞のニュアンスとかもすごく好きで、抽象的な表現は自分自身の作詞にも結構影響受けてます。

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SHING02『緑黄色人種』

自分の地元ではオラついたヤンキー気質が多い為、ロックやバンドよりもHIPHOPが流行っていて、俺も「まぁそういう感じ好きだけどなんか違うなー」と悶々としていた時に、その風潮にアンチを唱える様なHIPHOPをやってる友達がいて、そいつがSHING02にめちゃ影響を受けてHIPHOPをやってるって事を知り、このアルバム緑黄色人種を聴かせてもらった。

当時の主流だった『俺たちが最高のワルで最強だぜ』っていうHIPHOPスタンスではなく、ちょっと斜に構えた捻くれた表現や言葉遊びもあり、バンドっぽさもあり、その感じがめっちゃカッコよくて、ノせる感じではなく曲に没頭させるようなスタンスが最高にわくわくして。

曲って自分の主張や反骨を音にのせてナンボだと勝手に思っていた自分の固定概念。

このアルバムの『星の王子様』って曲が、1つの物語をトラックにのせてラップというか語りで歌っているんだけど、それが10分以上の超大作。

この曲で世界観を音楽で表現するって方法を初めて味わって、もうずっと一日中聴いてた。

自分の根底にある世界観的な感覚を確立させてくれたアルバム。

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the north end『reading mix』

上京して初めてライブをする事になるライブハウス。吉祥寺WARPというライブハウスなんだけど、その時俺は激情、叙情のハードコア、ポストハードコアとか全く知らなくて、alt of the societyは割と今みたいな楽曲をたまたまやっていました。

初ライブが終わった時の清算で、当時の店長レオナさんに「お前らthe north end絶対好きだから聴け」って言われて、そのまま当時WARPの中にあったToosmell recordsでこの音源をゲットした。

この音源を聴いた時、自分がやりたかった様な楽曲が全て表現されている様な感覚に陥ってぶち上がったと同時にめっちゃ凹んだ記憶がある。

このアルバムを聴いて、聴いて、聴きまくって出た答えが、音楽ってやりたい様に、好きな様にやって良いんだって強く思わされた事。

無理にメロディーをのせなくてもカッコイイ曲はできるって自分に自信をつけてさせてくれたアルバム。

楽曲や表現のセンスが圧倒的で、今聴いても全然最先端に感じるアルバム。

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nonrem『現実と交差する何か』

右も左も分からない状態でバンドメンバーと上京。友達も全くいない中、吉祥寺WARPでライブをやり始めた時、初めて仲良くなったバンド。

このバンドは俗に言う激情ハードコアやポストハードコアと呼ばれるジャンルに当たるバンドで本当にかっこよくて。

同じくくりにいるバンド達とはジャンル的には一緒かもしれないんだけど、奥深さの中に、切なさと優しさや温もりを兼ね備えた轟音リズムミュージックバンドで、いつもすごく刺激をもらってた。

人間的にも完璧な人間の集まりではなく、だらしないし、育ってきた環境も恵まれていないからこそ、音楽から生まれるエネルギーも凄かったと思う。

ただ、本当にカッコいいのに、本当に人気がなくて客が俺と数人しかいない時のライブで世界一かっこいいライブをかましてたのが今でも脳裏から離れない。

結局ドラムのヒデヨシさんが亡くなってしまい活動が出来なくなってしまったんだけど、同世代の中で群を抜いてカッコよかったし、先輩を含むその界隈のバンドの中でも俺はこのバンドが一番イケてると思ってる。

たまに振り返った時、やっぱりこのバンドがいたから俺らも頑張って来れたんだなと思えるバンド。

その中でもこのアルバムの最後の曲「現実と交差する何か」って曲が素晴らしくて、どうしようもなく擦り減っていく日常の中で、この曲は間違いなく生きていく糧になってたと思う。

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Amanda Woodward『La Décadence De La Décadence』

alt of the societyが活動し始めの頃は吉祥寺WARP、吉祥寺planetK、国分寺MORGANAにめちゃくちゃお世話になっていて、国分寺MORGANAに出た時の話になるんだけど、当時のMORGANAは今みたいなハードコア箱では無く、ロックンロール箱的なライブハウスで、俺らみたいなバンドもあまり出てなかった。

その中で当時のブッキングのバラさん(現店長)がライブの転換中にずっとこのバンドの曲を流していて、超カッコよくてバンド名を聞いて、その後速攻ユニオンにディグりに行った。

このバンドは海外(ヨーロッパ)のバンドで、そのアルバムのLa Décadence De La Décadenceがめちゃくちゃかっこ良くて。

SkramzとかScreamo (リアルスクリーモ)とか激情ハードコアとかポストハードコアとかのジャンルになると思うんだけど、このバンドはビートが他のバンドと違い パンクやロックで、時にダブな感じがあり凄くかっこいい。

ボーカルの歌い方もカッコ良くて、個人的には歌のリズムの入れ方とか、歌の間はめちゃくちゃ影響を受けてる。

nonremのユウマやlangの和田もボーカルのニュアンスはこのバンドからめちゃ影響受けてるなと思う。

この手のバンドのセンスが超好きで他にもCARAVELSやAmpereとかもっと言いたいバンドはめっちゃいるけど、個人的に影響を受けた面、歌のフックやリズムの取り方とかは、このアルバムと出逢わなければ今の自分は無いと思う。

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改めて「人生の転機になった10の音楽」を選んでみて。

やっぱり俺もそんな音楽を鳴らしてぇと思った。