STUDY
2017.11.03
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2017.11.03
「あなたは100万円払ってください」
「あなたは儲かっていそうだから500万円払ってください」
こんな時代が本当にありました。
これは困ります。有無を言わさず、王様の一言で税金が決まってしまうのです。
日本においては、戦後の新憲法の制定と共に申告納税制度が導入されました。それまでは、税務官庁が税額を確定する賦課課税制度がとられていました。
納税は義務です。しかし、私たちは、自分で申告する権利も同時に得たのです。
ここで、当時のリアルな状況を感じられる一節として、その時代を生きた税法学者の言葉をご紹介したいと思います。(松沢智『租税法の基本原理』中央経済社、1983年)
「戦争によって、わたくしは多くの親類、友人、先輩を失った。皆、“国家”のため命を捧げた。敗戦になり戦後の焼土に立ったわたくしは、そこで“国家”が破れても、人間は生きていることを知った。今度こそ、人間として幸せな、自由な、人生を送れるような世の中がつくれることを新憲法が指し示してくれた。そこには権力者もいない、みな自由・平等な、人間としての尊厳をもった明るい『国家』をつくることが、憲法の原点にあった。」(7頁)
「戦後、わが国は新しい憲法の制定とともに、かつての賦課課税制度、すなわち、税金はお上が決めるものという仕組から、申告納税制度、すなわち、自分の所得は自分で計算して税金を申告するというように税制に大きな変革を生じた。これは、まさに税の革命といってよい。税の民主主義化、これこそ、敗戦により目標を失い呆然とした国民に対し、新しい憲法により主権者たるの地位が与えられ、国家を創り、国家を支える者は国民であるとの崇高なる理念のもとに、国民各人の信頼を前提として税制が生れ変ったのである。」(1-2頁)
今となっては、申告することは、ただ「義務」としか受け止められていないかもしれません。
しかし、先人のこのような想いに触れたとき、とても尊いものであることに気付かされます。
申告は、決して当たり前のものではない「権利」であるという一面も忘れてはいけないと思うのです。
そして、権利と感じられるかどうかは、私たちが、“税と向き合うモラル”と“税法を解釈する力”をいかにして身に着けられるかにかかっています。
新卒でコンビニの店舗運営部に入社するも、ハードワークに将来を悩み転職。シンクタンクの財務経理部に入るも、単純作業に心が折れ退職。資格で生きることを思い立ち、経験を蓄積できて様々な方とお付き合いのできる税理士に魅力を感じて会計事務所に就職。
顧問先様の“心地よさ”を重視した節税提案をモットーとしています。隠れ目標は、大事なものを大切にしながら働くことを諦めない業界にすること!
趣味は登山(次注目する山は甲斐駒ヶ岳)、剣道(四段に向けて修行中!)、運転(気になる車はプジョー3008)です。