COLUMN

2020.10.20

「有名な夢の中で、」 by KooK 第2回/摩天楼の中で、

高等学校、三年目の終わりの頃、一部からプリンスと言われるようになった。勘違いに拍車がかかる。
服はズタボロになり裸になり、羞恥心も消え去り自転車に乗っている。裸体のプリンス。そして急な坂道の始まりに、車輪がセットされ号令が、タクトが振り下ろされてるその時を。時限装置パペットがそれを握り、摩天楼の上で静観していた。。 気がする。


新宿に着いた。NもEもWもSも分からない。地下道を右往左往していた。何か大きなベクトルが働き、黒い服を着た人々がNやEやWやSに歩行している。ハーメルン笛吹が先導しているかのようだった。

願書を出し直ぐに合格通知がきた。都内のコンピュータ音楽を学べる専門学校に入った。教室全域には、かじられた林檎のパソコンと機材が敷き詰めてある。ガタンガタンガタン山手線の音が聞こえる。ベットフォンをしながらでもその振動は感じ取れた。Macと対峙しながら五線譜ではなく、ピアノロールと言われる横と縦で音の長さと高さを表した棒を1音1音、鼠のようなブツをカチカチ押し込み、音を紡いでいた。

それ、はいはいはいはい、なんとなく聴いた事あります。
あ、それなんかそんなアルバム持っていた気がします。
楽器ですか、ちょっとしたものなら、はいはい弾けますよ。(弾けない。)
虚言の嵐だった。格が違った。すでに。

ポロン、このコードは何でしょう?いや、いや、いやG?
鐘が鳴りすぐに教室をでた。走りながら涙がポロンと出た。

すべての突起物をへし折られた。なにもかも安易だった。周りも生活も安易だった。。
中野の1Kのアパートだった。新聞勧誘に脅され、ピンクちらしを躊躇しながら捨て、出会い系サイトに騙され銀行に
行き数千円を振り込み。さらに、自室の隣につがいが住んでいた。夜な夜な漏れる音声。ティッシュを二枚取った。。

今日はこれを聴きましょう!Princeが流れた。かっこいいですよね。はい。なんかこのいいグルーブ。(初めて聴いた)
R.I.P. Prince. あたいは裸体のプリンス。

悔しかった。音楽が好きだったはずなのに。自分が聴いていた音楽はなんだったんだ。違う。音楽を聴いていなかった。
感情や心を勝手に振動させていただけ。なぜ?を分析していなかった。何も知らない。何もできない。


脚は歌舞伎町に向いていた。夢は続く。

PROFILE

KooK

キッチュなニッチを探る音のカラダ。
悶々と仮説を立てて実験を繰り返し、琴線に触れるアレを巡り、
個人的なWARを起こす”逸脱音楽家兼サウンドアート発動家”
此節、音と映像のアルゴリズム解析中。

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