COLUMN

2020.10.27

「有名な夢の中で、」 by KooK 第3回/地の中で、

歌舞伎町は雨だった。ガード下から地下に降りる。圧迫感もあり空気も湿気っていたが、この空間は嫌いじゃなかった。眩いネオンじゃなくありふれた蛍光灯だったからかも知れない。夜の街向けのアパレル店、地下だけどオープンな飲食店、コロコロ変わる何でも屋、人もまばら、床もまばらに濡れていた。

地上に這い上がった。そこには煌びやかな嬢も厳つい黒服もいない。ディスクが敷き詰められている雑居ビルだった。

今日もとりあえず片っ端から借りよう。とりあえずアルバムを沢山リリースしているアーティストなら間違えないだろう。Jazz?OKOK!借りよう!コルトレーン?間違えないさ。(失礼無礼)黒い籠に1枚1枚と入れていった。階をあがってさらに1枚1枚さらに上がるとエイチな動画が焼き付けてあるディスクが。。カーテンを手繰るだけなら勢いで入るが、さすがに確定フロアに上がる事は二の足を踏んだ。

音楽ストリーミングもYoutubeもDMMも無い時代。悔しさを晴らすには脚で打開するしかなかった。無理している感じはしなかった。音楽の深いアナのナカに少し挿入した感じがした。自分にとって未知の音を探す事が楽しくなってきた。黒いバックに円盤を詰めてもらい、歌舞伎町を後にした。

ある時、新宿のさらに地下深くに潜っていた。大江戸線。ビッグエド!地下鉄の中でも比較的後期に作られたみたいなので、ぶつからないように深ーくなったようだ。エスカレータで急斜面を下っていく。息はできている。酸素はあるようだ。プシューッ、扉が開閉し進み始めた。さらに潜りながら進み最下層にあると思われる駅に着いた。ギロッポン。六本木だ。

専門の先生がライブをやると聞いて、来た。

息を荒くしながら地上に這い上がった。スタートまでまだ時間があったのでヒルズ族を見にヒルズにいった。しかし一番よく見たのは、丘から見える東京タワーだった。緋くぼんやり光っていた。90年代のドラマのようにタワーの光が消えるまで此処にいようと思ったが、丘を下った。

ビルの隙間を抜けていく。迷う。確かこの辺じゃ。。何周か周回してうっすら光っているネオンを見つけた。嗚呼、此処だ。扉の向こうから薄っすら紅い光が漏れていた。

階段を数段降りる、地下一階。しかしそこにはディープな空間が広がっていた。薄いレースを脱がすとベットがあった。自分も靴を脱ぎ、赤い絨毯に脚を踏み入れる。すでに人が入り乱れていた。キョロキョロするとラブドールらしき物と目があった。あぁどーも。

此処で何が始まるのだろうかと。妄想は膨らんだ。

胡座をかきながら音を聞いていた。初めて抑揚のない音楽を聞いた。電子音が擦り抜けていく。目を瞑った。寝れた。嘘。寛容な自分がいた。何かを掴もうとした。いつ曲が終わるかもわからないが、終わった時思った。一人でもライブができる。やりたいなと。

ギターや歌の音もあったかもしれない。電子音がアタマに脳に残った。アパートに戻り、両耳にヘッドフォンを押し付けてシコシコ音を絞り出し始めた。


ハタチになった。成年になった。でもまだ何も成し遂げていない。満たされていない。次は渋谷だ。円山町だ。もっともっと深く挿入し、ディープなスポットへ。ムスコは求めた。愛は続く。

PROFILE

KooK

キッチュなニッチを探る音のカラダ。
悶々と仮説を立てて実験を繰り返し、琴線に触れるアレを巡り、
個人的なWARを起こす”逸脱音楽家兼サウンドアート発動家”
此節、音と映像のアルゴリズム解析中。

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