COLUMN

2021.08.10

「地獄のセルフレビュー」 by 印藤勢 第3回/『センチメンタルハードロックホテル』

1. 「Sun-burst!」

当時22,3歳の自分たちにとっては"マイナーコードに疾走感のあるメロディ+日本詞"という言わば、アイデンティティを確立する為に作った。まさかのちに群馬のライブハウス名になるとは思わなかった。 CD帯には"裏青春系"と書いて貰ったのを覚えている。トリビアになるかわからないが、冒頭で曲名をシャウトしてるのは俺ではなくカワ。

2. 「赫い影」

初恋の女の子相手にここまで怨念をこめられたのも、表現としては面白いと思う。恋愛で一喜一憂するのは今もあまり変わってないけど、シンプルな4コードの循環でここまで被害者目線に描ける俺は煩悩の塊か…。真面目な話、ずっとそこから抜け出したいわけで、ある種のトラウマを刻み込んだ思い出は今も自分を苦しめる。皮肉な話だ。

3. 「WALK AWAY (SMK ver.) feat.DUNK&TATSU,bench,1ch,レイジロウ」

その昔、デモCD-Rに収録されていたver.とは違う形でリレコーディングをしたかったので、当時よく遊んでいた仲間たちに協力してもらった。一度だけライブで再現もした。ちなみに、このアルバム自体が"初期作品集"といった立ち位置でリリースされた(nilescapeとのスプリット『歩道橋7』の半年後に発売されているが、楽曲自体はそれより更に古い)ので、創世記のリスナーからしたら、あらゆるバージョン違いや客演が楽しめたと思う。

4. 「DAREKASAN」

これもド初期のデモテープ時代からある曲を再録音した。たまにマニアな方からリクエストされるから面白い。俺自身、このコラムを書くために10年以上ぶりに聴いた。悲痛で、悲惨な記憶ばかりが蘇ってくる。たしかにコードワークやトリッキーなブレイクは現在と通ずることもなくもない。

5. 「青いレモン」

このアルバムをリリースすることが決まってトータルタイムの数合わせ(と、言ったら誤解を招くが)のために当時、練馬の氷川台に住んでいた四畳半の部屋にカワを呼び出して30分くらいで作った。しかし、先日の弾き語りイベントでも演り続けてるから不思議なモンだ。つまり18年前の曲。

6. 「Man on the edge」

3,4曲目で説明した通り、こちらも過去曲のリテイクなのだが、僕らの先輩であったGQ06からPGさんをゲストに迎えている。なぜクレジットされてないかというと当時、彼らがメジャーデビュー決まったばかりの頃で権利的に…みたいな大人の事情だったと思う。PGさんは現在も、pygmy with bitter end / TAPE ME WONDER等で活躍中。

改めて「センチメンタルハードロックホテル」を振り返ってみて。

自分にとっては18年も前の音源を聴かされるのは拷問に近い"セルフ羞恥プレイ"だと思ったが、最新作の「大東京音像 (DIE TOKYO ZONE) 」と妙な共通点があることを知った。5曲目がアコースティックだったり、歌い方自体もこの頃に回帰してるような気もする。マシリトを8年休業したことを差し引いて計算すると、自分がこの1stアルバムをリリースしてから作曲家としてちょうど10年分キャリアを積んだ。まだまだひよっこ。もっと傷ついて、より深い表現ができるようになりたい。

良い機会を与えてくださって感謝してます。

PROFILE

印藤 勢(インドウ セイ)

音楽家。マシリトの一員。9SARI CAFE & BARで店主らしからぬことをしているとの目撃情報有