FEATURE

2021.05.04

印藤勢の人生の転機になった10の音楽

FREEZINEが選ぶ「人生の転機になった10の音楽」シリーズ。
第10弾は、5/26に12年振りとなる新譜のリリースを予定しているマシリトの印藤勢!

もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。

VIGILANTE『Chaos Pilgrimage』

"世界水準"や"日本人離れした〇〇"というキャッチコピーが逆にパラドックスを起こしてしまうほど、当時19歳だった自分(かなり偏った洋楽HM/HR信奉者だった)にとって、最も大きな衝撃をもたらしてくれた作品。構築美、歌唱力、徹底したサウンドプロダクツに舌を巻いた。日本の知性。

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NUMBER GIRL『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』

正確にはEPに収録されている「DESTRUCTION BABY」の不穏過ぎるMVをケーブルテレビでたまたま目にしたのがきっかけ。先述した通り"洋楽至上主義"だった20歳前後の自分(マシリト結成前夜)にとって、このサウンドでアノ歌い回しは斬新オブ斬新以外の何者でもなかった。日本の個性。

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椎名林檎『無罪モラトリアム』

先のナンバーガールと同じく、マシリト結成前夜に沢山の"ヒント"を貰った。両者とも洋オタの匂いがプンプンするのに、あの文学的とも言える日本語の歌い回しは、サザンオールスターズ / 桑田佳祐、以来の発明だと思う。楽曲単位で見ると最フェイバリットは「ここでキスして」のシングルB面に収録「眩暈」がダントツ。日本の魔性。

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TERROR SQUAD『The Wild Stream Of Eternal Sin』

1枚目に紹介したVIGILANTEとはある意味"真逆"の存在。TOKYO METAL ANARCHYを掲げる彼らのライブを初めて観た当時22歳の自分(ANTIKNOCKで働き始めた頃)にとって、アンダーグラウンドの深さ、奥行きを知り得るきっかけとなった。ジャケットにも惚れた。日本の野性。

HAWAIIAN6 / BRANCH『Word』

"同世代"というとちょっとおこがましいかもしれないが、当時23歳の自分(割と彼らと近いシーンにいたり、共演したり)にとって憧れの存在。もっと正直に言うなら嫉妬の象徴でもあった。"盟友とのスプリット"というフォーマットが好きなのは、この作品があるからに他ならない。日本の英雄。

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山口百恵『伝説から神話へ 日本武道館さよならコンサート・ライブ』

20代中盤に差し掛かり、全国ツアーに明け暮れてた頃、移動中の車内で最も聴いた音楽。正確には共に行脚をしてたMUSHAxKUSHAのメンバーからカセットテープを借りた。ライブ盤というにはあまりにもスリリングなアンサンブル、過剰なダイナミクス、その完成度たるや。日本の至宝。

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友川カズキ『ゴールデン☆ベスト』

こちらも先の百恵ちゃんを薦められたきっかけと同じタイミングでハマらせて貰った。今、思えば(語弊はあるかもしれないが)ヒップホップな魂を持つアーティストのようにも感じる。生まれ育ちからなる薄暗い人生描写はフォークの真髄だが、友川さんはユーモアすら恐ろしい。日本の異形。

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宇多田ヒカル『HEART STATION』

30代を目前に控え、相変わらず地方へ行ったり来たりの生活だったが、珍しくメンバー内で"宇多田ヒカルがやばい"という満場一致からバンド貯金で即購入。全キャリア通しても、最もポピュラーで垢抜けた心地の良いアルバムのような気がする。もちろん現在進行形でカッコいい。日本の偉業。

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MS CRU『Matador』

時系列は前後するが、これがリリースされた(2003年)頃は池袋のタワレコでTHA BLUE HERB,54-71,降神など、当時"アブストラクト系"と呼ばれた人たちが試聴機を占領していた。MSの団結力、匿名性は自分にとって"幕末"を思わせるイビツなピュアネスを感じる。日本の革命。

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LIBRO『風光る』

裏方のキャリアを一区切りする際、一緒にいてくれた音楽。縁あってリリースパーティーを手伝わせて頂いた。ヒーローたちの客演が次々と繰り返されるステージを観て、まるで夢の様な体験をさせて貰った。これが(これぞ)日本の音楽。

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改めて「人生の転機になった10の音楽」を選んでみて。

あえて洋楽を入れずに、なるべく身近な人がいるセレクトをさせて頂きました。俺自身、元来オタク気質で超節操のない聴き方をしてきたけど、"人生の転機"という括りではこれがベストかなと。まだまだ当時のエピソードが湧いてきますが(笑)、それはまたの機会に。miNamiさんをはじめ編集部の皆さん、本当にありがとうございました。

PROFILE

印藤 勢(インドウ セイ)

音楽家。マシリトの一員。9SARI CAFE & BARで店主らしからぬことをしているとの目撃情報有