PEOPLE

2017.11.21

石岡 美久インタビュー | 他の誰にもつくれない服で、いろんな個性を認め合える世界へ。

マイノリティとの出逢いから生まれたブランド「algorithm」。

── 編集部(以下、編):レディ・ガガや安室奈美恵も御用達の世界的ファッションブランド「algorithm」を立ち上げたきっかけとは?

石岡 美久(以下、石岡):幼い頃から少数派としていろいろな体験をし、生きる理由がわからずに苦悩している頃、障害者や性的マイノリティとの出逢いを通じて「いろんな人を認め合う世界を当たり前にしたい」という強い思いを抱くようになりました。一時は宗教家を目指そうかとも思いましたが、押し付けになるのは嫌だったので、感性でガツンと伝えられるファッションという手段を選びました。2006年、デザイン学校に通いながら「algorithm」を立ち上げ、ファーならぬ「人毛」ジャケットを作ったところ、セレクトヴィンテージショップ「原宿DOG」のオーナーが面白がってくれてお店に置いてくれて。それがレディ・ガガとつながっていったんです。

本当にいい服を、安く届けたい。赤字続きでホームレス経験も。

── 編:でも、立ち上げ当初は相当苦労なさったとか?

石岡:ブランドを立ち上げて10年になりますが、波に乗ってきたのは最近2年ですね。デザイナーは悲しい職業で、たとえ有名人が買ってくれてもクレジットは出ないし証拠はないしで、仕事もなかなか広げられず、服を作るたびに赤字が出て。2回ホームレスになったこともあります。それに、周りからは「ビジネス下手」と呼ばれるほど、感情で動いてしまうタイプ。雑な作りの洋服が、そこそこの値段で流通していることが悔しくて、「だったら、それよりも安く、オーダーメイドで超カッコいい服を、もっとたくさんの人に着て欲しい」と思うあまり、値付けに失敗することも多く、気づいたら家賃が払えない(笑)とか、そんな経験もありますね。

日々、ものづくりの醍醐味や、限界がない面白さを味わえる。

── 編:フリーならではのやりがいとは?

石岡:たとえばアパレル企業に所属していると、使える素材や手間・工程など、デザイナーがやれる範囲にどうしても限界が生まれてしまいます。その点フリーランスなら、人件費は自分だけですし、生地を贅沢に使ってゴリゴリのオブジェのようなものも作れたりと、ものづくりの醍醐味が味わえます。それに、お仕事のご依頼を受けた際にも自分次第でどんどん広げられますし、活動に限界がないんです。
「algorithm」は、人との出逢いがインスピレーション。着る人のパーソナリティを思い浮かべながら、こんな服を着せたい、こんな服は見たことないでしょう?と日々企みながら作っています。これからも、企業には絶対に作れないものや、誰もやったことのないものをどんどん作って行きたいですね。

働く場所を選べる自由。それも、フリーランスの自由。

── 編:2015年に拠点を北海道に移されたのはなぜ?

石岡:東京のファッション業界に閉塞感を感じていたんです。技術や独創性がなくても要領のいい人や営業の上手な人が生き残る傾向が顕著になって、服そのものもつまらないなと感じることが増えていって。そんな時、札幌のコアなイベントでのブース出展を打診されたんです。行ったことはなかったんですが、何かピンとくるものがあって。いざ出展してみて、周りの方々の技術の高さや個性の強さ、人としての温かみなどにものすごく衝撃を受けまして、思い切って東京での生活のすべてを切って、札幌に拠点を移したんです。結果、それが一番の転機になりましたね。その場所が居づらかったら、思い切って肌に合う場所を探せるというのも、フリーランスの醍醐味かもしれません。

志をもつ人たちが集まれば、共鳴して仕事が広がっていく。

── 編:どのように仕事を広げているのですか?

石岡:もともと営業が苦手なので、東京では苦労しましたし、札幌に移って一年は毎晩こっそり泣いてました。でも、雪の多い札幌には、古くから「助け合い文化」があり、人に紹介してもらったりという機会が少しずつ増えるようになって、最近では自分でもイメージしてなかったような新しい仕事ができるようになったり、やろうと思ったことが実行できる環境になってきましたね。札幌には、素晴らしい技術や自分なりのテーマを持ち、苦労しながらも誰かのためにものづくりをしている職人肌の人たちが多いんです。明確なテーマのもとに実直にものを作るという姿勢や志が共鳴しあって、新たな人との出逢いにつながり、そこから新しい仕事が広がって、という良い循環が生まれているのだと思います。

就職してラクになりたい。年を重ねるほど不安が募る日々。

── 編:波に乗ってきたという最近の石岡さんですが、不安になることは?

石岡:日々、いつダメになるかもわからないという不安と葛藤しています。利益率の高い衣裳製作の仕事はなかなかコンスタントには続かないですし。実際、お金が厳しくなるとススキノのバーで働いたり、周囲に泣きついたり(笑)。私は今年で30歳になるのですが、同世代のデザイナーでいまも続けている仲間は数えるほど。私自身、年を重ねるほどに「就職してラクになりたい」と何度も考えたことがありました。いまだったらまだ就職できるんじゃないか、とか。でも、辞めるという選択肢はなかったです。生きていれば絶対になんとかなると信じ、日々戦っています。

フリーランスのみんなで、世の中を面白くしたい。

── 編:今後の目標は何ですか?

石岡:「服飾界で最強になる!」という最終目標はありつつ(笑)、直近では超かっこいいチャリティTシャツや、車椅子や義手・義足の方の専門ラインの立ち上げ、後進の育成、そしてベルリン進出計画などなど、やりたいことが本当にたくさんあります。いつ死ぬかわからないですし、死ぬまでの時間が残り少ないからこそ、毎日を濃く、楽しく、自分の人生を思い切り楽しみたいと考えています。世のフリーランスの方たちも、職業は違えど誰かのために何かをやろうとしている限り、見ているベクトルは同じ。たとえばコラボをするなど、フリーランスのみんなの力で世の中をもっと面白くできたらいいですね。私も頑張るので、絶対にあきらめないで続けて欲しいと思います。

1日のタイムテーブル

夜中に仕事をするのが基本スタイル。
日中は気絶するように睡眠を取っているため
3ヶ月に一回はしっかり寝溜めする。

  • 夜中に仕事
  • 午前中、約2時間睡眠
  • 昼頃、起床してすぐ仕事
  • 夕方、約2〜3時間睡眠
  • 時に人との出逢いを求めバー巡り

algorithm -2018キュビズム- 最新コレクション

お客さまとの出逢いが作品作りのインスピレーションに

東京・高円寺「はやとちり」での展示会風景

PROFILE

石岡 美久
(いしおか みく)

2006年 「algorithm」始動&販売開始
2009年~2012年 某テキスタイルデザイン会社に所属
2010年 「algorithm」独立
2015年 「algorithm」プロデュースによるセレクトショップ兼アトリエ”ゲノム“を札幌で立ち上げる

ファッションブランド「algorithm」によるセレクトショップ「ゲノム」のオーナーとして活動。国内では安室奈美恵、倖田來未、EXILE、BOA、AAA、でんぱ組.inc、岡村隆史、西内まりや等、海外ではLady GaGa、リアーナ、ニッキー・ミナージュ、2NE1等が、衣装や私服として購入。
2012年より、NHK「東京カワイイ★TV “業界人56人が選ぶ注目若手デザイナー”」「NHK WORLD」「ヒルナンデス!」「ぐるぐるナインティナイン」「有吉反省会」「音楽のちから」「24時間テレビ」等、多数のTV番組にも出演。
また、国内外の雑誌や舞台への衣装提供を始め、講演会や教育など、札幌を拠点に活動の幅を広げている。

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