COLUMN

2022.06.21

「文系恋人放浪中」by 赤城文 第5回 /ミッシェルガンエレファントを聴いていたら見知らぬ人に怒鳴り込まれた話

たまには救われた話も混ぜ込んどかないとずっと人生が暗いまんまで変われないまんま死んでいく人間だと病める子羊たちに絶望させてしまう

クスリも万引きも殺人も暴力もしていないのに何やってもダメで

教育という持病に侵されている自分がダメなせいで男だろうが女だろうが本だろうが音楽だろうが学校だろうが周りにあるもの全ての陰気な部分を吸収するブラックホールオンナから

1秒も悪夢を見ないオンナになった話ね

絶対に幸せになれないし鬱も治らないと思っていたから「幸せ」とか当たり前な事書いちゃってごめんあそばせ


両親がかなりカルチャー人間なので幼少期から沢山音楽聴かせて貰ってライブにも連れて行ってもらってたんだけど(特にボサノバ)


中高生の頃から自発的に音楽を聴くようになってバンドサウンドと歌謡曲が大好きになって

高校生の頃は特に麻丘めぐみ、中森明菜、中山美穂、ナンバガ、ゆら帝、GO!GO!7188、面影ラッキーホール、白波多カミン、倉橋ヨエコ辺りがヘビロテ組だったんだけど

歌謡曲に溺れていたせいかメロディアス(イントロ!Aメロ!Bメロ!サビ!繰り返し!落ちサビ!アウトロ!みたいな)な曲以外を食わず嫌いしていて

当時はミッシェルガンエレファントにはあまりハマらなかったんですね

ワタクシ17歳の頃から18歳まで白塗りメタルバンドで一年間活動しており、19歳の年にローストチェリーマーケットになった時もずっとバンドの箱でバンドとばかり対バンしていて知り合いもバンドマンしかいなくてバンドのカルチャーで育ってバンド特有の文化も大好きでおりまして(グルーピーという単語に食いついて「あの頃ペニー・レインと」を観てしまうぐらい焦がれてる)

19歳の時にミッシェルカッコいいよって周りの大人から教えられて大人が憧れる大人って相当カッコいいんだなフーンと思って、

「デッド・スター・エンド」だけお気に入りだったので「カサノバ・スネイク」というアルバムを聴いてみたのね、そしたら気づいたら「ギヤ・ブルーズ」も手に入れてて

中学三年生の時に低音厨になってしまい高校生の時にベース志望で軽音部に入った以来の約三年ぶりにベースを触って「バードメン」を弾くためだけに音楽スクールに通い始めたり(ウエノコウジさんが好きなので)

家でモナコ作って甘いモナコに逃げたり(失敗済み)

当時大学も休学から復帰してチェリマケも活休して生き甲斐もなくて死ぬ寸前みたいな私を何とか繋いでくれる存在になったんだけど

ある日電車に乗らずに何駅分歩いて帰れるかチャレンジにハマっていた時にたまたま

プレハブの中にミラーボールが回っている怪しいお店を見つけて店内を覗いたらお店の人が歓迎してくれて

入ってみたら急いで今作ったみたいなミュージックバーだったんだけど

みんな全然音楽流さないからめちゃくちゃ勝手に好き放題一人で音楽流してて

ミッシェルの「バードメン」流したら、

スーツ姿の30代ぐらいの男性がウワァァァって雄叫びあげてすっ飛んで来て

「ミッシェル流した人誰⁉️君か!俺もミッシェル好きなんだよ!ミッシェル好きな奴最高!」って大声で言われて

私はずっとこんな瞬間を待っていたんだなって胸が熱くなったのを今でも覚えている

私の人生は音楽と一心同体で誰かと話す時以外はイヤフォンを付けて恋愛や友情や趣味に飽きても音楽だけはずっと飽きなくて音楽は私の全てだったのに

今までずっと誰とも音楽の趣味が合わなくて、しかも自分が好む音楽の世代が上だからこそ当時を生きた人からリアルタイムの熱さみたいなのを共有してもらいたかったのね

だけどリアルタイムだった人ってすぐマウント取ってくるから話にならない事が多いじゃない?

でもそのミッシェルリーマンは「若いのにミッシェル好きなんてスゲーよ最高だよ!」ってまだまだ知識も浅い私を受け入れてくれて一緒に盛り上がって

ロックが語るクサめの「仲間」とか「絆」ってこういうやつかってちょっと嬉し小っ恥ずかしかった

でもお酒が全然飲めないので長居せずに宴も高輪ゲートウェイ(あ、これはノーナ・リーヴスの西寺郷太様がライブのMCで仰っていたやつ)って感じで私は終電を目指して駅まで歩って帰っていたら

ミッシェルリーマンが店を飛び出して追いかけてきて改札抜けた私の背中に向かって

「ロック好きな奴愛してるぜー!」って大声で叫ばれて

当時の私は私に対して女とか若さとかそういう表面的な部分にすり寄って来た人間ばかりとのうんざりした繋がりだらけだったので

たった一つ「ミッシェルガンエレファント」という理由のみで名前も歳も職業も知らないもう二度と会わないであろう初対面の人に、

通行人に見られながらクサイこと叫ばれてB級映画の山場のシーンみたいでダサくてアツくて今でも忘れられないんだ

あんなに何度も読み返したバイブルの小説のオチも昔の恋人の名前の漢字もかつてのクラスメイトの顔も長い時間をかけて向き合った大事な事の数々を沢山忘れていったのに

こんなちっぽけな瞬間が未だに忘れられない

数年後にミッシェルファンが集うイベントに足を運んで運命が変わったのはまた別のお話。いつか話すね。

私がミッシェル聴いていなかったら今がないんだと思うと恐ろしくなるな

別にミッシェルと思春期を共にした訳でもなく、アルバムも後期のものばかり好んでファンを名乗るには罰当たりな女なのに、ミッシェルガンエレファントっていつもしれっとした顔で私にチャンスや喜びを導いてくれて本当にスゲーんだよ

19歳超えてからの私の人生の大事な部分のパイプの節々にミッシェルが居て、音楽が物理的に救ってくれるんだなってちょっと背筋すら凍るぐらい実感してる。今も。

前までは勢いありまくりな「カサノバ・スネイク」と「ギヤ・ブルーズ」が好きだったけど今は「SABRINA HEAVEN」が映画のエンドロール的な哀愁と陰気を帯びていない影があって好きなので気になった方は聴いてみて下さい

ちなみに文のインスタライブやツイッターを拝見されている方は承知の通り何度も言いますがウエノコウジさんのファンなので「G.W.D」と「ウエスト・キャバレードライブ」と「ゴッド・ジャズ・タイム」が堪らないです…自分がウエノコウジさんじゃない事実に病める日もありましたが…

このコラム書いていて思ったけど「太陽をつかんでしまった」が一番好きかも。
夏ソングってこの世に沢山あるから夏になったら色々聴いてみるけどどれも爽やかでリアリティに欠けるって思っていたのね

でも「太陽をつかんでしまった」はジリジリギラギラ鬱陶しい日差しと昼間の閑散とした入道雲に覆われた侘しい道中を一瞬で彷彿とさせて夏の無言みたいなものを肌で感じられて寂しくて好き

もう微睡の中で話も飛び飛びだし友達と深夜に布団に隠れてメールを打っている気分だから寝るね


p.s
皆様いつもミッシェルの雑誌や音源や当時の思い出話を下さり本当に嬉しいです有難う
ウエノコウジさんって本当にカッコイイよね。我々が計り知れないような人生なんだろうな



次回「赤城文に作詞の話をさせて!作詞の仕事を下さい!」です⭐️

PROFILE

赤城 文(アカギ アヤ)

2000年11月28日生まれ 東京都出身
セルフプロデュースアイドルグループ「あたし全部あげる。」のドールレッド担当と実の双子の妹(innesの可愛唯)と共に「ローストチェリーマーケット」として活動中。
主に作詞と振り付けを行なっている。

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