FEATURE
2021.07.02
FEATURE
2021.07.02
もしもその音楽と出会っていなければ、いまの自分はない。人は誰しもが、そんな人生の転機となった音楽を持っているもの。そこでこのコンテンツでは、各界のFREEZINEたちに、自分史上において転機となった10の音楽を選んでもらい、当時のエピソードと共に紹介していただきます。選ばれた音の並びから、人となりが見えてくる。
同級生が聴いてるアイドルやシンガーソングライターが嫌いだったわけではない。勧められたり流行っているものを聞くこともあった。ただそれほど興味を持てなかっただけだ。みんなの大好きなアイドルグループも話を合わせる為に、そのグループでの好きな人をでっち上げた。
ふわっとした馴染めなさに違和感を感じていた頃、ブルーハーツを聴く機会があった。
それは今まで聴いてきたものとは明らかに異質であり、ある種の怖さを感じた。
言葉にするのはとても陳腐で恥ずかしく伝えるのは難しいけれど、私の中ではっきりとブルーハーツ以前とブルーハーツ以後ができた。
ニューエストモデルというバンドを知る。何か引っかかりを感じるなと思っていた頃【雑種天国】という曲を耳にした。ざわざわする。これはちゃんと聴かなければいけない。そんな気がしてレンタルで1stであるソウルサバイバーというアルバムを借りた。
レンタルしたCDをきちんと返した私はその時点で出ているアルバムとシングルを全て購入。以降私の宝物のようなバンドとなる。
彼らのシングルのジャケットは色々なアルバムジャケットのパロディ作品になっており彼らのルーツを掘り下げることができる。
彼らのこの遊び心で私は60年代70年代のロックに傾倒していく。
※文中にある【雑種天国】は2ndアルバム【クロスブリードパーク】に収録されています。
友人がインディーズ専門店で働き始めた。その度気にいるものがあると教えてくれた。その中の一つがこのアルバムだ。
60年代70年代の音楽を聴き始めてはいたがまだガツンとハマれる音を見つけられていない。そんな時このアルバムは私が聴きたかったあの時代の音が詰まっていた。
モッズメーデー、R&Bやルーツミュージック、ミニのワンピにブーツを履いた女の子達がベスパの後ろに乗って帰っていく
ファッションとも親和性が高く、たくさん真似っこをした。全然なりきれなかったしパーティーでは違和感を感じてはいたけど。60年代70年代の音楽に対する興味だけはよりはっきりしていく。
現在このアルバムは多分廃盤。2007年に一度再発されているけどそれも入手困難な模様。
阿佐ヶ谷にある小さなロックバーで友人達とDJごっこをして遊んでいた。
ある日このアルバムをかけていると、ものすごく反応してくれた人がいた。彼はこのバンドを知っていてシングルレコードを持っていた。
彼とはその後よく遊ぶようになった。聴いたことのないジャンルを教えてもらったり一緒にレコード屋を巡った。より深く、音楽を聴くという行為に潜り込んでいくきっかけをこのレコード一枚が与えてくれたのだと思っている。
ちなみに何故私がこれを手にする機会があったかというと、前述したニューエストモデルのレーベルがフルーツガムカンパニーという名前だったからである。
新宿のレコード店VINYLでこのアルバムを見つけた時、絶対にこのバンドからレーベル名を取っている筈だと思い何の予備知識もないのに購入。
初めてレコード一枚に7800円を支払った。
70年代に発売された60年代サイケ&ガレージのV.A
これも新宿のレコード店Vinylで14000円ぐらいだしてレコードを購入した。知らないバンドばかりだしアルバムとしての知識も無い。ただジャケットがサイケだったからという理由で手に取った。
当時の自分を存分に褒めてあげたい。
後日このアルバムが60年代ガレージのファンにとって名盤であると知る。(レコードコレクターズかミュージックマガジンで読んだ記憶だ)
中身はアルバムも出していない一発屋から後の大御所が在籍していたバンドまで、多種多様だがあの頃の空気がムンムンしている。
ネットで検索もできない時代、知らないバンドばかりのV.Aは本当に便利で、たくさんのバンドを聴けて世界を広げてくれるものだった。
私にとってのデッドバンビーズの音の起源の一つは間違いなくこのV.Aです。
あえてベストアルバムを。
1910フルーツガムカンパニーはブッダレコードというところから出していてそこのV.Aに入っていたのがSWEETだった。
ちょうど初めてバンド形態でライブをやる時と重なっていて、私は覚えたてのこのSWEETのようなグラムロックをもっと簡単にして軽くしたものを好んで作った。
しかし立ち塞がるテクニック不足と知識不足。もうちょい掘り下げようかとするとあまり好きではなかったハードロックに行き着く。
そう、私にとってSWEETはあまり好きでなかったハードロックを聴けるようにしてくれた偉大な功労者なのだ。SWEET聴いてなければツェッペリンは無視してたと思う。
パンクってなんだ?ってなった時、私の頭の中には想像で作り上げた音が鳴っていた。それはたいそうかっこよくて、早くパンクとやらを聴いてみたい!と胸をときめかせていた。
いざ、これがパンクだという70年代後半の某有名バンドを聴く。
第一印象は『遅い』
とにかく遅い、すごく遅い、パンクのくせに遅い、パンク聴いたことないけどこれは遅いだろう、遅すぎる
そんな私が初めてゴリラビスケッツを聴いたとき、やっと頭の中に鳴ってるパンクと一致した。
世の中ではハードコアというらしい。頭の中のパンクの音はハードコアだったのだ。
バイトしていた古着屋では、スタッフが変わるがわる好きな音楽をかけていた。知らないジャンルもたくさんかかり、いつも何がかかるのか楽しみにしていた。
その店ではサイケなものを好む人が多かったので、CANを知るまでにそんなに時間はかからなかった。
ジャーマンロックで最初にハマったものがCANでなければその後、イギリスアメリカ以外の音楽を聴くようにならなかったかもしれない。そんな不思議な魅力がCANにはある。
CANが好き、というと
愛は勝つ、の?
と聞かれるのはご愛嬌。
ちなみにこのアルバムで1番好きな曲は【I'm so green】
XTCの変名バンドのデュークス。こちらは例の阿佐ヶ谷のバーで友人がかけていた。
絶対に60年代後半のバンドだと思っていた。そのぐらいあの時代の再現度が高い。特にビートルズのリボルバーあたりの音質にそっくりなので、あの質感を再現できるのか!と感動したのを覚えている。
こちらは転機になったというより、転機になる時期にとにかくよく聴いていた。
めくるめく絵本のような展開と素晴らしいメロディにうっとり、そして音の中に飲み込まれて境目が無くなる感じが大変興奮するアルバムです。
初めてベルベッツの名前を知ったとき、そこには『パンクの元祖』とあったわけです。
パンクの概念とは本当に様々で、某有名パンクバンドに失望しかなかった私は、半分賭けのような気持ちで噂のベルベッツのバナナを近所で購入した。
案の定バナナは全く私には響かず
遅いどころじゃない!普通じゃん、普通の古いロックじゃん!とそのままCD棚にしまい込んだ。
それから何年か後、バンドではなく二人組のユニットで初めて人前に出る機会を得た。そこでカバーとしてこのアルバムに入っている【What goes on】をやることになった。
あんなに響かなかったベルベッツが、コードを拾い演奏すると自分にスルスルと染み込んでゆくのがわかる。こんな不思議なことってあるのか。
人前に自分の意思で立つ、その時をベルベッツの曲で迎えた私は幸せだ。
なんだかこうやってリストアップすると大変恥ずかしい。
転機になったと思えるのは今回紹介した最初の1~2枚で、あとは転機になるような時期に、その時その音が寄り添っていたというほうが正しいかもしれないなと思う。
そして転機になったとされる音楽とただ好きな音楽ってのは案の定違うものに。
今回ビートルズも入ってないしアタリティーンエイジライオットもブライアンイーノも入ってない。でも、これらは転機じゃないんだよな…と真剣に考えてしまった。
というか
ぶっちゃっけ音楽なんかで人生変わらないと思う。いや、思いたい。
思いたい、けど、変わっちゃったのかな。
今回こんな機会を与えてくれたFREEZINE!ありがとうございました!